• 新事業進出・ものづくり補助金

新事業進出・ものづくり補助金とは?3つの枠の補助率・上限額・申請要件を徹底解説

目次

設備投資を中心に、革新的な新製品・新サービスの開発や、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出、海外市場開拓(輸出)に向けた国内体制の強化に、新事業進出・ものづくり補助金は活用できるのか。本記事では、認定支援機関として補助金申請を多数支援してきた知見をもとに、令和8年度第1回公募「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」について、事業枠ごとの補助率・上限額、申請要件、審査の仕組み、申請の流れ、提出書類、よくある不採択パターンと回避策まで網羅的に解説します。

▼ この記事の結論
新事業進出・ものづくり補助金は、従来の「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」(事業再構築補助金の後継制度)を一つに再編した制度で、「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3枠から取り組みの方向性に応じて選びます。補助上限は最大9,000万円(新事業進出枠・グローバル枠の101人以上・賃上げ特例適用時)と大型で、設備投資(機械装置・システム構築費または建物費)が必須経費の柱です。全枠共通で付加価値額年平均4.0%以上・賃上げ年平均3.5%以上などの要件があり、未達時には返還義務が生じます。第1回公募の申請締切は2026年9月30日(水)18:00必着で、申請は電子申請システムのみ・GビズIDプライムが必須です。

新事業進出・ものづくり補助金とは — 制度の全体像

新事業進出・ものづくり補助金の正式名称は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」で、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」)が基金設置法人として執行する補助金です。中小機構から委託を受けた事務局が、申請受付・審査・交付などの手続きを担います。

本事業の目的は、中小企業等が行う技術的革新性のある製品・サービスの開発や、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出、海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制の強化を後押しすることで、企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、それを賃上げにつなげていくことにあります。

本制度は、従来の「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」を組み合わせ、一つの制度として再編したものです。「革新的な新製品・新サービスの開発」を支援してきたものづくり補助金の系統が革新的新製品・サービス枠に、「既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出」を支援してきた新事業進出補助金の系統が新事業進出枠に対応し、さらに海外市場開拓を後押しするグローバル枠が新たに加わった構成になっています。

「新事業進出・ものづくり補助金」と「ものづくり補助金」「新事業進出補助金」の違い

新事業進出・ものづくり補助金は、従来の「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」を一つに再編した制度です。これまで別々に公募されていた2制度が統合され、取り組み内容に応じて枠を選ぶ形に整理されました。ただし、支援の狙い・よく使う経費・補助上限・実施期間には、それぞれの系統ごとの違いが残っています。以下で「もとの制度」と「対応する枠」を対応させながら整理します。

ものづくり補助金の系統 =「革新的新製品・サービス枠」

「革新的な新製品・新サービスの開発」を支援してきたものづくり補助金の系統が、新制度の革新的新製品・サービス枠に対応します。自社の技術力を活かした新製品・新サービスの開発が対象で、単なる設備導入や既存プロセスの改善にとどまるものは対象外です。必須経費は機械装置・システム構築費に限られ、建物費は使えません。補助上限は従業員規模に応じて750万〜2,500万円(賃上げ特例で最大3,500万円)と3枠のなかでは小さめで、補助率は中小企業者1/2(小規模企業・小規模事業者は2/3)、補助事業実施期間は交付決定日から10か月以内です。創業まもない事業者でも申請でき、創業年数の制限はありません。

新事業進出補助金の系統 =「新事業進出枠」

「既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出」を支援してきた新事業進出補助金の系統が、新制度の新事業進出枠に対応します。なお新事業進出補助金は、事業再構築補助金の流れをくむ後継的な制度と位置づけられています。新たに製造・提供する製品等が事業者にとって新規性を持ち、かつその市場が新たな市場であることが条件です。機械装置・システム構築費に加えて建物費を必須経費に充てられ、補助上限は2,500万〜7,000万円(賃上げ特例で最大9,000万円)と大型です。補助率は中小企業者1/2、補助事業実施期間は交付決定日から14か月以内です。ただし、新規設立・創業後1年に満たない事業者は本枠のみ対象外となる点に注意が必要です。

