新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業とは?概要や採択率を上げるポイントを徹底解説

COLUMN お役立ちコラム

2024.09.03

中小企業向け施策支援

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業とは?概要や採択率を上げるポイントを徹底解説

ポストコロナ時代において、中小企業は需要回復や消費者ニーズの変化などに対応する必要があります。東京都中小企業振興公社は、2024年に「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」という都内の法人や個人を対象にした助成金の公募を開始しました。 今回は「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」について、目的や審査方法、採択率を上げるポイントなどを解説します。

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業の概要

事業の目的と背景

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業は、「既存事業を深化・発展させる計画を作成した場合に各種支援を展開することで、 都内中小事業者の経営基盤を強化すること」を目的とする制度です。中小企業は、コロナ後の需要回復や消費者ニーズの変化への即応が課題となっています。さらに、エネルギー、原材料価格や人件費の高騰が長期化しており、課題が山積しているという背景があります。特に中小企業にとっては、新たな事業展開には多くのリスクが伴うため、リスクを軽減し、成功確率を高める支援は重要になります。

このような制度の目的・背景から、既存事業として行っている事業の生産性を高める設備投資や製品の付加価値を高めるための開発費用などが補助対象として想定されていると考えられます。

事業内容

ポストコロナにおける事業環境の変化に伴う課題への対応策として、事業者が創意工夫のもと「これまで営んできた事業の深化または発展」に取り組み、これが経営基盤の強化につながると認められた場合に、当該取組に必要な経費の一部が助成されます。

助成対象となる事業

助成対象となる取り組みは、既存事業の「深化」または「発展」のいずれかに該当している取り組みとなります。

既存事業の深化

既存事業の「深化」は、経営基盤の強化に向け、既に営んでいる事業自体の質を高めるための取り組みを指し、以下のような取組例が挙げられます。

  • 高性能な機器、設備の導入等による競争力強化の取組
  • 既存の商品やサービス等の品質向上の取組
  • 高効率機器、省エネ機器の導入等による生産性の向上の取組

既存事業の発展

既存事業の「深化」は、経営基盤の強化に向け、既に営んでいる事業を基に、新たな事業展開を図る取組を指し、以下のような取組例が挙げられます。

  • 新たな商品、サービスの開発
  • 商品、サービスの新たな提供方法の導入
  • その他、既存事業で得た知見等に基づく新たな取組

助成対象外とならない事業

一方で、以下に示す取組は助成対象外となりますので、注意が必要です。

  • 申請者が営んできた事業内容との関連性が薄い、又は全く無い取組
  • 法令改正への対応など、義務的な取組
  • 単なる老朽設備の維持更新など、競争力や生産性の向上に寄与しない取組

スケジュール

本助成事業のスケジュールは、申請の提出から助成金の交付まで3か月程度で完了します。具体的には以下の図のように設定されており、これに従って手続きを進めていきます。スケジュールを十分に把握し、計画的に行動することが必要になります。「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」は現在第6回までの申請受付が終了しました。第12回まで予定されており、次回の申請受付開始は第7回の令和6年10月1日です。

募集予定

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業の助成対象と助成率・助成限度額

助成対象者の要件

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業の助成対象者は「都内の中小企業であること」「直近決算の売上が2019年の決算期以降のいずれかの決算期と比較して減少していること」「令和6年度において、本事業で1度も交付決定を受けていないこと」などが挙げられます。

  • 都内の中小企業で、大企業が実質的に経営に参画してないこと
    中小企業者に該当する法人は以下の通りです。
業種 資本金及び従業員
製造業、情報通信業、建築業、運輸業、その他 3億円以下又は300以下
卸売業 1億円以下又は100以下
サービス業 5,000万円以下又は100以下
小売業 5,000万円以下又は50以下
飲食業 5,000万円以下又は50以下

