事業再構築補助金の「成長枠」とは

COLUMN お役立ちコラム

2023.03.31

事業再構築補助金

【2023年4月更新】事業再構築補助金の成長枠とは?申請要件や補助金額を解説!

はじめに

2023年度の事業再構築補助金で新たに追加された「成長枠」。補助上限が最大7,000万円の大型の補助金となっており、多くの中小企業におすすめの補助金となっています。しかしながら、事業再構築補助金の「成長枠」には様々な申請要件や必要書類が定められており、理解するのが難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。今回は事業再構築補助金の「成長枠」について、申請するための条件や補助対象経費、補助金額や補助率について解説した後、申請に必要な資料についても解説させていただきます。

▼事業再構築補助金の無料相談はこちら
https://planbase.co.jp/lp/saikouchiku/

事業再構築補助金とは?

事業再構築補助金とは、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために思い切った事業再構築をする中小企業の挑戦を支援する補助金です。2023年の事業再構築補助金では最大5億円の補助が受けられる枠も設けられており、史上最大クラスの補助金制度となっています

事業再構築補助金の「成長枠」とは

事業再構築補助金の「成長枠」とは

事業再構築補助金の「成長枠」とは成長分野への大胆な事業再構築に取り組む中小企業等に最大7,000万円が補助される補助金です。2023年6月に予定されている事業再構築補助金の10次締切から創設されました。

事業再構築補助金には「成長枠」「グリーン成長枠」「卒業促進枠」「大規模賃金引上促進枠」「産業構造転換枠」「最低賃金枠」「物価高騰対策・回復再生応援枠」「サプライチェーン強靱化枠」といった様々な申請枠が用意されており、枠ごとに対象となる取組やもらえる金額が異なります。

この記事では事業再構築補助金の「成長枠」について、申請の要件や補助金額、補助率、申請に当たって必要になる資料などを詳しく解説していきます。

事業再構築補助金「成長枠」の補助金額と補助率

事業再構築補助金「成長枠」の補助金額

事業再構築補助金の「成長枠」の補助金額は従業員数によって異なり、最大で7,000万円の補助金が得られます。従業員数ごとの補助金額は次の表の通りです。

従業員数 補助金額
従業員数20人以下 100万円~2,000万円
従業員数21~50人 100万円~4,000万円
従業員数51~100人 100万円~5,000万円
従業員数101人以上 100万円~7,000万円

従業員数20人以下の場合は最大で2,000万円、従業員数が21~50人の場合は最大で4,000万円、従業員数が51~100人の場合は最大で5,000万円、従業員数が101人以上の場合は最大で7,000万円となっています。

事業再構築補助金「成長枠」の補助率

事業再構築補助金の「成長枠」の補助金額は「中小企業者等」と「中堅企業等」によって異なります。中小企業者等の場合の補助率は1/2、中堅企業等の補助率は1/3となります。

ただし、大規模な賃上げを行う場合は補助率の引き上げが設定されており、大規模な賃上げを行う中小企業者等の補助率は2/3、大規模な賃上げを行う中堅企業等の補助率は1/2となります。

企業種 補助率
中小企業者等 1/2(大規模な賃上げを行う場合2/3)
中堅企業等 1/3(大規模な賃上げを行う場合1/2)

補助率を上げるための「大規模な賃上げ」について

中小企業や中堅企業の補助率を引き上げるための「大規模な賃上げ」とは「事業終了時点で①事業場内最低賃金+45円、②給与支給総額+6%を達成すること」とされています。

大規模な賃上げによる補助率の引き上げを希望する場合には、応募時に「大規模賃上げ及び従業員増加計画書」を提出し、記載内容の妥当性を審査してもらう必要があります。 大規模な賃上げには賃上げ前の年度である「基準年度」と賃上げ後の年度である「報告対象年度」の考え方が重要になります。下の図のパターンはいずれも「大規模な賃上げ」の基準年度と報告対象年度の設定方法として認められています。 

