ものづくり補助金とは、経営革新を計画する中小企業に対し、必要な設備投資を最大5,000万円まで支援する補助金制度です。申請には枠があり、中でも新特別枠(低感染リスク型ビジネス枠)には、多くの事業者が応募していました。この記事では、最新のものづくり補助金の公募要領などについて解説します。
第15回ものづくり補助金のポイント
COLUMN お役立ちコラム
2023.06.14
ものづくり補助金
【2023年6月最新版】ものづくり補助金の新特別枠は廃止|最新の第15次公募要領やスケジュールを詳しく解説
目次
はじめに
ものづくり補助金とは?
ものづくり補助金とは?
ものづくり補助金とは、経済産業省が実施する「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の略称で、中小企業や小規模事業者が取り組む「革新的なサービス」や「生産プロセスの改善」に必要な費用を補助する補助金制度です。
▼第15回ものづくり補助金公募要領はこちら
▼2024年(令和6年)ものづくり補助金の最新情報まとめ!
https://planbase.co.jp/column/264/
事業の目的
補助金のルールブックである「公募要領」では、ものづくり補助金事業の目的として、以下のように定めています。
中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更 (働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)に対応するため、
中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行い、生産性を向上させるための設備投資等を支援します。
直面する制度変更は、働き方改革や社会保険関連、賃上げ、インボイス等幅広く、それらの課題に対する解決手段も、革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善など多岐にわたります。つまり、「生産性を向上させる設備(システム)投資」を支援する事業であれば、広くものづくり補助金の申請をご検討頂けます。逆に言えば、単なる運転資金の捻出や自社の人材に対する投資(人件費など)に活用したい場合、ものづくり補助金は利用できません。
制度概要
ものづくり補助金の概要を以下4つのポイントにまとめました。
①設備(システム)投資が大前提!
ものづくり補助金は、原則として50万円以上の設備投資・システム投資を行う計画が対象です。その中で、技術導入費・クラウドサービス利用費・外注費など、用途に合わせて幅広く申請可能な点が特徴です。
②幅広い申請類型
ものづくり補助金には、「通常枠」「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」「グローバル市場開拓枠」の合計5つの類型が用意されており、類型ごとに求められる要件が異なります。自社のニーズにあわせ、採択可能性の高い類型を選択して申請することが出来ます。
③豊富な予算・安定した採択率
令和4年12月2日に成立した「令和4年度第2次補正予算」におけるものづくり補助金の説明資料によれば、令和4年度における予算額は国庫債務負担を含めて4,000億円と大きな予算がついています。また、足もとでの全国の補助金採択率は50~60%と非常に安定して推移しています。
④制度の安定性・継続性
ものづくり補助金は、2014年に「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業」という名前で始まり、現在に至るまで細かな名称変更や制度変更を経ているものの、今年で10年目となる制度です。令和5年3月現在、令和6年度にかけて切れ目なく実施予定と発表されており、今年度だけでも計4~5回の公募実施が見込まれています。
以上4つのポイントから、ものづくり補助金は、設備投資を検討する事業者にとって最適な補助金であることが伺えます。
第10次公募以降、新特別枠(低感染リスク型ビジネス枠)は廃止に
ものづくり補助金の「新特別枠(低感染リスク型ビジネス枠)」は、新型コロナウイルスの影響を受けた事業者を優先的に支援するために設けられた枠です。第6次公募から新設されましたが、第9次公募が最終の受付となっており、第10次以降の公募では廃止されています。
なお、新特別枠の補助対象経費となっていた広告宣伝・販売促進費については、他の枠では認められていません。そのため、新特別枠の廃止後からは補助対象外の経費となるので、今後申請する場合は注意が必要です。
公募されている枠は?