また、大企業とは上記に該当する中小企業以外の者で事業を営む者で、「中小企業投資育成株式会社」と「投資事業有限責任組合」は除きます。

  • 本店(実施場所が都内の場合は支店でも可)の法人登記が都内にあること、または納税地が都内にあること。
  • 直近決算期の売上高が、「2019 年の決算期以降のいずれかの決算期」と比較して減少している、又は直近決算期において損失を計上していること。
  • 令和6年度において、本事業で1度も交付決定を受けていないこと。

上記の主な要件の他にも満たすべき要件が定められています。
▼詳細な内容は以下の公式ページを参照ください。
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/jigyo/kankyo-sokuo/index.html

助成対象期間

助成対象期間は、交付決定日から1年間となっており、この期間内に契約・実施・支払が完了する経費である必要があります。助成対象期間

「交付決定を受ける前に発注・契約等をした場合」「発注の遅れ等により、納品日が助成対象期間を超えた場合」「クレジットカードで支払ったが、銀行口座からの引き落とし日が助成対象期間を超えた場合」などは助成対象外となりますので、注意してください。

助成対象経費の範囲

助成対象経費は、既存事業を深化・発展させるために直接必要な経費のうち、公社が実施する審査で認められた経費となります。直接必要な経費には以下の経費区分が該当します。

  • 原材料・副資材費
  • 機械装置・工具器具費
  • 委託・外注費
  • 産業財産権出願・導入費
  • 規格等認証・登録費
  • 設備等導入費
  • システム等導入費
  • 専門家指導費
  • 不動産賃借料
  • 販売促進費(上限200万円)
  • その他経費 (上限100万円)

原則として上記の助成対象経費に記載のない経費は助成対象外です。助成対象とならない例も多くありますので、対象かどうかは必ず申請前に確認しましょう。

助成率・助成限度額

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業における助成率は、助成対象経費の2/3以内となっており、上限額は800万円です。
例えば助成事業に必要な経費が900万円であった場合、2/3にあたる600万円が助成対象となり、300万円は自己負担となります。
また、助成金申請額の計算方法は以下に示す通り、経費項目毎に3分の2を乗じて計算します(千円未満切り捨て)。助成金申請額の計算のしかた

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業の申請方法と注意点

申請方法

申請については、国(デジタル庁)が提供する電子申請システム「Jグランツ」による申請のみとなっています。Jグランツを利用するには「GビズID」でアカウントを取得する必要があります。
▼GビズIDの作成はこちら
https://gbiz-id.go.jp/top/
▼Jグランツ公式サイトはこちら
https://www.jgrants-portal.go.jp/
▼具体的な申請方法は公式サイトにて記載がありますので、下記より参照してください。
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/jigyo/kankyo-sokuo/udaenk000000cool-att/denshi_manual_0601.pdf

申請に必要な書類

申請に必要な書類は、「申請書類」「誓約書」をはじめ多くの種類があります。それらすべてを申請受付期間中に提出する必要があり、各書類の入手先についても公式HPや都税事務所、法務局など多岐に渡ります。また、対象申請者が法人か個人かによって必要となる書類も変わってきます。申請に向け必要な書類を把握する必要があります。
以下に示す表は全事業者共通における申請必要書類です。

必要書類 入手先 対象申請者
(法人)
対象申請者
(個人)
申請書類 公式HP
誓約書 公式HP
履歴事項全部証明書 法務局  
開業届 各自  
法人事業税納税証明書 都税事務所  
個人事業税納税証明書 都税事務所  
所得税納税証明書 所管税務署  
(非課税)
法人都民税納税証明書 都税事務所  
住民税納税証明書 市区町村役所  
住民税非課税証明書 市区町村役所  
(非課税)
決算書(損益計算書) 各自  
所得税確定申告 各自  

さらに申請内容に応じて追加で提出が求められるものもあり、十分な確認が必要です。
▼詳細については公式HPを参照してください。
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/jigyo/kankyo-sokuo/index.html

申請の際の注意点

申請書類は「申請要件を満たしているか」「提出書類に不備・不足等はないか」「申請された経費が助成対象となるか」の視点で確認がされています。
申請書類に不備や不足がある場合や、申請要件を満たしていない場合などは、申請が受理されないため、十分注意してください。

