「省力化投資補助金(一般型)」は、中小企業が業務の効率化や生産性向上を目的とする設備投資を支援する国の補助金制度です。2025年1月に第1回公募が開始され、これまでに第2回公募までが終了しています。
次回、第3回公募は現状開始前ですが、HPでは6月中旬頃に公募開始とアナウンスされており、近日中に公募が開始される見込みです。
▼最新情報は公式サイトをご確認ください
https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/
省力化投資補助金の一般型では、省力化につながるようなIoT技術やロボット、自動化装置、ITツールなどの導入費用の一部が補助され、企業の成長を支援します。単なるカタログ品ではなく、オーダーメイド性がある設備投資であることが求められる点に注意が必要です。詳細な補助金の条件は後述します。
特に、人手不足の解消や労働生産性の向上を目的とする設備投資が支援対象となります。
省力化投資補助金の目的
省力化投資補助金(一般型)は、人手不足に悩む中小企業などが、IoTやロボットなどのデジタル技術を活用した省力化設備を導入する際に、その費用の一部を国が補助する制度です。売上拡大や生産性向上を後押しし、最終的には賃上げにつなげることを目的としています。
従来の「カタログ型」(あらかじめ登録された汎用製品を簡易に導入できる方式)とは異なり、新設された「一般型」では、各社の現場や事業内容に合わせた多様な省力化投資(業務プロセスの自動化・高度化、ロボット工程の改善、DX推進など)を支援する枠組みとなっています。単なるカタログ品の購入は補助対象にはならない可能性が高くなっている点に注意が必要です。
この背景には、中小企業の深刻な人手不足問題があり、労働生産性を高めながら人手不足を補い、賃金引上げを実現する狙いがあります。 本補助金(一般型)は2025年から新たに開始された制度で、前年まで「ものづくり補助金」において実施されていた「省力化(オーダーメイド)枠」を発展・独立させたものです。
省力化投資補助金の補助対象者
「中小企業省力化投資補助金(一般型)」の対象となるのは、「中小企業基本法」等で定められた中小企業・小規模事業者のほか、一部の中堅企業(特定事業者)、NPO法人、社会福祉法人など 幅広い事業者が対象となります。
対象事業者 | 資本金または従業員数の基準 |
---|---|
中小企業・小規模事業者 | 製造業・建設業・運輸業:資本金3億円以下または従業員300人以下 卸売業:資本金1億円以下または従業員100人以下 小売業・サービス業:資本金5,000万円以下または従業員50人以下 |
中堅企業(特定事業者) | 資本金10億円未満の法人(従業員数500人以下) |
特定非営利活動法人(NPO法人) | 従業員300人以下で、法人税法上の収益事業を行うNPO法人 |
社会福祉法人 | 従業員300人以下で、収益事業の範囲内で補助事業を実施する法人 |
商工会・商工会議所 | 地域の商工業の振興を目的とする法人 |
続いて、省力化投資補助金 一般型の補助金としてのスペックについてご説明させていただきます。
省力化投資補助金(一般型)の補助金額は最大8,000万円、補助率は1/2~2/3です。補助上限は従業員数及び大幅な賃金の引き上げをするかどうかで変わります。他の補助金と比較しても最大金額、補助率ともに優れており、2025年狙い目の補助金の一つであるといえます。
省力化投資補助金〈一般型〉の補助上限
従業員毎の補助上限は下記の通りです。
従業員数 | 補助上限額 | 特例適用時(大幅賃上げ達成時) |
---|---|---|
5人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
6~20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
21~50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
51~100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
※上記「特例適用時」とは、後述する大幅賃上げ達成時の特例による上限引き上げ後の金額です。
✅特例適用条件
・給与支給総額の年平均+6%以上の増加
・最低賃金が地域最低賃金+50円以上
※特例条件を満たせなかった場合、上乗せ分との差額について補助金の返還義務が生じます。
省力化投資補助金〈一般型〉の補助率
補助率(補助金が経費に対して占める割合)は、以下のとおりです。
事業者区分 | 補助金額1,500万円以下の部分 | 補助金額1,500万円を超える部分 |
---|---|---|
中小企業 | 1/2 | 1/3 |
小規模企業者・再生事業者 | 2/3 | 1/3 |
最低賃金引上げ特例として、一定期間に全従業員の30%以上が「地域最低賃金+50円以内」の水準となる場合、中小企業(小規模事業者を除く)も補助率が2/3に引き上げられます。
省力化投資補助金〈一般型〉の補助対象経費
省力化投資補助金 一般型の補助対象経費は、以下のとおりです。下記は補助対象経費として申請可能な経費の区分であり、機械装置・システムであれば何でも採択されるというわけではなく、あくまで省力化投資補助金の目的に合ったオーダーメイド性のある投資であることが大前提としてある点に注意が必要です。
経費区分 | 内容 | 上限額 |
---|---|---|
機械装置・システム構築費 | ① 機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費 ② 専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費 ③ 改良又は据付けに要する経費 ※ 必ず1つ以上、単価50万円(税抜)以上の設備投資が必須 |
制限なし |
運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料等に要する経費 | 制限なし |
技術導入費 | 知的財産権等の導入に要する経費 | 補助対象経費総額(税抜)の1/3以内 |
知的財産権等関連経費 | 特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用等 | 補助対象経費総額(税抜)の1/3以内 |
外注費 | 新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費 | 補助対象経費総額(税抜)の1/2以内 |