ものづくり補助金は、現在第15次公募が実施されています。第15次公募では、下図のように、通常枠に加えて4つの枠が用意されています。
ここからは、通常枠以外の4つの枠について解説しますので、申請前の参考にしてください。
回復型賃上げ・雇用拡大枠
回復型賃上げ・雇用拡大枠は、業績は厳しいものの、賃上げや雇用拡大のために努力している事業者を支援するための枠です。補助率は2/3以内で、事業規模によって750万円~1,250万円が上限となっています。 この枠では、基本要件に加えて以下の要件を満たす必要があります。
・前年度の課税所得がゼロ以下であること
・常時従業員がいること
・補助事業の完了後、給与支給総額と最低賃金の増加目標を達成すること(未達は全額返還)
デジタル枠
デジタル枠は、DXに役立つ革新的な製品やサービスの開発または生産プロセスやサービス提供にデジタル技術を導入して改善を図る事業者を支援するために設けられた枠です。補助金額は、回復型賃上げ・雇用拡大枠と同じです。 DXを実現するための開発または改善のどちらかを満たす事業者であることに加え、以下の要件を満たす必要があります。
・経済産業省の「DX推進指標」基に自己診断を実施し、結果を応募締切日までに独立行政法人情報処理推進機構に提出していること
・独立行政法人情報処理推進機構の「SECURITY ACTION」で「一つ星」または「二つ星」の宣言を行っていること
グリーン枠
グリーン枠は、温室効果ガスの削減に資する取り組みを実施する事業者を支援するための枠です。満たした要件の内容によって、エントリー類型、スタンダード類型、アドバンス類型のいずれかで申請します。3つの型いずれも、補助率は2/3で、アドバンス類型の補助額が最も大きく、上限は最大4,000万円です。
グローバル市場開拓枠
グローバル市場開拓枠は、海外事業を拡大・強化しようとする事業者を支援するための枠です。補助率は1/2ですが、小規模企業者・小規模事業者の場合は2/3に引き上げされます。また、補助金額は100万円~3,000万円です。「海外直接投資類型」、「海外市場開拓(JAPANブランド)類型」、「インバウンド市場開拓類型」、「海外事業者との共同事業類型」の4つの型のいずれかで申請します。それぞれの型で要件が異なるので、事業の特性に合ったものが選択可能です。 さらに、他の枠に比べると実施期間が長く設定されており、12か月以内となっています。
基本要件とは?
ものづくり補助金に応募するためには、原則として基本要件を満たす必要があります。基本要件は以下の通りです。
・事業計画期間内に、付加価値額を年率平均3%以上増加させる
・事業計画期間内に、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる
・事業計画期間内に、事業場内の最低賃金を、地域別最低賃金よりも30円以上高い水準にする
上記の基本要件をすべて満たせる3~5年の事業計画の策定事業計画を策定すれば、通常枠への申請が可能となります。さらに、前述した他の4つの枠に応募するためには、先述した各枠の要件も満たさなければなりません。
基本要件を満たせなかった場合の返還規定
ものづくり補助金の申請の際には、返還規定への同意も必要となっています。交付が認められた後に要件の未達が発覚した場合の返還規定は以下の通りです。
・交付後に、申請時点での賃上げ計画の策定がなかったことが発覚した場合:全額返還
・事業計画が終了したときに給与支給総額要件が未達の場合:
「残存簿価等×補助金額/実際の購入金額」を返還
・最低賃金の増加目標が未達の場合:「補助金額/計画年数」を返還
・再生事業者である場合、各目標が達成できていなくても返還は免除
大幅賃上げに関する特例とは?
ものづくり補助金では、事業計画において基本要件に加えて賃上げに関する追加要件を満たせば、補助上限額が引き上げられるという特例があります。従業員5人以下で100万円、6~20人で250万円、21人以上で1,000万円が引き上げされるため、申請する事業で達成可能であれば活用すべきです。 大幅賃上げに関する特例の追加要件は以下の通りです。
・給与支給総額を基本要件に加え、年率4.5%以上増加させる(合計年率6%)
・事業場内最低賃金を、基本要件に加え年額+45円増加させる
・上記2件の要件を達成するために、具体的かつ詳細な事業計画を提出する
なお、大幅賃上げに関する特例の要件を含めて申請したものの達成できなかった場合は、「補助金交付金額から特例によって引き上げられた補助上限額の差額」の返還を求められます。
ものづくり補助金の対象事業者は?
ものづくり補助金の対象事業者は?
ものづくり補助金は、中小企業とされる個人や企業だけでなく、特定非営利活動法人や社会福祉法人も対象となります。ただし、過去3年間で2回以上類似の補助金制度で交付を受けている事業者やみなし大企業とされる事業者など、一部事業者は補助対象から除外されるケースもあるので注意しましょう。また、特定非営利活動法人と社会福祉法人は、従業員数が300人以下が対象です。さらに特定非営利活動法人の場合は、以下もチェックします。
・認定特定非営利法人ではないこと
・広く中小企業の振興や発展に貢献する活動を実施する特定非営利活動法人であること
・法人税法上の収益事業であること
・交付までに経営力向上計画の認定を受けていること
ものづくり補助金の対象経費は?
ものづくり補助金の対象経費は?