ものづくり補助金(グローバル枠)の系統 =「グローバル枠」

新制度では、ものづくり補助金(グローバル枠)の流れを汲んだ海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化を支援するグローバル枠も設けられています。補助下限額・補助上限額は新事業進出枠と同じ(最大9,000万円)ですが、補助率は中小企業者2/3と手厚く設定されています。機械装置・システム構築費または建物費に加えて、海外旅費・通訳翻訳費も補助対象になる点が他枠との違いです。

基本要件は全枠共通 — 選び方は「取り組みの方向性」で

一方で、付加価値額の年平均4.0%以上・一人当たり給与支給総額の年平均3.5%以上・事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上といった基本要件は、いずれの枠でも共通です。したがって枠選びは、「新製品・新サービスを開発したい」企業は革新的新製品・サービス枠、「新しい市場・高付加価値事業へ進出したい」企業は新事業進出枠、「輸出に向けて国内体制を強化したい」企業はグローバル枠、と取り組みの方向性で選ぶのが基本になります。

新事業進出・ものづくり補助金で補助対象となる3つの事業枠

本補助金には、取り組みの方向性に応じた以下の3つの事業枠があります。「新製品・新サービスを開発したい」企業は革新的新製品・サービス枠、「新しい市場・高付加価値事業へ進出したい」企業は新事業進出枠、「輸出に向けて国内体制を強化したい」企業はグローバル枠、と選ぶのが基本です。

  • 革新的新製品・サービス枠:革新的な新製品・新サービス開発の取組を支援する枠(ものづくり補助金の系統)。顧客等に新たな価値を提供することを目的に、自社の技術力等を活かして新製品・新サービスを開発する事業が対象です。単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないものや、既存の製品・サービスの生産プロセスの改善にとどまるものは対象外です。機械装置・システム構築費が必須で、建物費は対象外です。
  • 新事業進出枠:既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠(新事業進出補助金の系統)。新たに製造等する製品等が事業者にとって新規性を有し、かつその市場が事業者にとって新たな市場であることが条件です。ここでの新規性は「日本初・世界初」ではなく、補助事業に取り組む事業者にとっての新規性を指します。機械装置・システム構築費または建物費のいずれかが必須です。
  • グローバル枠:海外市場開拓(輸出)に向けた、国内の輸出体制強化の取組を支援する枠。自社製品を活用し自発的に新たな海外販路を開拓するうえで必要な国内製造等拠点の強化が対象で、取引先主導の事業は自発的な取組とは認められず対象外です。機械装置・システム構築費または建物費のいずれかが必須で、海外旅費・通訳翻訳費も補助対象になる点が特徴です。

なお、同一事業者での応募は1回の公募につき1申請に限られます。複数の事業を計画している場合は、1つの事業計画書中に複数事業の内容を記載して申請することは可能です。親会社が議決権の50%超を有する子会社などの「みなし同一事業者」の応募も、1回の公募につき1申請に限られます。

事業枠ごとの補助率・上限額・実施期間

各枠の補助上限額・補助率・実施期間は以下のとおりです。数値は令和8年度第1回公募(公募要領1.0版)時点のものです。最新の公募要領は事務局ホームページでご確認ください。

革新的新製品・サービス枠

ものづくり補助金の系統を引き継ぐ、革新的な新製品・新サービス開発を支援する枠です。補助下限額は100万円で、補助上限額は従業員規模に応じて750万円〜2,500万円(賃上げ特例適用時は850万円〜3,500万円)です。補助率は中小企業者1/2(地域別最低賃金引上げ特例の場合2/3)、小規模企業・小規模事業者・再生事業者は2/3です。補助事業実施期間は交付決定日から10か月以内(ただし採択発表日から12か月以内)です。機械装置・システム構築費が必須で、建物費は対象外です。

