2024.10.02
省力化投資補助金
中小企業省力化投資補助金 事業計画の策定手順や注意点などを徹底解説
2024年から始まった「中小企業省力化投資補助金」は、人手不足に悩む中小企業等に対して、省力化製品の導入を支援する制度です。本事業を活用することで、生産性の向上や賃金の引き上げを図ることが可能となります。
この記事では、新たに発表された中小企業省力化投資補助金における申請に必要な事業計画について、必要項目や注意点などについて徹底的に解説します。
中小企業省力化投資補助金とは?
中小企業省力化投資補助金とは、2024年から新たに始まった中小企業向けの補助金制度です。本事業における概要は以下の通りです。
本事業の目的 |
中小企業等の付加価値額や生産性の向上を図るとともに、賃上げにつなげる |
本事業の形式 |
あらかじめカタログに掲載されたIoTやロボットなど、 人手不足の解消に効果的な製品を中小企業が選択して導入する仕組み |
本事業の予算 |
1,000億円の予算が設けられており、既存基金の活用などを含めると総額5,000億円規模 |
補助率 |
1/2 |
補助上限額 |
1,500万(大幅な賃上げを行う場合) |
IoTやロボットなど、人手不足解消につながる製品を補助対象とすることで、省力化が促進されます。
人手不足に悩む中小企業にとっては、本制度を活用することで、従業員の負担軽減と企業の成長が期待されます。
▼中小企業省力化投資補助金について詳しく知りたい方はこちら
https://planbase.co.jp/column/307/#sec01
▼中小企業省力化投資補助金の無料相談はこちら
https://planbase.co.jp/lp/saikouchiku/
中小企業省力化投資補助金における事業計画の概要
事業計画は交付申請をする事前準備として必要となり、本事業の採択結果に直結する重要な項目です。また、採択・交付決定されてからも、策定した事業計画通りに事業を進めていき、効果報告まで行います。
そのため、事業計画の策定段階では、実現可能性を十分に考慮した上で、事業の具体的な目標や省力化効果を示す必要があります。また、質の高い事業計画を策定することで、採択後の事業の進行管理においても、事業計画の内容が指針となり、計画的かつ効率的な事業運営が可能となります。
事業計画には主に5つの記載項目があります。それぞれの項目について、詳細に解説していきます。
- 事業計画の策定
- 労働生産性の向上目標の要件
- 人手不足であることの確認
- 省力化を進めるための事業計画
- 賃金引上げ目標(補助上限額の引き上げを希望し大幅な賃上げを行う場合)
1. 事業計画の策定
中小企業省力化投資補助金では、中小企業等がカタログに登録された省力化製品を導入し、販売事業者と共同で取り組む事業となっています。本事業では、労働生産性の向上目標及び補助対象要件を満たす事業計画に基づいて行われるものが補助対象となります。中小企業等と販売事業者は共同で事業計画を策定し、その内容について交付申請をする必要があります。
以上より、補助金を受けるには補助対象要件を満たすことに加え、労働生産性向上を目指した計画が必須であるため、中小企業は製品導入による具体的な成果を明示する必要があります。
また、本事業は中小企業と販売事業者が共同で事業計画を策定する必要があることから、十分な協力関係を築くことが求められます。中小企業は自社の課題やニーズ、導入目標などを示し、販売事業者は専門性を活かしたサポート体制を構築することが重要であると言えます。
2. 労働生産性の向上目標
本事業において交付申請を行う中小企業等は、補助事業終了後毎年3年間、申請時と比較して労働生産性を年平均成長率3.0%以上向上させる事業計画を策定し、交付申請で計画を申請します。また、採択を受けた場合は、策定した事業計画に取り組んでいきます。
【申請画面のイメージ】
労働生産性の定義
労働生産性は、以下のように定義されています。なお、式中の各値は、報告を行う時点で期末を迎えている直近の事業年度の値を用いるものとします。
効果報告について
補助事業終了後、毎年度4月から6月までに効果報告を行います。このとき提出する補助事業者の労働生産性、賃金等に関する情報は、その時点で期末を迎えている直近1年間の事業年度の値を用いるものとします。
