省力化投資補助金 一般型とは?

COLUMN お役立ちコラム

2025.06.25

省力化投資補助金

【2025年6月更新】省力化投資補助金 一般型とは?概要・対象・申請方法を徹底解説

中小企業の生産性向上と人手不足解消を支援する「省力化投資補助金(一般型)」が、2025年よりスタートしました。この補助金は、業務の省力化や自動化を目的とした設備投資を支援し、IoTやロボット、デジタル技術の導入を後押しします。 特に、人手不足に悩む企業にとっては、業務効率の向上や賃上げにつなげる貴重なチャンスとなります。本記事では、省力化投資補助金(一般型)の概要、補助対象、申請条件、補助率、スケジュールについて詳しく解説します。 申請を検討している方は、早めに準備を進め、スムーズな申請手続きができるようにしましょう。

省力化投資補助金 一般型とは?基本情報を解説

「省力化投資補助金(一般型)」は、中小企業が業務の効率化や生産性向上を目的とする設備投資を支援する国の補助金制度です。2025年1月に第1回公募が開始され、これまでに第2回公募までが終了しています。

次回、第3回公募は現状開始前ですが、HPでは6月中旬頃に公募開始とアナウンスされており、近日中に公募が開始される見込みです。
▼最新情報は公式サイトをご確認ください
https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/

省力化投資補助金の一般型では、省力化につながるようなIoT技術やロボット、自動化装置、ITツールなどの導入費用の一部が補助され、企業の成長を支援します。単なるカタログ品ではなく、オーダーメイド性がある設備投資であることが求められる点に注意が必要です。詳細な補助金の条件は後述します。

特に、人手不足の解消や労働生産性の向上を目的とする設備投資が支援対象となります。

省力化投資補助金の目的

省力化投資補助金(一般型)は、人手不足に悩む中小企業などが、IoTやロボットなどのデジタル技術を活用した省力化設備を導入する際に、その費用の一部を国が補助する制度です。売上拡大や生産性向上を後押しし、最終的には賃上げにつなげることを目的としています。

従来の「カタログ型」(あらかじめ登録された汎用製品を簡易に導入できる方式)とは異なり、新設された「一般型」では、各社の現場や事業内容に合わせた多様な省力化投資(業務プロセスの自動化・高度化、ロボット工程の改善、DX推進など)を支援する枠組みとなっています。単なるカタログ品の購入は補助対象にはならない可能性が高くなっている点に注意が必要です。

この背景には、中小企業の深刻な人手不足問題があり、労働生産性を高めながら人手不足を補い、賃金引上げを実現する狙いがあります。 本補助金(一般型)は2025年から新たに開始された制度で、前年まで「ものづくり補助金」において実施されていた「省力化(オーダーメイド)枠」を発展・独立させたものです。

省力化投資補助金の補助対象者

「中小企業省力化投資補助金(一般型)」の対象となるのは、「中小企業基本法」等で定められた中小企業・小規模事業者のほか、一部の中堅企業(特定事業者)、NPO法人、社会福祉法人など 幅広い事業者が対象となります。

対象事業者 資本金または従業員数の基準
中小企業・小規模事業者 製造業・建設業・運輸業:資本金3億円以下または従業員300人以下
卸売業:資本金1億円以下または従業員100人以下
小売業・サービス業:資本金5,000万円以下または従業員50人以下
中堅企業(特定事業者) 資本金10億円未満の法人(従業員数500人以下)
特定非営利活動法人(NPO法人) 従業員300人以下で、法人税法上の収益事業を行うNPO法人
社会福祉法人 従業員300人以下で、収益事業の範囲内で補助事業を実施する法人
商工会・商工会議所 地域の商工業の振興を目的とする法人

 

続いて、省力化投資補助金 一般型の補助金としてのスペックについてご説明させていただきます。

省力化投資補助金(一般型)の補助金額は最大8,000万円、補助率は1/2~2/3です。補助上限は従業員数及び大幅な賃金の引き上げをするかどうかで変わります。他の補助金と比較しても最大金額、補助率ともに優れており、2025年狙い目の補助金の一つであるといえます。

省力化投資補助金〈一般型〉の補助上限

従業員毎の補助上限は下記の通りです。

従業員数 補助上限額 特例適用時(大幅賃上げ達成時)
5人以下 750万円 1,000万円
6~20人 1,500万円 2,000万円
21~50人 3,000万円 4,000万円
51~100人 5,000万円 6,500万円
101人以上 8,000万円 1億円

※上記「特例適用時」とは、後述する大幅賃上げ達成時の特例による上限引き上げ後の金額です。
✅特例適用条件
・給与支給総額の年平均+6%以上の増加
・最低賃金が地域最低賃金+50円以上