新事業進出枠

新事業進出補助金の系統を引き継ぐ、新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。補助下限額は750万円で、補助上限額は従業員規模に応じて2,500万円〜7,000万円(賃上げ特例適用時は3,000万円〜9,000万円)です。補助率は中小企業者1/2(特例の場合2/3)です。補助事業実施期間は交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内)で、機械装置・システム構築費または建物費のいずれかが必須です。なお、新規設立・創業後1年に満たない事業者は本枠のみ対象外となります。

グローバル枠

海外市場開拓に向けた国内の輸出体制強化を支援する枠です。補助下限額・補助上限額は新事業進出枠と同じ(最大9,000万円)ですが、補助率は中小企業者2/3とやや手厚く設定されています。補助事業実施期間は交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内)です。機械装置・システム構築費または建物費に加えて、海外旅費(補助対象経費総額の1/5以下)・通訳翻訳費(上限30万円)が補助対象になる点が他枠との違いです。

補助上限額・補助率の早見表

従業員数革新的新製品・サービス枠
(下限100万円)
新事業進出枠
(下限750万円)
グローバル枠
(下限750万円)
1〜5人750万円(850万円)2,500万円(3,000万円)2,500万円(3,000万円)
6〜20人1,000万円(1,250万円)2,500万円(3,000万円)2,500万円(3,000万円)
21〜50人1,500万円(2,500万円)4,000万円(5,000万円)4,000万円(5,000万円)
51〜100人2,500万円(3,500万円)5,500万円(7,000万円)5,500万円(7,000万円)
101人以上2,500万円(3,500万円)7,000万円(9,000万円)7,000万円(9,000万円)
補助率(中小企業者)1/2(特例2/3)
小規模等は2/3
1/2(特例2/3)2/3
実施期間交付決定日から10か月以内交付決定日から14か月以内交付決定日から14か月以内

※カッコ内は賃上げ特例の適用による補助上限額の引上げを受ける場合の金額です。革新的新製品・サービス枠は51人以上で一括して上限2,500万円(賃上げ特例3,500万円)となります。

ご検討中の取り組みがどの枠に該当するかは、以下のお問い合わせからご相談ください。

新事業進出・ものづくり補助金の申請要件 — 全枠共通の基本要件

本補助金は、3〜5年の事業計画において以下の基本要件を満たすことが必要です。特に賃上げ要件と事業場内最賃水準要件は、目標値未達の場合に補助金の返還義務が生じる重要な要件です。

  • 付加価値額要件:補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年平均成長率が4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。
  • 賃上げ要件【未達時は返還義務あり】:同期間において、一人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させること。交付申請時までに全従業員または従業員代表者に目標値を表明することが必要です。
  • 事業場内最賃水準要件【未達時は返還義務あり】:同期間において毎年、事業場内最低賃金が事業実施場所の都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準であること。
  • ワークライフバランス要件:次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、「両立支援のひろば」に公表していること(公表手続きに1〜2週間程度を要するため早めの準備が必要)。
  • 子育て等に関する職場環境整備要件:(ア)ライフデザインサービスの活用、(イ)家事代行・ベビーシッターサービスの活用、(ウ)子育て等に関する既存制度の周知・普及・啓発のいずれか1つに取り組むこと(プラチナくるみん・くるみん・トライくるみん認定取得事業者は免除)。
  • 金融機関要件:金融機関等から資金提供を受けて補助事業を実施する場合は「金融機関による確認書」を提出すること(自己資金のみの場合は不要)。

賃上げ特例・地域別最低賃金引上げ特例

賃上げ特例の適用を受けると補助上限額が引き上げられますが、追加の要件が課されます。具体的には、一人当たり給与支給総額の年平均成長率を基準値に+2.5%(合計+6.0%)以上、事業場内最低賃金を基準値に+20円(合計+50円)以上増加させることが必要です。いずれか一方でも未達の場合、引上げ分の補助金交付額の全額返還を求められます。数値要件を通常時と比較すると以下のとおりです。

要件通常賃上げ特例適用時
付加価値額の年平均成長率4.0%以上4.0%以上
一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上6.0%以上
事業場内最低賃金地域別最低賃金+30円以上地域別最低賃金+50円以上