ものづくり補助金で補助される経費は以下の通りです。
・機械装置、システム構築費
・運搬費
・技術導入費:補助対象経費総額の1/3
・知的財産権等関連経費:補助対象経費総額の1/3
・外注費:補助対象経費総額の1/2
・専門家経費:補助対象経費総額の1/2
・クラウドサービス利用費
・原材料費
また、グローバル市場開拓枠では、以下の経費も対象となります。
・海外旅費:補助対象経費総額の1/5
・通訳・翻訳費:補助対象経費総額の1/5(海外市場開拓(JAPANブランド)類型のみ)
・広告宣伝、販売促進費:補助対象経費総額の1/2(海外市場開拓(JAPANブランド)類型のみ
申請に必要な書類は?
申請に必要な書類は?
ものづくり補助金の申請には、さまざまな書類を用意しなければなりません。全枠で共通する必要書類は以下の通りです。
・事業計画書
・補助経費に関する誓約書
・賃金引上げの誓約書
・決算書等
・従業員数の確認資料
・労働者名簿
・再生事業者に係る確認書(再生事業者のみ
上記の必要書類に加え、各枠ごとに必要とされる書類の用意が必要です。また、加点を希望する場合は、加点要件を満たしていることを証明する書類も用意しなければなりません。詳しくは、下の写真を参考にしてください。
審査では、事業計画書の内容が重要視されます。具体的な取り組み内容や将来の展望、実現性のある数値目標を明確に示すこと重要です。
補助金事業の申請に強い専門機関のサポートを受けながら作成するのをおすすめします。
ものづくり補助金の審査項目は?
ものづくり補助金の審査項目は?
ものづくり補助金の審査は、以下の3つの観点から判断されます。
・技術面:革新性があるか、数値目標は明確かなど
・事業化面:市場ニーズにあっているか、実施体制は整っているかなど
・政策面:地域経済に貢献するか、イノベーション性があるかなど
さらに、グリーン枠とグローバル市場開拓枠では、以下の観点もチェックされるので注意が必要です。
・グリーン枠:炭素生産性向上の取り組み等の妥当性
・グローバル市場開拓枠:グローバル市場開拓の取り組み等の妥当性がみられるる
また大幅賃上げに取り組む事業者に対しては、賃上げの取組等の妥当性が審査されます。
最新公募スケジュールと申請方法は?
最新公募スケジュールと申請方法は?
ものづくり補助金は、令和5年4月19日から第15次公募がスタートしています。申請は令和5年5月12日17:00~令和5年7月28日17:00です。
また、申請は電子にのみ対応しており、事前にGビズIDプライムアカウントの取得が求められます。アカウント取得には時間がかかるため、余裕をもって対応しておくとスムーズです。
※参考※ gBizID公式ホームページ
第15次公募からの変更点は?
第15次公募からの変更点は?
第14次公募で大きな変更があったものづくり補助金ですが、第15次公募で大きな変更は見られませんでした。しかしながら、一部小さな変更点が見つかったのでご紹介します。
1. 加点項目の追加
1つ目は、加点項目の追加です。具体的には、ワーク・ライフ・バランス等の推進の取り組み加点が追加されました。下が公募要領を引用したものになります。
⑤ワーク・ライフ・バランス等の推進の取り組み加点 ⑤-1: 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく「える ⑤-2:次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく「くるみん認定」を受けている事業 |
公募要領で言及されている「えるぼし認定」とは、厚生労働大臣から、女性の活躍に対する取り組みが優良な企業に対して与えられる認定のことです。(※参考: えるぼし認定)
一方「くるみん認定」とは、同じく厚生労働大臣から、「子育てサポート企業」として認められた企業に対して与えられる認定のことです。(※参考:くるみん認定)
2. 常勤従業員についての注意書き
2つ目は、常勤従業員についての注意書きの点です。第14次と第15次の公募要領を比較すると、第15次の最後に「代表取締役や専従者等の常勤従業員に当てはまらない者が含まれていることが判明した場合、採択取消等にることがあります。」という文章が追記されていることが分かります。採択取消になることを防ぐために、注意して書類を作成しましょう。
第14次公募締切 | 第15次公募締切 |
常勤従業員は、中小企業基本法上の「常時使用する従業員」をいい、労働基準法第20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」と解されます。これには、日々雇い入れられる者、2か月以内の期間を定めて使用される者、季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者、試用期間中の者は含まれません。 | 常勤従業員は、中小企業基本法上の「常時使用する従業員」をいい、労働基準法第20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」と解されます。これには、日々雇い入れられる者、2か月以内の期間を定めて使用される者、季節的業務に 4 か月以内の期間を定めて使用される者、試用期間中の者は含まれません。代表取締役や専従者等の常勤従業員に当てはまらない者が含まれていることが判明した場合、採択取消等になることがあります。 |
3. サーバーセキュリティ対策の追加
3つ目は、サイバーセキュリティ対策の追加です。 第15回公募要領から、参考資料に「サイバーセキュリティ対策について」という参考資料が追加されました。ここでは、今後セキュリティ対策に取り組もうとする企業が検討すべき項目が示されています。 補助対象の経費として
・機械装置/システム構築費:製品やサービスのセキュリティの向上に資する生産設備やソフトウェア等 ・専門家経費:製品・サービスの設計時のセキュリティ設計に関するアドバイスを含む ・外注費:セキュリティ対策のためにテストを実施する費用を含む |
とセキュリティ対策に係る経費が含まれているように、セキュリティ対策も一つの補助対象となっています。 サイバーセキュリティ対策に関しては、つい先日公表された「IoT 機器を開発する中小企業向け製品セキュリティ対策ガイド 」を参考にしてみてください。
補助金の申請で注意すべきことは?