まず、採択日~補助事業完了期限日のいずれかの時点が含まれる事業年度である「報告対象年度」を決定します。「基準年度」は上記の方法で定めた「報告対象年度」の直前の事業年度となります。

大規模な賃上げの条件は複雑ですので、詳細についてはお気軽に当社までお問い合わせください。

▼事業再構築補助金の無料相談はこちら
https://planbase.co.jp/lp/saikouchiku/

事業再構築補助金「成長枠」の申請要件

事業再構築補助金「成長枠」には今までの事業再構築補助金にはなかった新しい申請要件が複数設定されています。すべての要件について、どのような内容になっているかを丁寧に解説していきます。

①取り組む事業の市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していることが必要

事業再構築補助金「成長枠」の最も特徴的な要件は「取り組む事業の市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していることが必要」となる「市場拡大要件」です。

市場拡大要件とは「取り組む事業が、過去~今後のいずれか 10 年間で、市場規模(製造品出荷額、売上高等)が 10%以上拡大する業種・業態に属している」ことを求める要件となっており、事務局が指定した業種・業態に属する事業でなければ原則として補助対象にはなりません。事務局が現時点で指定している業種業態は下記のリストから確認可能です。

▼事務局が指定する成長枠の対象となる業種・業態の一覧
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/seichowaku_list.pdf

なお、上記のリストに指定されていない業種であっても、応募時に要件を満たす業種・業態である旨のデータを提出し、認められた場合には対象となります。
公募開始以降事務局HPに掲載予定の様式に必要事項を記載の上提出してください。(過去の公募回で認められた業種・業態については、その後の公募回では指定業種として公表されます)

 ②事業再構築要件を満たすことが必要

また、今までの要件として設定されていた事業再構築要件についても「成長枠」の要件とされています。事業再構築要件とは、「事業再構築指針」にて示された事業再構築の要件を満たすための条件のことで、2023年の事業再構築指針では「新市場進出(新分野展開、業態転換)」、「事業転換」、「業種転換」、「事業再編」又は「国内回帰」の5つの事業再構築の類型が示されています。

それぞれの事業再構築の類型の条件は次の通りです。

事業再構築の類型 必要となる要件
新市場進出 ①製品等の新規性要件、②市場の新規性要件、③新事業売上高10%等要件
事業転換 ①製品等の新規性要件、②市場の新規性要件、③売上高構成比要件
業種転換 ①製品等の新規性要件、②市場の新規性要件、③売上高構成比要件
事業再編 ①組織再編要件、②その他の事業再構築要件
国内回帰 ①海外製造等要件、②導入設備の先進性要件、③新事業売上高10%等要件

また、各要件で示す必要がある内容は次の通りです。

要件名 申請に当たって示す内容
製品等(製品・商品等)の新規性要件 ①過去に製造等した実績がないこと、②定量的に性能又は効能が異なること
市場の新規性要件 既存事業と新規事業の顧客層が異なること
新事業売上高10%等要件 新たな製品等の(又は製造方法等の)売上高が総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上となること
売上高構成比要件 新たな製品等の属する事業(又は業種)が売上高構成比の最も高い事業(又は業種)となること
組織再編要件 「合併」、「会社分割」、「株式交換」、「株式移転」、「事業譲渡」等を行うこと
その他の事業再構築要件 「新市場進出(新分野展開、業態転換)」、「事業転換」又は「業種転換」のいずれかを行うこと
海外製造等要件 海外から製造・調達している製品について、国内で生産拠点を整備すること
導入設備の先進性要件 事業による製品の製造方法が先進性を有するものであること

▼詳しい事業再構築指針の内容については事業再構築指針の手引きをご確認ください。 https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin_tebiki.pdf

③年率平均4.0%以上の付加価値額向上が必要

事業再構築補助金の「成長枠」に申請するために立てる計画においては、年率平均4.0%以上の付加価値額の向上が必須となります。なお、付加価値額とは「付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したもの」をいい、成果目標の比較基準となる付加価値額は、補助事業終了月の属する(申請者における)決算年度の付加価値額とされています。 こちらの要件についてはあくまでも申請時点の計画において付加価値の向上を目指すものであり、3~5年の事業計画期間が終了した時点で付加価値額の向上が達成していなくてもペナルティはありません。