このほか、地域別最低賃金引上げ特例(2024年10月〜2025年9月の間で、当該期間の地域別最低賃金以上〜2025年度改定の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある場合)を適用すると、補助率の引上げを受けられます。ただし小規模企業・小規模事業者、再生事業者は適用できません。

新事業進出・ものづくり補助金の補助対象者の要件

本補助金の補助対象者は、日本国内に本社および補助事業実施場所を有する中小企業者等です。業種そのものによる申請制限はなく、業種ごとに定められた資本金・常勤従業員数の基準(いずれかを満たせば該当)がポイントです。中小企業者の業種別基準は以下のとおりです。

業種資本金常勤従業員数
製造業・建設業・運輸業3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業(ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く)5,000万円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
ゴム製品製造業(一部除く)3億円以下900人以下
ソフトウェア業・情報処理サービス業3億円以下300人以下
旅館業5,000万円以下200人以下
その他の業種3億円以下300人以下

このほか、小規模企業者・小規模事業者、特定事業者の一部(資本金10億円未満かつ従業員500人以下等)、特定非営利活動法人(従業員300人以下・収益事業実施等の要件あり)、農事組合法人(同様の要件あり)、対象リース会社(中小企業等との共同申請)も対象です。一方で、組合・連合会に該当しないものや財団法人(公益・一般)、社団法人(公益・一般)、医療法人、法人格のない任意団体は補助対象外です。

小規模企業者・小規模事業者の定義は、製造業は常勤従業員20人以下、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は5人以下、宿泊業・娯楽業は20人以下、その他は20人以下です。革新的新製品・サービス枠では、小規模事業者は補助率2/3が適用されます。

補助対象外となる主な事業者

除外条件は多岐にわたりますが、特に見落としやすい主要項目は次のとおりです。

  • 申請締切日を起点に16か月以内に、事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金・新事業進出ものづくり補助金の交付候補者として採択された事業者(辞退者を除く)、または締切日時点でこれらの交付決定を受けて実施中の事業者。
  • 応募申請日を起点に過去3年間に、事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金の交付決定を合計2回以上受けた事業者。
  • 応募申請時点で従業員数が0名の事業者。
  • 新規設立・創業後1年に満たない事業者(新事業進出枠のみ)。
  • みなし大企業(発行済株式の1/2以上を同一大企業が所有等)、確定している直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者。
  • 法人格のない任意団体、収益事業を行っていない法人、政治団体、宗教法人、補助金交付等停止措置・指名停止措置中の事業者、暴力団等と関係がある事業者など。

複数の補助金に同時期に応募申請することは可能ですが、複数採択された場合は交付を受ける補助金を1つだけ選択して交付申請を行う必要があります。

補助対象経費・対象外経費

補助対象経費は、補助事業の対象として明確に区分でき、必要性と金額の妥当性を証拠書類で確認できるものに限られます。経費区分ごとに上限割合が定められている点に注意が必要です。主な経費区分は以下のとおりです。

経費区分内容・上限割合
機械装置・システム構築費革新的新製品・サービス枠は必須。新事業進出枠・グローバル枠は建物費といずれか必須
建物費新事業進出枠・グローバル枠のみ。機械装置・システム構築費といずれか必須
運搬費補助対象
技術導入費補助対象経費総額の1/3以下
知的財産権等関連経費補助対象経費総額の1/3以下
外注費補助対象経費総額の1/4以下(書面契約・選定理由の記載が必要)
専門家経費補助対象経費総額の1/5以下
クラウドサービス利用費補助対象
原材料費補助対象
広告宣伝・販売促進費事業計画期間1年当たりの補助事業における売上高見込み額の5%
海外旅費(グローバル枠のみ)補助対象経費総額の1/5以下
通訳・翻訳費(グローバル枠のみ)上限30万円(税抜き)