交付決定を受けてから補助事業が終了し3回目の効果報告を提出するまでを事業計画期間とし、この報告をもって労働生産性の向上に係る目標の達成状況が評価されます。
なお、効果報告期間は5年間(5回目の効果報告を行うまで)です。期限までに効果報告が提出されなかった場合は、交付決定が取消されることがあります。
3. 人手不足であることの確認
中小企業省力化投資補助金は人手不足に悩む中小企業向けの制度であるため、人手不足に該当しない場合は申請の対象とはなりません。よって、事業計画の中にも人手不足であることが確認できる内容を記載する必要があります。
本項目では、人手不足の状態である理由の選択と、それに伴う必要書類の添付を行います。
【申請画面のイメージ】
人手不足の理由についての選択
中小企業等は、人手不足である理由をいずれか1つ選択し、省力化を進める必要があることを示します。
- 限られた人手で業務を遂行するため、直近の従業員の平均残業時間が30時間を超えている。
- 整理解雇に依らない離職・退職によって従業員が前年度比で5%以上減少している。
- 採用活動を行い求人を掲載したものの、充足には至らなかった。
- その他、省力化を推し進める必要に迫られている。
ただし、4.を選択している場合は例外的な扱いとなり、省力化投資の必要性をより厳格に審査するため、採択結果通知が大幅に遅れる可能性があります。
提出書類
選択した人手不足である理由について、詳細を示すための書類の提出が必須となっています。それぞれの理由に必要となる書類は以下の通りとなっています。
番号 |
書類 |
詳細 |
1 |
【指定様式】時間外労働時間 (Excel) |
平均残業時間が30時間を超えていることを示す書類の提出が必要になります。 |
2 |
【指定様式】従業員減少の確認用 (Excel) |
従業員数が減少したことを示す書類の提出が必要になります。ただし、「常時使用する従業員」でない者が主体の事業者については従業員数を総労働時間を代替することができます。 |
3 |
求人募集したことを証明する書類 (PDF,JPEG,PNG) |
採用活動を行ってきたことを示す書類が必要になります。現在掲載しているまたは直近1年以内に掲載していたものである必要があります。 |
1と2については指定様式となっているため、公式HPから入手する必要があります。
▼指定様式のダウンロードはこちら
https://shoryokuka.smrj.go.jp/download/
また、提出書類については、詳細に解説した記事がありますので、それらも合わせて参照してください。
▼中小企業省力化投資補助金における提出書類の詳しい情報はこちら
https://planbase.co.jp/column/322/
4. 省力化を進めるための事業計画
中小企業等と販売事業者は、カタログから選んだ製品を用いて、労働生産性の向上目標を達成する見込みの事業計画を策定し、事業計画の申請にあたり下記に示す(1)~(3)の3点を交付申請時に説明する必要があります。
(1)(2)は中小企業等が説明をし、(3)は販売事業者がExcelに入力のうえ交付申請時に添付をします。
(1)導入製品の使用方法について
以下の申請画面のイメージに示すように、省力化効果を発揮するための使用方法について、1⃣使用者、2⃣使用場所、3⃣使用時間、4⃣使用目的を入力し、5⃣その説明を行います。
【申請画面のイメージ】
それぞれの項目について以下で解説します。
項目 |
入力内容 |
具体例 |
1⃣ 使用者 |
業務において省力化製品を使用する者を入力します。 |
ホールスタッフ、清掃員、お客様、作業員など |
2⃣ 使用場所 |
省力化製品を使用する場所を入力します。 |
調理場、ホテルのフロア、店舗、工場など |
3⃣ 使用時間 |
省力化製品を業務にて使用する時間を入力します。 |
営業時間外、営業時間中、毎日8時~10時など |
4⃣ 使用目的 |
省力化製品の使用目的を端的に入力します。 |
調理業務、清掃業務、注文受付、商品の仕分けなど |
5⃣ 説明