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業の審査方法

申請の審査には、「書類審査」「面接審査」があります。書類審査の結果、一定の水準に達していると認められる場合、面接審査が実施されます。

審査の視点

申請の審査は、専門家が「発展性」「市場性」「実現性」「優位性」「自己分析力」の視点で行います。

視点 内容
発展性 既存事業の深化・発展に資する取組か
市場性 ポストコロナ等における事業環境の変化前後の市場分析は十分か
実現性 取り組むための体制は整っているか
優位性 事業者としての創意工夫、今後の展望はあるか
自己分析力 自社の状況を適切に理解しているか

審査の視点を十分に把握した上で、申請書類の作成や面接審査の対策をすることが重要であると言えます。

書類審査

面接審査の実施対象になった事業者には、面接日程・実施場所等の詳細が通知されますが、日程の変更はできません。そのため、募集要項3ページに記載されている面接審査期間はいつでも対応できるように、スケジュールを調整する必要があります。

面接審査

申請書の内容に基づき、専門家による面接審査が行われます。申請書以外の補足資料やサンプル品等の使用は必要最低限の範囲で認められています。
面接は原則対面で実施され、面接への出席は事業者の代表者、役員・従業員に限り、最大2名までとなっています。
面接審査の結果、一定の水準に達していると認められる場合、交付決定となります。

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業の採択率を上げるポイント

申請タイミングを戦略的に行う

申請受付は、申請件数が各月の予定数に達し次第、申請受付期間満了を前に募集を締め切ることがあります。実際にこれまでの回でも期間満了前に締め切られいるケースがあります。また、多くの事業者がこの支援制度を利用しようとする中で、申請受付期間が予告なく変更されることもありました。このような状況に対応するためには、早めに準備を開始し、適切なタイミングで申請を行うことが求められます。

対象取組への理解を深める

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業では、既存事業の深化・発展が助成対象となります。したがって、申請する事業はどのように既存事業を基盤としているのか、それをどのように深化・発展させるのかを十分に理解しておくことが重要です。また、面接審査が実施されるため、事業内容を口頭で分かりやすく説明必要があります。審査員に対して、事業の魅力や意義をしっかりと伝えるために、深い理解と準備が欠かせません。

専門家や認定支援機関へ依頼する

採択率を高めるためには、制度に詳しい専門家や認定支援機関への依頼も効果的な手段です。専門家は制度の要件や申請方法を熟知しており、適切なアドバイスやサポートを提供してくれます。これにより、申請プロセスが円滑になり、採択される可能性が高まります。また、専門家に依頼することで、事業者は申請準備にかかる時間や労力を削減でき、本業に集中することが可能となります。専門家や認定支援機関のサポートを適切に活用することで、効果的かつ効率的に助成金の獲得を目指すことができます。

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 まとめ

この記事では新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業について、まとめて解説させていただきました。

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業は、2024年から開始された中小企業向けの助成金制度で、都内中小事業者の経営基盤を強化することを目的とした制度です。このような制度を事業者が適切に活用することで、事業環境の変化による課題を解消することに繋がります。中小事業者が制度を効果的に活用するためには、制度の目的や内容を十分に理解することが重要になります。

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業の申請支援ならプランベース

株式会社プランベースは、認定支援機関として、中小企業向けの補助金の伴走支援を専門にしており、これまでに700件以上の採択事例がございます。

 新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業の申請を検討しているけど、申請方法や事業計画書の作成方法が分からないという方はお気軽にご相談ください。

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https://planbase.co.jp/contact/

この記事の執筆者

村上 貴弘

村上 貴弘

東京大学経済学部卒。
中小企業診断士、行政書士。
2019年株式会社プランベース創業。
2021年meditips行政書士事務所開業。
製造業、建設業、運輸業、ソフトウェア業など幅広い業種の補助金申請支援実績が豊富。特に事業再構築補助金やものづくり補助金、成長投資補助金といった大規模な補助金の申請に強みを持つ。