補助事業の事業化に必要不可欠な事業資産が含まれている必要があり、一過性の支出が補助対象経費の大半を占める計画は支援対象になりません。主な対象外経費としては、既存事業に活用・共用される経費、事務所等の家賃・敷金・水道光熱費、会社経費・一般管理費・雑費、フランチャイズ加盟料、通信費(クラウドサービス利用費の付帯経費を除く)、商品券等の金券、販売・レンタル目的の商品や試作品の購入費、消耗品代、不動産・株式購入費、税務・弁護士費用、各種手数料・公租公課、保険料、借入金利息、汎用性のあるもの(パソコン・プリンタ・タブレット・スマートフォン・カメラ・書籍・家具家電等)、車両・船舶・航空機の購入費、自社の人件費・旅費(海外旅費を除く)、再生可能エネルギー発電設備、国の他制度で既に受給対象となっている経費などがあります。

リースの利用はファイナンス・リース取引に限り可能で、リース会社との共同申請により機械装置・システムの購入費用についてリース会社を対象に補助金を交付できます(リース料そのものは対象外、「リース料軽減計算書」の提出が必要)。中古品は、3者以上の古物商許可を得た中古品流通事業者から型式・年式が記載された相見積もりを取得している場合に限り対象となります。

新事業進出・ものづくり補助金の審査の仕組み — 書面審査と口頭審査

審査は、外部有識者からなる審査委員会による書面審査を中心に行われ、一定の審査基準を満たした事業者の中から必要に応じて口頭審査が実施されます。

書面審査の主な観点

  • 補助対象事業としての適格性:基本要件の充足、事業経費・補助対象経費の必要性・合理性。
  • 経営戦略との整合性:これまでの事業活動との一貫性、外部・内部環境分析に基づく競争優位性、現状の課題認識と高付加価値化・成長につながる実効性。
  • 事業の実現可能性:高付加価値創出・賃上げ目標値の実現可能性、実施体制、顧客ターゲット・ニーズの明確性、スケジュールと課題解決方法の妥当性、財務状況・資金調達。
  • 新規事業の新市場性・高付加価値性(新事業進出枠のみ):社会における普及度・認知度の低さ、または高水準の高付加価値化・高価格化。
  • 公的補助の必要性:経済波及効果、費用対効果、デジタル技術活用・イノベーション貢献。
  • 政策面:経済社会変化への対応・構造転換、地域経済成長への牽引、産業クラスター形成への貢献。

付加価値額要件・賃上げ要件において基準値を上回る高い目標値を設定すると、その高さの度合いと実現可能性を考慮して審査で評価されます。ただし達成根拠の薄い高目標は実現可能性で減点されかねないため、実現可能性を十分に検討したうえで設定することが重要です。

加点項目

基本要件を満たしたうえで、以下の加点項目に該当すると審査で評価が上がります。加点項目は申請締切日時点で満たしている必要があります。パートナーシップ構築宣言(令和8年1月1日更新のひな形で公表)、くるみん(トライ・くるみん・プラチナのいずれか)、えるぼし(1〜3段階またはプラチナ)、健康経営優良法人2026、再生事業者、経営革新計画、事業継続力強化計画、DX認定、J-Startup/J-Startup地域版、研究開発費・試験研究費計上、地域別最低賃金引上げ、事業場内最低賃金引上げ(2025年7月と応募申請直近月の比較で63円以上の賃上げ)などが該当します。グローバル枠では新規輸出1万者支援プログラム・日本の食輸出1万者支援プログラムも加点対象です。

減点項目

一方で、賃上げ加点を受けて採択されながら加点項目要件を達成できなかった事業者、類似テーマ・設備への申請集中による過剰投資と判断された事業、過去の補助金の事業化段階が3段階以下の事業者、過去3年間にものづくり補助金または新事業進出補助金で交付決定を1回受けている事業者、基本要件(賃上げ要件・事業場内最賃水準要件)を達成できなかった事業者などは減点対象となります。

