2024.12.13
省エネ補助金
【2024年12月更新】2025年対応 省エネ補助金とは?最新情報とポイントを解説
経済産業省(資源エネルギー庁)は、省エネルギーに向けた取組の支援制度として、税制優遇や低金利による融資のほか、補助金を支給して省エネルギーな設備導入や工事の費用の支援を実施しています。本記事では省エネルギーの推進や電気代の削減を検討している事業者様向けに2025年(令和7年)の「省エネ補助金」について解説していきます。
省エネ補助金とは
省エネ補助金とは
省エネ・非化石転換補助金(省エネ補助金)とは、一定の省エネルギー効果がある取組に要する経費を補助する事で、各分野の省エネルギー化を推進し、内外の経済的社会環境に応じた安定的かつ適切なエネルギー需要構造の構築を図ることを目的とした補助金です。
省エネに繋がる設備(空調設備、産業用モータ、プレス機、工作機械など)や省エネの取組を管理するためのシステム(EMS)を導入する経費を補助してもらえる補助金となります。
令和6年度補正予算における省エネ支援パッケージは大きく「事業者向け」と「家庭向け」に分かれますが、本記事では「事業者向け」の省エネ補助金について、徹底解説します。

2025年(令和7年)の省エネ補助金のポイント
令和5年度補正予算案が閣議決定され、資源エネルギー庁から「令和6年度補正予算案における省エネ支援策パッケージ」が公表され、2025年(令和7年)も省エネ補助金が実施されることとなりました。ここからは資料を参考に2024年の省エネ補助金の詳細をわかりやすく解説していきます。(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/government/data/package_r6.pdf)
2025年(令和7年)の省エネ補助金は、「工場・事業場型」「電化・脱炭素燃転型」「設備単位型」「EMS型」という4つの申請類型に分けて実施されます。

- 工場・事業場型:工場・事業場型は、工場・事業場全体で大幅な省エネを図る取組に対して補助がなされます。
- 電化・脱炭素燃転型:電化・脱炭素燃転型は、電化やより低炭素な燃料への転換を伴う機器への更新が補助されます。
- 設備単位型:設備単位型はあらかじめリストに登録された製品を選択し、設備単位で更新を行う取組が補助されます。
- EMS型:EMS型はEMSの導入が補助されます。
それぞれの枠について、これから詳しく解説します。
2025年(令和7年)省エネ補助金(工場・事業場型)について
工場・事業場型の概要
省エネ補助金(工場・事業場型)は、工場や事業場全体での大幅な省エネルギー化を図る取組を支援するものです。具体的には、工場や事業場内で使用するエネルギー全体を包括的に見直し、省エネ効果が高い設備の導入やシステム改修、運用の最適化を行う事業に対して補助金が交付されます。これにより、個別の設備更新では実現できない大規模な省エネ効果を目指します。

省エネ補助金(工場・事業場型)の申請枠
2025年(令和7年)の省エネ補助金工場・事業場型には「先進枠」「一般枠」「中小企業投資促進枠」の3つの申請枠が用意されています。
「先進枠」は補助対象設備として採択された先進設備・システムのみが補助対象になる枠で、補助率が他の枠と比較して優遇されている一方で、高い省エネ目標の達成を求められます。
「一般枠」はオーダーメイドの設備または補助対象設備として採択された指定設備が対象になる枠で、その名の通り、特別な要件が少ない工場・事業場型の中で一般的な申請枠となっています。
「中小企業投資促進枠」は中小企業のみが申請可能な特別枠で、オーダーメイドの設備または補助対象設備として採択された指定設備が対象になります。他の申請枠と比較すると省エネ要件が緩和されているほか、投資回収年数の要件も緩和されており、中小企業が工場・事業場型での申請を行う場合有利な申請枠となっています。
省エネ補助金(工場・事業場型)の先進枠とは
省エネ補助金(工場・事業場型)の先進枠は先進的な設備として認められた先進設備やシステムの導入を補助対象とした申請枠です。
省エネ要件として、①省エネ率等:30%以上、②省エネ量等:1,000kl以上、③エネルギー消費原単位改善率:15%以上のいずれかを満たす取組である必要があります。