使用方法及び導入計画について1⃣~4⃣すべてを用いて200字程度で説明します。その際以下の観点を踏まえ、何の業務を省力化製品によってどのように置き換えるのか具体的に説明することが求められます。
- 省力化製品をどの業務にて使用するのか
- 現在行っているどのような業務を、今後省力化製品が担うことになるのか
- 省力化製品を具体的にどのように使用するのか
- 現在どのような状況下にあり省力化製品を必要としているのか
- 現在の人手不足が、省力化製品を導入することによりどのように改善されていくのか
省力化製品の具体的な使用方法や使用場面に加え、製品導入前後における省力化効果を示すことが重要であると言えます。
(2)省力化により既存業務から抽出できると期待される時間・人員の使途
本項目では、既存業務から抽出される時間・人員の使途について、選択リストから当てはまるものを選択し、選択した内容について200字程度で説明をします。
【申請画面のイメージ】
1⃣ 選択リストから該当するものを選択
抽出できると期待される時間・人員の使途についての選択リストには、以下の4項目があり、1つを選択します。
- 今後の従業員の減少に対する業容維持(時短営業の回避など)のため
- 従業員の負担軽減のため
- 新規の受注獲得・業容拡大のため
- その他
2⃣ 選択した内容をより具体的に文章で説明
現在の労働環境や抱える課題等、省力化製品に置き換わる前の業務実態について200字程度で説明します。さらに、上で選択した時間・人員の使途についても詳しく説明します。
現在の業務でどのような非効率が生じているのかなど、省力化製品を導入する前の業務実態を説明することに加え、それが省力化製品によってどのように改善されるかについもて記載することが必要であると言えます。
(3)製品の導入により期待される省力化の効果
この項目は販売事業者が入力する内容です。販売事業者は「【指定様式】省力化効果判定シート」をダウンロードし、必要事項を入力の上、交付申請時に添付します。
以下にスチームコンベクション・小売業を例にした記入シートを示します。
1⃣ 種別
導入する省力化製品のカテゴリ及び業種ごとにシートが異なりますので、該当するカテゴリ及び業種のシートであることを確認してください。
2⃣ 導入環境
省力化製品の導入する環境について、プルダウンから1または2を選択してください。
スチームコンベクション・小売業の場合、選択肢は以下の2つです。
- 店舗スタッフが行っている調理業務をスチームコンベクションオーブンに置き換える
- 既に別のスチームコンベクションオーブンが行っている調理業務を今回申請するスチームコンベクションオーブンで行う
別の種別においても、1. では人員で行っている業務を製品に置き換える、2. では既に使用している製品を今回申請する製品で行う、といった内容になっています。
3⃣ 省力化製品省力化機能
製品カタログに登録された内容を入力していきます。「棚数」や「洗浄作業時間」「天板サイズ」など、それぞれの種別で定められている製品の機能を記載してください。
4⃣ 費用
本項目では、「製品本体販売価格合計」と「設置設定費用合計」を入力します。
複数導入する場合は合計を入力します。
5⃣ 導入製品・導入計画
「従業員数」や「交付申請する製品数」、「一日当たりの生産数」などを入力していきます。
シートに注釈が記載されていますので、それに沿って入力していきます。
6⃣ 宣誓事項
記載した内容が中小企業等の既存の事業内容と相違していないことを確認の上、チェックを入れます。
実績報告や実地検査等において、事業の実態が確認できない等、申請内容と実態との乖離が判明した場合には、交付決定の取消となる場合があります。
7⃣ 省力化効果判定
この項目では、導入する省力化製品の省力化効果が判定されます。
省力化効果が得られると判定された場合には「良」と表示されます。一方で、計画の見直しが必要と判断された場合には「導入製品・導入計画の見直しが必要」と表示されます。
省力化効果判定を参考にして、省力化効果が得られているのか、事業計画の見直しが必要なのかを確認しましょう。
5. 賃金引上げ目標
この項目は、補助上限額の引き上げを希望し、大幅な賃上げを行う中小企業等が必要となる項目です。