口頭審査の概要

口頭審査はオンライン(Zoom等)で実施され、所要時間は1事業者15分程度です。申請事業者自身(法人代表者等)が対応する必要があり、事業計画作成支援者や経営コンサルタント等の同席は一切認められません。カメラオン必須・音声録音あり、顔写真付き身分証明書による本人確認が行われます。口頭審査の対象になったにもかかわらず受験がなかった場合は不採択となり、内容を他者に口外することも禁止されています。代表者自身が事業計画の内容を自分の言葉で説明できるよう準備しておくことが求められます。

新事業進出・ものづくり補助金の公募スケジュール — 第1回は2026年9月30日締切

令和8年度第1回公募のスケジュールは以下のとおりです。公募開始から締切まで約3か月ありますが、GビズIDの発行に1週間程度、一般事業主行動計画の公表に1〜2週間程度を要するほか、事業計画書の作成には相応の時間がかかるため、早めの準備着手が重要です。

項目内容
公募開始2026年6月29日(月)(公募要領1.0版公開)
申請受付開始2026年8月31日(月)
申請締切2026年9月30日(水)18:00(電子申請システムでのみ受付)
採択発表2026年12月頃(予定)
事業開始交付決定後(契約・発注は必ず交付決定後)
補助事業実施期間革新的新製品・サービス枠:交付決定日から10か月以内
新事業進出枠・グローバル枠:交付決定日から14か月以内
事業化状況報告補助事業完了年度の終了後を初回として5年間で計6回

申請は中小機構の電子申請システムでのみ受け付けられ、GビズIDプライムアカウントが必須です。GビズIDプライムの発行には1週間程度を要し、法人代表者または個人事業主のみが作成できます。GビズID取得手続きの遅れによる申請期限の延長は一切認められないため、未取得の場合は最優先で着手してください。

交付申請から補助金受給までの流れ

応募から補助金受給、事業化状況報告までの全体フローは、大きく次のステップに整理できます。

  1. 事前準備:GビズIDプライムアカウントの取得、一般事業主行動計画の策定・公表、決算書や労働者名簿等の準備、設備・建物等の見積取得、加点を狙う認定・宣言の取得を進める。
  2. 事業計画書の作成:審査項目を踏まえ、経営戦略との整合性、事業の実現可能性、新市場性・高付加価値性、公的補助の必要性、政策面の観点を網羅した事業計画を、申請者自身が作成する。
  3. 電子申請:中小機構の電子申請システムにログインし、事業計画の入力と必要書類のアップロードを行い、締切(2026年9月30日18:00)までに申請を完了する。
  4. 審査・採択発表(2026年12月頃予定):書面審査、必要に応じて口頭審査を経て、採択・不採択が通知される。
  5. 交付申請・交付決定:採択後にオンライン説明会へ参加し、原則採択発表日から2か月以内に交付申請を行う。経費の精査を経て交付決定額が確定する(応募申請時の補助金申請額を上回ることはできず、減額される場合がある)。
  6. 事業実施:交付決定日以降に契約・発注を行い、補助事業実施期間内に設備導入・工事・納品・検収・支払を完了させる。交付決定前の発注は補助対象外。
  7. 実績報告・確定検査・補助金受給:事業完了後に実績報告を行い、確定検査を経て補助金額が確定し、精算払いで補助金が支払われる。
  8. 事業化状況報告(5年間で計6回):補助事業完了年度の終了後を初回として5年間にわたり、事業化等の状況を「事業化状況・知的財産権等報告書」により報告する。付加価値・賃上げ・事業場内最低賃金の各目標を達成する。

繰り返しになりますが、交付決定前に発注・契約を行った経費は全額対象外です。採択されても交付決定前に発注すると補助を受けられなくなるため、事業開始のタイミングには十分注意してください。