補助金の申請で注意すべきことは?
ものづくり補助金を申請するなら、以下の2点に注意が必要です。
後払いのため資金繰りに注意
補助金は後払いとなるため、設備投資などには先行投資が必要です。よく考えて運営していかないと資金繰りが悪化する可能性があります。 補助金があるからと予算を上回る設備を購入してしまうなど、余計に資金を使ってしまわないように注意が必要です。賃上げ計画も実施する場合は、人件費も上がるため、交付までの資金繰りは計画性を持って行うようにしましょう。
煩雑な事務手続きによる影響
申請の際には、事業計画書の作成やその他の書類の準備のために事務作業が煩雑化する可能性があります。採択のためには、事業計画書の内容を充実させる必要があるため、作成には時間がかかるでしょう。また採択後も、5年間の報告義務があるため、引き続き事務手続きが増えてしまいます。
申請時の各種書類については、専門家のサポートを受けることでスムーズに準備できる可能性があるので、依頼するのも一つの手です。
まとめ
まとめ
新型コロナウイルスの流行で影響を受けた事業者に注目されていたものづくり補助金の新特別枠ですが、現在は公募されていません。しかし、通常枠やその他の枠では、引き続き支援は続いており、第15次公募もスタートしています。要件を満たせる事業者であれば、活用すべき補助金です。また、ものづくり補助金で採択されるためには、審査項目を考慮した具体的な事業計画書の作成が必要です。審査に有利な事業計画書やその他の必要書類の準備には、補助金の申請に強い専門家のサポートが役立ちます。
▼2024年(令和6年)ものづくり補助金の最新情報まとめ!
https://planbase.co.jp/column/264/
「株式会社プランベース」は、採択件数全国トップクラスの経済産業省認定支援機関です。採択されやすい事業計画の策定など、補助金申請支援を実施しています。
ものづくり補助金など、補助金申請でお悩みの事業者の方はぜひ、以下からお問い合わせください。
▼ものづくり補助金の無料相談はこちら
https://planbase.co.jp/lp/monodukuri/
この記事の執筆者
村上 貴弘
東京大学経済学部卒。
中小企業診断士、行政書士。
2019年株式会社プランベース創業。
2021年meditips行政書士事務所開業。
製造業、建設業、運輸業、ソフトウェア業など幅広い業種の補助金申請支援実績が豊富。特に事業再構築補助金やものづくり補助金、成長投資補助金といった大規模な補助金の申請に強みを持つ。
おすすめの関連記事
-
【2024年】ものづくり補助金 18次締切について|公募要領や変更点などを解説!!
-
【速報】ものづくり補助金16次締切 採択結果を徹底分析!
-
ものづくり補助金 17次締切 省力化(オーダーメイド)枠とは?変更点やポイントを徹底解説
-
【2024年2月更新】2024年(令和6年)ものづくり補助金の最新情報まとめ!変更点などポイントを徹底解説!!
-
宿泊業はものづくり補助金の対象になる!ホテルや旅館の活用事例、申請プロセスを徹底解説!!
-
ものづくり補助金は中古品も対象?補助対象の経費や注意点を解説
-
結論:ものづくり補助金は複数回申請しても大丈夫!対象外となる企業とは
-
ものづくり補助金のグローバル市場開拓枠とは?内容や採択率、申請のポイント
CATEGORY
ARCHIVE
TAG
人気の記事