専門家経費 | 本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費 | 補助対象経費総額(税抜)の1/2以内 |
クラウドサービス利用費 | クラウドサービスの利用に関する経費 | 制限なし |
また、対象経費は、交付決定日以降に発注し、補助事業の実施期間内に支払いが完了したものに限られます。そのため、交付決定前に発注した経費は補助対象外となるため、十分に注意してください。
省力化投資補助金の申請は電子申請ですが、申請に当たっては従業員名簿など、必要な書類が多数存在します。下記に、2025年最新の情報をもとに、法人・個人事業主向けの必要書類をまとめます。
申請時に不備があると審査に影響を及ぼす可能性があるため、必ず事前にご確認ください。
全事業者共通
書類名 | 詳細 | 形式 |
---|---|---|
事業計画書 | 指定様式に記入。補助事業の具体的取り組み内容の他、省力化をいかにして実現するかなどを記載します。 | |
従業員名簿(中小企業判定用) | 指定様式に記入 | Excel |
賃借対照表 | 直近2期分(前期・前々期) | |
損益計算書 | 直近2期分(前期・前々期) | |
金融機関による確認書 | 本事業に係る資金について金融機関からの調達を予定している場合、金融機関による事業計画の確認を受け、その確認書を提出する必要があります |
法人の場合に必要な書類
書類名 | 詳細 | 形式 |
---|---|---|
履歴事項全部証明書 | 発行から3カ月以内のもの | |
法人税の納税証明書(その2) | 直近3期分 | |
役員名簿 | 指定様式に記入 | Excel |
株主・出資者名簿 | 指定様式に記入 | Excel |
個人事業主の場合に必要な書類
書類名 | 詳細 | 形式 |
---|---|---|
確定申告書の控え 第一表 | 直近1期分 | |
所得税の納税証明書(その2) | 直近1期分 |
他の補助金と比較すると、申請に当たって必要な資料は多くありませんが、金融機関の確認書などは取得に時間がかかる場合もあるため、事前に必要な書類を把握しておくことをおすすめします。最新情報は随時公式サイトをご確認ください。
省力化投資補助金の対象となる事業
補助対象となる事業(投資内容)にも限定はなく、人手作業の省力化や自動化に資する設備投資全般が該当します。
省力化投資補助金には「カタログ型」と「一般型」が存在し、「一般型」ではオーダーメイドの設備・システム導入、自社の業務プロセスに合わせて設計された専用機械や装置の導入、IoTを活用した生産ラインの改善、事務作業のデジタル化・DX推進による業務効率化などが対象になります。
補助対象となる投資の具体例
すでに採択結果が発表されている第1回公募の結果から、省力化投資補助金で採択された具体的な対象業種と導入可能な設備例を示します。特に製造業は幅広い取り組みが採択されている状況です。
業種 | 補助対象となる省力化投資の例 |
---|---|
製造業 | 検査ラインの自動化設備 金属製品の加工を行う企業が完成品の検査工程を自動化するシステム(コンベヤ、カメラ、ロボットアーム、AIソフトからなるシステム)を新たに導入することで、従来3人体制で行っていた検査工程を完全自動化する取り組み |
製造業 | ラベリング・梱包工程の完全自動化設備 酒類の製造を行っていた企業が、酒のボトリング、ラベリング、検品、段ボール詰めなど従来すべて人手で行っていた作業を完全自動化するラインを構築することで、従来7名程度で行っていた出荷前工程を完全自動化する取り組み |
製造業 | 三次元測定機による検査工程の省力化 金属製品の加工を行い、三次元測定機による全数検査を行っていた企業が三次元測定機とストッカー、ロボットアームを導入することで、従来オペレーターが一つ一つのワークを手作業で設置していたところ、夜間に自動で検査ができる体制を構築する取り組み |
建設業 | ドローンによる測量機器 従来トータルステーション等を活用して行っていた大規模な測量を自社の環境に合わせたドローンやシステムに代替することで工程の大幅な省人化を図った取り組み |
運輸・物流業 | 自動仕分けシステム、無人搬送車(AGV)、自動倉庫 従来人手で行っていた仕分けや入出庫作業をシステムとAGV、自動倉庫を組み合わせることで自動化を図り、倉庫内業務の大幅な省人化を目指す取り組み |
小売業・飲食業 | セルフレジ、セルフオーダー端末、在庫管理の自動化システム |
医療・福祉 | 介護ロボット、オンライン診療システム、電子カルテ導入 |
採択された取り組みの特徴として、単に既製品を1つ導入するようなシンプルな取り組みではなく、既製品であっても自社向けに一部カスタマイズされていたり、既製品を複数組み合わせつつ自社向けにティーチング/カスタマイズされたロボットを導入することで既製品間のものの流れについても自動化するなど工夫された案件が多くなっていました。
補助を受けるための主な条件
省力化投資補助金 一般型の補助を受けるためには、補助事業実施後に以下の目標を達成する計画を策定し、申請する必要があります。
1.労働生産性の年平均成長率+4.0%以上増加
2.1人あたり給与支給総額の年平均成長率が事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、又は給与支給総額の年平均成長率+2.0%以上増加
3.事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準
4.次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等(従業員21名以上の場合のみ)
※最低賃金引上げ特例適用事業者の場合、 基本要件は①、②、④のみとする。
申請が採択された場合、事業期間内(3~5年)にこれらを達成することが求められます。
※万が一、②の賃金引上げ目標を達成できなかった場合、未達成の度合いに応じて補助金の一部を返還する必要があります。
※③の最低賃金目標を達成できなかった場合は、「補助金額 ÷ 計画年数」に相当する額を返還しなければなりません。
※ただし、天災や業績悪化(赤字、付加価値額の増加なし)など、やむを得ない事情がある場合は、返還が免除されることもあります。
このように、省力化投資補助金 一般型は採択されて補助金をもらって終わりではなく、補助金の対象となる設備を導入することで無駄な作業をなくして労働生産性を改善し、その成果を原資とする賃金の引き上げなどにコミットすることが求められる補助金であるといえます。