補助率は大企業の場合は1/2、中小企業の場合は2/3、補助上限は15億円となっており、他の申請枠と比較して高い補助率、補助上限が設定されています。
省エネ補助金(工場・事業場型)の一般枠とは
省エネ補助金(工場・事業場型)の一般枠はオーダーメイド設備または指定設備を導入して行う工場・事業場単位での省エネの取組を支援する申請枠です。
省エネ要件として、①省エネ率等:10%以上、②省エネ量等:700kl以上、③エネルギー消費原単位改善率:7%以上のいずれかを満たす取組である必要があります。
補助率は大企業の場合は1/3、中小企業の場合は1/2、補助上限は15億円となっており、他の申請類型と比較して高い補助率、補助上限が設定されています。
省エネ補助金(工場・事業場型)の中小企業投資促進枠とは
省エネ補助金(工場・事業場型)の中小企業投資促進枠は、中小企業がオーダーメイド設備または指定設備を導入して行う工場・事業場単位での省エネの取組を支援する申請枠です。
一般枠とは異なり、大企業は申請できない他、投資回収要件も他の申請枠が5年以上であることが求められている一方、中小企業投資促進枠では3年以上と条件が緩和されています。
補助率は原則1/2、補助上限は15億円となっており、他の申請類型と比較して高い補助率、補助上限が設定されています。
対象となる取組例
省エネ補助金(工場・事業場型)で対象となる取組としては、高効率な空調設備やボイラーの導入、省エネ型の生産設備や機械の更新、工場全体のエネルギー管理システム(EMS)の導入、照明設備のLED化や建物の断熱性能向上などが挙げられます。
当社の事例では、複数の工作機械からなる生産ラインをまとめて更新する取組などが挙げられます。
2025年(令和7年)省エネ補助金(電化・脱炭素燃転型)について
省エネ補助金(電化・脱炭素燃転型)の概要
電化・脱炭素燃転型の省エネ補助金は、化石燃料から電気への転換や、より低炭素な燃料への転換等、電化や脱炭素目的の燃料転換を伴う設備等の導入を支援する申請類型です。

省エネ補助金(電化・脱炭素燃転型)の特徴として、補助対象経費が設備だけでなく、工事費も含まれている事が挙げられます。工事費が補助対象に含まれるのは中小企業だけですが、炉の更新などにともなう工事費が新たに補助対象になることで、さらなる使いやすさの向上がなされました。
省エネ補助金(電化・脱炭素燃転型)の補助対象経費は、化石燃料から電気への転換及びより低炭素な燃料への転換等、電化や脱炭素目的の燃料転換を伴う設備等への更新とされており、例えば溶解炉をキュポラ式から誘導加熱式に変更するなどが対象になります。
省エネ補助金(電化・脱炭素燃転型)の補助率は一律1/2で補助上限は3億円(電化の場合は5億円)とされています。
対象となる取組例
省エネ補助金(電化・脱炭素燃転型)で対象となる取組は、化石燃料から電気への転換及びより低炭素な燃料への転換等、電化や脱炭素目的の燃料転換を伴う設備等への更新とされており、例えば溶解炉をキュポラ式から誘導加熱式に変更する、ガスや石油を燃料とするボイラーを電気式ヒートポンプに置き換える、ガス炉を電気炉に転換し、製品の焼入れや乾燥工程を電気で行うなどが対象として考えられます。
個別の事例が補助対象になるかは事前に事務局に確認することをお勧めします。
2025年(令和7年)省エネ補助金(設備単位型)について
省エネ補助金(設備単位型)の概要
2025年(令和7年)の省エネ補助金(設備単位型)は、あらかじめ定めたエネルギー消費効率等の基準を満たし、補助対象設備としてリストに登録された機械をリストから選択して更新する取組を支援する類型です。

従来の省エネ補助金(設備単位型)では特別省エネ要件は設けられていませんでしたが、2025年から新たに①省エネ率:10%以上、②省エネ量:1kl以上、③経費当たり省エネ量:1kl/千万円のいずれかを満たす取組であることが要件として追加されました。
2025年の省エネ補助金(設備単位型)の補助率は1/3、補助上限は1億円となっています。また、その他の要件として、省エネ法に基づく定期報告義務がない事業者については、エネルギーの合理化に関する中長期計画を策定することが新たに条件として追加されたため、今までの省エネ補助金(設備単位型)と比較して申請の難易度が上昇しています。