④認定支援機関の確認を受けることが必要

事業再構築補助金の申請を行うためには認定経営革新等支援期間(通称「認定支援機関」)とともに事業計画の策定を行い、計画の内容について認定支援機関からの確認を受けて「認定支援機関確認書」を発行してもらう必要があります。認定支援機関は金融機関や商工会、税理士や民間のコンサルタントが取得しているため、お近くの認定支援機関にご相談ください。 当社も認定支援機関としての認定を受けておりますので、事業計画書の作成や確認についてのご相談があればお気軽にお問い合わせください。

▼事業再構築補助金の無料相談はこちら
https://planbase.co.jp/lp/saikouchiku/

▼認定支援機関の選び方はこちらで解説しています。
https://planbase.co.jp/column/122/

⑤給与支給総額を年率平均2%以上増加させることが必要

事業再構築補助金の「成長枠」に申請するためには、「給与支給総額要件」を満たす必要があります。給与支給総額要件とは、事業終了後 3~5 年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させることをもとめる要件です。

給与支給総額要件では、補助事業実施機関の終了時点が含まれる事業年度の給与支給総額を基準とし、補助事業終了後の3~5念の事業計画期間中、給与支給総額を年率平均で2%(賃上げ加点を受ける事業者は3~5%)以上増加させる計画を作成し、実行する必要があります。応募に際しては賃金引上げ計画の誓約書を提出する必要があります。 また、正当な理由がなく、上記の水準を達成することができなかった場合、事業者名が公表されるとされています。

さらに、要件として、「応募時点で直近の事業年度の給与支給総額」と「基準年度の給与支給総額」を比較したときに、「応募時点で直近の事業年度の給与支給総額」 ≦ 「基準年度の給与支給総額」であることも必要です。つまり、応募した後に簡単に要件を達成できるように基準年度の賃金を引き下げることは認められません。

事業再構築補助金「成長枠」の補助事業実施期間

事業再構築補助金も他の補助金同様、補助事業期間内に行った設備投資等のみが補助対象になります。事業再構築補助金では申請枠によって補助事業の実施機関が異なってくるため、補助事業実施期間がいつからいつまでかを抑えておく必要があります。

「成長枠」の事業実施期間は交付決定日から12ヶ月以内

事業再構築補助金の「成長枠」の事業実施期間は「交付決定日~12ヶ月以内(ただし、採択発表日から 14 か月後の日まで)」とされています。交付決定日以降の投資のみが補助対象になるため、採択前に購入した設備や採択後、交付決定前に購入した設備は補助対象外になってしまうため、設備投資(発注)は交付決定後に行うようにしましょう。

また、交付決定日から12ヶ月を超えた日以降に発注した設備等も補助対象外になってしまいます。補助事業期間内に発注、納品、支払い等のすべての手続きを完了させた上で、実績報告書も提出する必要があります。補助事業を実施する際にはスケジュール的に間に合うかどうか等を考えて速やかに補助事業を実施するようにしましょう。

なお、交付決定後に、自己の責任によらないと認められる理由により、補助事業実施機関内に完了することができないと見込まれる場合には事故等報告を提出することで補助事業期間の延長が認められる場合があります。もしも補助事業が期間内に完了できなくなってしまった場合には、早めに事務局に相談して事故報告が認められるかを確認しましょう。

事業再構築補助金「成長枠」の補助対象経費

事業再構築補助金の「成長枠」で補助対象となるのは「建物費」、「機械装置・システム構築費(リース料を含む)」、「技術導入費」、「専門家経費」、「運搬費」、「クラウドサービス利用費」、「外注費」、「知的財産権等関連経費」、「広告宣伝・販売促進費」、「研修費」です。

上記であればすべてが認められるという訳ではなく、補助対象となる経費は、事業拡大につながる事業資産(有形・無形)への相応の規模の投資を含むものであり、本事業の対象として明確に区分できるものである必要があります。