提出書類の全体像

提出書類は「必須書類」と「該当者のみ提出する書類」に分かれます。事業者側で準備が必要になる主な書類は次のとおりです。

  • 決算書(必須):法人は直近3期分の貸借対照表・損益計算書等、個人事業主は青色申告決算書等。
  • 従業員数を示す書類(必須):労働基準法に基づく労働者名簿の写し。
  • 収益事業を行っていることを説明する書類(必須):法人は確定申告書別表一・法人事業概況説明書の控え、個人は確定申告書第一表等。
  • 金融機関による確認書(金融機関等から資金提供を受ける場合)
  • リース料軽減計算書・リース取引に係る宣誓書(リース会社と共同申請する場合)
  • 再生事業者であることを証明する書類(再生事業者加点を希望する場合)
  • 地域別/事業場内最低賃金引上げに係る確認書類・賃金台帳(特例適用・加点を希望する場合)
  • 経営革新計画承認書の写し、研究開発費・試験研究費計上を確認する書類(各加点を希望する場合)

加点を狙う場合は対応する証明書類の準備が必要です。賃金台帳などは整理に時間がかかるため、早めに揃えておきましょう。添付書類は「ファイル名確認シート」を参照し、決められたファイル名にする必要があります。

新事業進出・ものづくり補助金でよくある不採択・トラブルのパターンと回避策

申請段階で落ちやすいパターン

パターン①: ストーリーの一貫性が弱い
採択の決め手は「設備投資→新製品・新市場・輸出体制→付加価値・賃上げの向上」というストーリーの一貫性です。設備を導入する理由、それが新製品・新市場にどうつながり、どのように売上・利益・人件費の増加に結びつくのかを論理的に説明できていないと評価されにくくなります。

パターン②: 達成根拠の薄い高い目標値
付加価値4.0%・賃上げ3.5%の基準値を上回る高い目標値の設定は評価されますが、達成根拠が示せていない高目標は実現可能性で減点されかねません。数値の算出根拠を具体的に示し、堅実かつ説得力のある計画を組み立てましょう。

パターン③: 過去の補助金利用状況の見落とし
申請締切日を起点に16か月以内の交付候補者採択や、過去3年間に2回以上の交付決定がある場合は対象外、1回でも減点対象になります。両系統(ものづくり・新事業進出)の利用歴がまとめてカウントされるため、申請前に自社の状況を必ず確認しましょう。

パターン④: 必須経費の計上漏れ
革新的新製品・サービス枠は機械装置・システム構築費が、新事業進出枠・グローバル枠は機械装置・システム構築費または建物費のいずれかが必須です。これらが含まれていない、または一過性の支出が大半を占める計画は対象外となります。

採択後の実施段階で起きやすいトラブル

  • 交付決定前の発注:交付決定日より前に契約・発注した経費は、理由にかかわらず補助対象外です。「採択された=発注できる」ではなく、「交付決定通知が届いた後に発注できる」という順番を必ず守ってください。
  • 賃上げ・付加価値目標の未達による返還:賃上げ要件・事業場内最賃水準要件は未達時に返還義務が生じます。計画段階で確実に達成可能な数値を設定し、賃金台帳等のデータを適切に管理できる体制を整えてから申請しましょう。
  • 口頭審査への準備不足:口頭審査は代表者本人が対応必須で、支援者の同席は一切不可です。事業の革新性、新市場性、賃上げ・付加価値目標の根拠などを、代表者自身が自分の言葉で説明できるよう準備しておく必要があります。
  • 事業化状況報告の負担:採択後5年間で計6回の報告義務があり、決算書・賃金台帳等の提出が求められます。報告が行われない場合や虚偽報告の場合は交付決定取消・補助金返還となり、以降の応募申請も認められません。
  • つなぎ資金の未検討:補助金は精算払いのため、設備代金の支払いから補助金入金まで時間差があり、その間は事業者が立て替えます。投資規模が大きい案件では、準備段階で金融機関と資金繰りの相談を進めておきましょう。

不採択になった場合

不採択となった事業者は、事業計画の見直しを行ったうえで再度申請することができます。再申請で採択につなげるには、設備投資から付加価値・賃上げ向上に至るストーリーの一貫性を高めること、目標値の算出根拠を具体的に補強すること、加点項目(パートナーシップ構築宣言、くるみん・えるぼし・健康経営優良法人、経営革新計画等)を取得することが有効です。なお採択結果についての理由開示や異議申立は受け付けられていません。

新事業進出・ものづくり補助金に関するよくある質問(FAQ)

新事業進出・ものづくり補助金では3つの枠のどれを選べばよいですか?