なお、2025年の省エネ補助金ではどのようなルールが設定されるか不明ですが、2024年の指定設備導入事業でリストへの登録ができた設備区分は下記の通りです。
ユーティリティ設備 |
高効率空調、産業ヒートポンプ、業務用給湯器、高性能ボイラ、高効率コージェネレーション、変圧器、冷凍冷蔵設備、産業用モータ、制御機能付きLED照明器具 |
生産設備 |
工作機械、プラスチック加工機械、プレス機械、印刷機械、ダイカストマシン |
既に設備単位型の補助対象設備一覧がSIIのHPに公開されており、下記のリンクから対象となる設備をメーカー別や条件を指定して検索することができます。
▼先進設備・システムの補助対象設備一覧
https://sii.or.jp/setsubi05r/search/
省エネ補助金(設備単位型)で採択されるための申請のポイント
2025年の省エネ補助金(設備単位型)で採択されるために重要なポイントとしては「省エネ率が高い取組をすること」「省エネ量も高い取組にすること」「独自計算の活用も検討すること」の3点が挙げられます。
2025年の省エネ補助金(設備単位型)では新たに①省エネ率:10%以上、②省エネ量:1kl以上、③経費当たり省エネ量:1kl/千万円のいずれかを満たす取組であることが要件として追加されました。これによって今まで以上に高い省エネ率や省エネ量が求められる可能性が高くなります。
また、省エネ補助金(設備単位型)の省エネ率や省エネ量の計算には指定計算と呼ばれる方法と独自計算とよばれる方法の2つが存在します。
指定計算は計算方法は簡単ですが、導入予定設備のエネルギー消費量を一世代前のモデルのエネルギー消費量と比較する計算方法である為、頻繁に次世代機を投入している設備などでは省エネルギー量が低くなる傾向にあります。
一方で、独自計算は既存設備の消費エネルギー量の実測などを通じて独自の方法で既存設備と導入予定設備のエネルギー消費量を比較することができるため、計算方法が煩雑なものの、比較的高い省エネルギー率や省エネルギー量が出やすいという特徴があります。
申請したものの不採択になってしまうケース等では、積極的に独自計算を活用することで採択の可能性を引き上げることができます。
2025年(令和7年)省エネ補助金(EMS型)について
省エネ補助金(EMS型)の概要
省エネ補助金(EMS型)は、あらかじめ効果が高いと定められたエネルギーマネジメントシステム(指定EMS)を用いて、効果的にエネルギー使用量削減及びエネルギー需要最適化を図る取組を支援する申請類型です。
申請するための省エネ要件として、指定EMSを導入する範囲内において設備又は工程単
位のエネルギー消費状況を把握・表示・分析し、運用改善を実施すること、EMSを活用した省エネの中長期計画を作成、改善による成果の公表(2%改善を目安)すること、EMSは、導入事業者自らが制御・運用改善に取り組める機能を具備していること。具備していない場合には、運用改善の提案を出来る事業者との契約(補助対象外)を結ぶことが新たに設定されています。
補助対象となる経費は設備の費用に加えて、設計費、工事費が記載されています。
2025年(令和7年)省エネ補助金のスケジュール
2025年の省エネ補助金のスケジュールは、現時点では公式な発表が行われていません。しかし、過去のスケジュールを参考にすると、例年通りであれば以下のような流れになることが予想されます。
想定される2025年第1回公募のスケジュール
- 公募開始
3月頃に第1回の公募が開始される可能性があります。この時期に、補助金の詳細な条件や申請方法が公開されます。
- 第1回公募の締切
毎年、第1回公募の締切は4月末頃になることが一般的です。このため、2025年も同様のタイミングで締切が設定されると考えられます。申請には十分な準備が必要なため、早めの対応を心がけましょう。
- 採択結果の公表
申請後、審査を経て6月頃に採択結果が発表される見込みです。採択された事業者は、このタイミングで事業計画を具体化し、補助金を活用した省エネ設備の導入などを進めることができます。
その後の公募のスケジュール