事業再構築補助金「成長枠」に申請するための必要書類

事業再構築補助金「成長枠」に申請するための必要書類

事業再構築補助金の「成長枠」に申請するためには事業計画に加えてさまざまな資料を提出する必要があります。事業再構築補助金「成長枠」の必要書類は「事業計画書」「認定支援機関確認書」「決算書等」などです。

事業計画書

事業計画書では補助金を受けて実施する事業についての詳細を記載します。事業計画書は「1:補助事業の具体的取組内容」「2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)」「3:本事業で取得する主な資産」「4:収益計画」の4つのパートに分けて作成する必要があります。事業計画書に記載されている内容を中心に審査が行われるため、事業再構築補助金で採択されるためにはこの事業計画書を丁寧に作成する必要があります。

▼事業再構築補助金の事業計画書の作成サポートはこちらから
https://planbase.co.jp/lp/saikouchiku/

認定経営革新等支援機関・金融機関による確認書

認定支援機関確認書とは、事業計画書について認定経営革新等支援機関等による確認を受けていることを確認するものです。作成した事業計画について、認定支援機関に確認してもらうことで発行してもらいます。なお、補助金額3,000万円を超える事業計画書は金融機関及び認定経営革新等支援機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみ)による確認を受けている必要がありますので、それぞれに確認書を記載して添付してください。

決算書等

原則として、直近2年分の貸借対照表、損益計算書(特定非営利活動法人は活動計算書)、製造原価報告書、販売管理費明細、個別注記表を提出します。2年分の提出ができない場合には1期分の資料の添付で問題ありませんが、設立間もない企業等で決算書の添付ができない場合には、法人等の全体の事業計画及び収支予算書を添付します。

ミラサポplusの事業財務情報

「中小企業向け補助金 総合支援サイト ミラサポ plus」(https://mirasapo-plus.go.jp/)の「電子申請サポート」で事業財務情報を作成の上、ブラウザの印刷機能で PDF 出力し、添付してください。

従業員数を示す書類

従業員数に応じて事業再構築補助金の通常枠でもらえる補助金がが変化するため、従業員数を示す書類として「労働基準法に基づく労働者名簿の写し」が必要になります。

市場拡大要件を満たすことを説明する書類

市場拡大要件を満たすことを説明する資料として「市場拡大要件を満たすことの説明書」を作成して添付する必要があります。様式は下記からダウンロードできます。

▼申請に必要な資料のダウンロードはこちらから https://jigyou-saikouchiku.go.jp/download.php

給与総額増加要件を満たすことを説明する書類

給与総額増加要件を満たすことを説明する資料として、「賃金引上げ計画の誓約書」を作成して添付する必要があります。様式は下記からダウンロードできます。

▼申請に必要な資料のダウンロードはこちらから https://jigyou-saikouchiku.go.jp/download.php

まとめ

まとめ

今回は事業再構築補助金の「成長枠」について、申請するための要件や補助金額、補助率を説明し、申請するために必要な資料を解説させていただきました。事業再構築補助金は中小企業向けの補助金の中でも金額が大きく、有効活用することで自社のビジネスの拡大を加速できる一方で、制度が複雑になっており、正確に理解しないと思わぬ理由で補助金を受けることができず、かえって経営に悪影響を与えてしまう恐れもあります。

初めての大型補助金の申請で不安な方や不採択になってしまって専門家のサポートを受けたい方は是非株式会社プランベースまでご相談ください。記者が補助金を受けられるかどうかや補助金の制度についての無料相談を実施させていただきます。

▼事業再構築補助金の無料相談はこちら
https://planbase.co.jp/lp/saikouchiku/

この記事の執筆者

村上 貴弘

村上 貴弘

東京大学経済学部卒。
中小企業診断士、行政書士。
2019年株式会社プランベース創業。
2021年meditips行政書士事務所開業。
製造業、建設業、運輸業、ソフトウェア業など幅広い業種の補助金申請支援実績が豊富。特に事業再構築補助金やものづくり補助金、成長投資補助金といった大規模な補助金の申請に強みを持つ。