取り組みの方向性で選びます。他社にまだ普及していない革新的な新製品・新サービスを開発したい場合は革新的新製品・サービス枠、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業へ進出したい場合は新事業進出枠、輸出に向けて国内の生産・供給体制を強化したい場合はグローバル枠です。なお1回の公募につき1申請に限られます。

新事業進出・ものづくり補助金の補助率・上限額はどのくらいですか?

革新的新製品・サービス枠は中小企業者1/2(小規模等は2/3)・上限750万〜2,500万円(賃上げ特例で最大3,500万円)、新事業進出枠は中小企業者1/2・上限2,500万〜7,000万円(賃上げ特例で最大9,000万円)、グローバル枠は中小企業者2/3・上限は新事業進出枠と同じ最大9,000万円です。賃上げ特例の適用で上限額が増額されます。

新事業進出・ものづくり補助金の申請要件は何ですか?

全枠共通で、3〜5年の事業計画期間において付加価値額の年平均成長率4.0%以上、一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上などを満たすことが必要です。賃上げ要件と事業場内最賃水準要件は未達時に返還義務が生じます。このほか一般事業主行動計画の公表、子育て等に関する職場環境整備への取り組みなども必要です。

新事業進出・ものづくり補助金の設備の発注は申請前にできますか?

できません。交付決定日より前に契約・発注した経費は、理由にかかわらず補助対象外となります。採択発表後であっても、交付決定通知を受け取る前の発注は対象外です。見積の取得は申請準備段階で進めておき、交付決定後すみやかに発注できるよう準備しておくことをお勧めします。

新事業進出・ものづくり補助金は申請から補助金受給までどのくらいかかりますか?

第1回公募の場合、申請締切が2026年9月30日、採択発表が2026年12月頃の予定です。その後、交付申請・交付決定を経て補助事業を実施し(実施期間は枠により10〜14か月)、実績報告・確定検査を経て精算払いで補助金が支払われます。採択後はさらに5年間にわたり事業化状況報告の義務があります。

まとめ — 新事業進出・ものづくり補助金で押さえるべきポイント

新事業進出・ものづくり補助金は、設備投資を中心に、新製品・新サービス開発から新市場進出、海外市場開拓までを一つの制度として支援する大型の補助金です。本記事では令和8年度第1回公募の公募要領をもとに、事業枠ごとの補助率・上限額、申請要件、審査の仕組み、申請の流れ、提出書類、失敗パターンを整理しました。最後に押さえておきたい3つのポイントをまとめます。

  1. 取り組みの方向性で枠を選び、設備投資を計画の柱に:開発なら革新的新製品・サービス枠、新市場進出なら新事業進出枠、輸出体制強化ならグローバル枠。いずれも機械装置・システム構築費(または建物費)が必須で、設備投資が計画の中心となります。
  2. 付加価値4.0%・賃上げ3.5%は未達時に返還義務:全枠共通の基本要件で、達成可能で根拠ある数値計画が不可欠です。基準値を上回る高い目標は評価される一方、達成根拠が薄いと減点されるため、実現可能性を十分に検討しましょう。
  3. GビズID・必須要件の早期対応、発注は交付決定後:GビズIDプライムの取得(1週間程度)と一般事業主行動計画の公表(1〜2週間程度)は全事業者必須です。契約・発注は必ず交付決定後に行う必要があります。

令和8年度第1回公募の申請締切は2026年9月30日(水)18:00必着です。最大で補助上限9,000万円という大型の支援が受けられる一方、口頭審査も含めた本格的な審査が行われます。GビズID取得や事業計画書の作成には相応の時間がかかるため、見積取得・要件の早期対応・事業計画の作成を早めに進めることをお勧めします。認定支援機関に依頼いただける場合、事業計画のブラッシュアップや必要書類の準備、電子申請、事務局対応まで伴走支援できるため、本業と並行して無理なく申請を進められます。

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