年度内に複数回の公募が行われる場合があります。2024年も第2回公募や追加の公募が行われたため、2025年も同様の可能性があると予測されます。
詳細なスケジュールは発表され次第、本記事を更新してお伝えします。
2025年(令和7年)省エネ補助金の申請方法
基本的な省エネ補助金の申請プロセス
省エネ補助金を有効に活用するためには、適切な手順で申請を行うことが不可欠です。以下では、申請プロセスをステップごとに詳しく解説します。初めての方でもスムーズに進められるよう、具体例やポイントも補足します。
1. 公募要領と交付申請の手引きを確認
省エネ補助金申請を行う上では最初に「公募要領」「交付申請の手引き」といった事務局が公開している資料を確認します。公募要領や交付申請の手引きには、具体的な資料の作成方法や省エネ率の計算方法、申請するべき枠の詳細な条件が記載されています。
- 公募要領の確認:補助金の全体像を把握するために最初に確認する書類です。対象事業や補助率、申請スケジュール、評価基準などが詳しく記載されています。特に対象事業や補助額の上限は事業計画に直接影響するため、必ず目を通してください。
- 交付申請の手引きの確認:実際の申請手続きに必要な情報を網羅しています。申請に必要な書類リストや作成時の注意点、提出方法が詳しく説明されています。申請漏れを防ぐため、この手引きを基にチェックリストを作成するとよいでしょう。
2. 申請前の準備
申請前に更新する予定の設備の選定、申請する事業区分の決定や期待できる省エネルギー量の把握が必須となります。特に、設備単位型の独自計算や工場事業場型の場合は電力消費量の実測が必要になるケースも多く、自社での測定ができない場合はパートナー企業の選定も必須となります。
- 事業区分の決定 補助金の申請には、自社が対象とする事業区分(例:工場・事業場型、電化・脱炭素燃転型、エネルギー需要最適化型)を明確にする必要があります。事業区分に応じて補助対象経費や申請内容が異なるため、慎重に検討してください。
- 省エネ設備の選定と計画立案 補助金対象となる設備や導入計画を事前に確認します。見積書やエネルギー削減効果の根拠資料を収集し、申請書に説得力を持たせることが重要です。
- パートナー企業との協力 専門的な設備導入にはメーカーや設計業者との連携が不可欠です。適切な業者を選定し、協力体制を整えることで計画の実現性が高まります。
3. 補助事業ポータルでの登録と書類提出
省エネ補助金では補助事業ポータルを活用して資料を作成し、印刷した資料をファイリングして指定の提出先に郵送する必要があります。
- 補助事業ポータルへの登録 公式の補助事業ポータルサイトにアカウントを作成し、必要事項を登録します。この段階で入力ミスがあると後の手続きに支障が出るため、慎重に確認しながら進めましょう。
- 主要な必要書類 - 商業登記簿謄本(申請者の基本情報) - エネルギー使用実績を示す証拠書類 - 省エネ効果を算出した計算書 - 見積書(導入設備の詳細) 各書類が申請内容を裏付ける重要な資料になります。不備がないよう、専門家のアドバイスを受けることを検討してください。
- 申請書類の提出 書類は電子データでの提出が求められる場合が多いですが、一部では正本(原本)や副本の郵送が必要なこともあります。提出期限を守ることはもちろん、書類が適切に揃っているかを事前にチェックしてください。
4. 申請後の手続き
- 審査と交付決定 申請書類が受理されると、SII(環境共創イニシアチブ)による審査が行われます。審査結果は申請者に通知され、採択された場合は交付決定通知が届きます。
- 事業実施と報告書提出 採択後は、省エネ設備の導入や事業計画の実行を進めます。その後、実績報告書や成果報告書を所定の形式で提出し、補助金の支払いを受ける流れとなります。
この記事の執筆者

村上 貴弘
東京大学経済学部卒。
中小企業診断士、行政書士。
2019年株式会社プランベース創業。
2021年meditips行政書士事務所開業。
製造業、建設業、運輸業、ソフトウェア業など幅広い業種の補助金申請支援実績が豊富。特に事業再構築補助金やものづくり補助金、成長投資補助金といった大規模な補助金の申請に強みを持つ。
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