賃上げの目標には、「(a)事業場内最低賃金を45円以上増加させること」と「(b)給与支給総額を6%以上増加させること」があります。これらの目標を交付申請時と比較して、補助事業期間終了時点で達成する見込みの事業計画を策定し、賃金引上げ計画を従業員に表明することが必要となります。
以下の項目で、賃金引上げ目標について詳細を解説していきます。
賃金引上げ計画の策定と従業員への表明
補助上限額の引き上げを希望する中小企業等は、賃上げ計画の策定と従業員への表明が必要となります。
交付申請時に、「賃金引き上げの事業計画を策定し、補助上限額の引き上げを行います」と「策定した事業計画を従業員に表明しましたか」というチェック項目がありますので、チェックを入れ必要書類を添付します。
給与支給総額増加の計画
交付申請時点の直近月と比べて、補助事業期間終了時点で給与支給総額を6%以上増加させる見込みの事業計画を策定します。
給与支給総額は、非常勤を含む全従業員に支払った給与とし、交付申請時点の直近1カ月分とします。
提出書類
賃金引き上げを行う際には書類の提出が必要です。
以下の通り、2つの賃上げ目標のそれぞれについて、書類が必要となります。
(a)事業場内最低賃金を45円以上増加させること |
交付申請時:交付申請時点の直近月の最低賃金者の賃金台帳 |
実績報告時:実績報告時点の直近月の最低賃金者の賃金台帳 |
(b)給与支給総額を6%以上増加させること |
交付申請時:前項目にて入力した計画値のみで、提出書類はありません |
実績報告時:交付申請時点の直近月の全従業員の賃金台帳及び実績報告時点の直近月の全従業員の賃金台帳 |
申請に当たっては、これらの提出書類を不足事項なく正確に準備することが必要です。計画的に書類を整え、余裕を持って申請を進めましょう。
目標の達成
実績報告において、賃上げの目標が達成できていなかったことが確認された場合、補助上限額の引き上げ適用されなくなります。なお、本目標を達成するために報告対象期間のみ賃金の引き上げを行い、実績報告以降に賃金の引き下げを行うことは認められません。
また、正当な理由なく、効果報告時点の賃金が実績報告時の値を下回っていた場合、補助金の返還を求められる場合があります。
中小企業省力化投資補助金の事業計画 まとめ
この記事では中小企業省力化投資補助金の事業計画について、解説させていただきました。
事業計画の策定は、採択結果に直結する重要な項目であり、採択・交付決定されてからも、策定した事業計画通りに事業を進めていき、効果報告まで行います。
よって、事業計画の策定段階では、事業の必要性や省力化効果などを明確にし、現実的かつ効果的な計画を立てることが重要です。
本事業を上手く活用することで、中小企業等にとって大きな課題である人手不足や人件費の高騰に対応する体制を整えることが可能となります。
また、自社の課題やニーズに合った製品を選択し、導入補助を受けることで、事業の生産性向上や賃上げを図ることが可能となるため、おすすめの制度です。
申請前の準備や採択後の事業を円滑に進めるために、質の高い事業計画の策定を目指しましょう。
中小企業省力化投資補助金に関する記事は他にもありますので、参考にしてください。
▼「中小企業省力化投資補助金の詳細」に関する記事はこちら
https://planbase.co.jp/column/307/
▼「中小企業省力化投資補助金の採択率や採択率を上げるポイント」に関する記事はこちら
https://planbase.co.jp/column/320/
▼「中小企業省力化投資補助金のスケジュール」に関する記事はこちら
https://planbase.co.jp/column/317/
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この記事の執筆者
村上 貴弘
東京大学経済学部卒。
中小企業診断士、行政書士。
2019年株式会社プランベース創業。
2021年meditips行政書士事務所開業。
製造業、建設業、運輸業、ソフトウェア業など幅広い業種の補助金申請支援実績が豊富。特に事業再構築補助金やものづくり補助金、成長投資補助金といった大規模な補助金の申請に強みを持つ。
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