※特例条件を満たせなかった場合、上乗せ分との差額について補助金の返還義務が生じます。

省力化投資補助金〈一般型〉の補助率

補助率(補助金が経費に対して占める割合)は、以下のとおりです。

事業者区分 補助金額1,500万円以下の部分 補助金額1,500万円を超える部分
中小企業 1/2 1/3
小規模企業者・再生事業者 2/3 1/3

最低賃金引上げ特例として、一定期間に全従業員の30%以上が「地域最低賃金+50円以内」の水準となる場合、中小企業(小規模事業者を除く)も補助率が2/3に引き上げられます。

省力化投資補助金〈一般型〉の補助対象経費

省力化投資補助金 一般型の補助対象経費は、以下のとおりです。下記は補助対象経費として申請可能な経費の区分であり、機械装置・システムであれば何でも採択されるというわけではなく、あくまで省力化投資補助金の目的に合ったオーダーメイド性のある投資であることが大前提としてある点に注意が必要です。

経費区分 内容 上限額
機械装置・システム構築費 ① 機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費
② 専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費
③ 改良又は据付けに要する経費
※ 必ず1つ以上、単価50万円(税抜)以上の設備投資が必須
制限なし
運搬費 運搬料、宅配・郵送料等に要する経費 制限なし
技術導入費 知的財産権等の導入に要する経費 補助対象経費総額(税抜)の1/3以内
知的財産権等関連経費 特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用等 補助対象経費総額(税抜)の1/3以内
外注費 新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費 補助対象経費総額(税抜)の1/2以内
専門家経費 本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費 補助対象経費総額(税抜)の1/2以内
クラウドサービス利用費 クラウドサービスの利用に関する経費 制限なし

また、対象経費は、交付決定日以降に発注し、補助事業の実施期間内に支払いが完了したものに限られます。そのため、交付決定前に発注した経費は補助対象外となるため、十分に注意してください。

省力化投資補助金の申請は電子申請ですが、申請に当たっては従業員名簿など、必要な書類が多数存在します。下記に、2025年最新の情報をもとに、法人・個人事業主向けの必要書類をまとめます。
申請時に不備があると審査に影響を及ぼす可能性があるため、必ず事前にご確認ください。

全事業者共通

書類名 詳細 形式
事業計画書 指定様式に記入。補助事業の具体的取り組み内容の他、省力化をいかにして実現するかなどを記載します。 PDF
従業員名簿(中小企業判定用) 指定様式に記入 Excel
賃借対照表 直近2期分(前期・前々期) PDF
損益計算書 直近2期分(前期・前々期) PDF
金融機関による確認書 本事業に係る資金について金融機関からの調達を予定している場合、金融機関による事業計画の確認を受け、その確認書を提出する必要があります PDF

法人の場合に必要な書類

書類名 詳細 形式
履歴事項全部証明書 発行から3カ月以内のもの PDF
法人税の納税証明書(その2) 直近3期分 PDF
役員名簿 指定様式に記入 Excel
株主・出資者名簿 指定様式に記入 Excel

個人事業主の場合に必要な書類

書類名 詳細 形式
確定申告書の控え 第一表 直近1期分 PDF
所得税の納税証明書(その2) 直近1期分 PDF

他の補助金と比較すると、申請に当たって必要な資料は多くありませんが、金融機関の確認書などは取得に時間がかかる場合もあるため、事前に必要な書類を把握しておくことをおすすめします。最新情報は随時公式サイトをご確認ください。

省力化投資補助金の対象となる事業

補助対象となる事業(投資内容)にも限定はなく、人手作業の省力化や自動化に資する設備投資全般が該当します。

省力化投資補助金には「カタログ型」と「一般型」が存在し、「一般型」ではオーダーメイドの設備・システム導入、自社の業務プロセスに合わせて設計された専用機械や装置の導入、IoTを活用した生産ラインの改善、事務作業のデジタル化・DX推進による業務効率化などが対象になります。

補助対象となる投資の具体例

すでに採択結果が発表されている第1回公募の結果から、省力化投資補助金で採択された具体的な対象業種と導入可能な設備例を示します。特に製造業は幅広い取り組みが採択されている状況です。

業種 補助対象となる省力化投資の例
製造業 検査ラインの自動化設備
金属製品の加工を行う企業が完成品の検査工程を自動化するシステム(コンベヤ、カメラ、ロボットアーム、AIソフトからなるシステム)を新たに導入することで、従来3人体制で行っていた検査工程を完全自動化する取り組み
製造業 ラベリング・梱包工程の完全自動化設備
酒類の製造を行っていた企業が、酒のボトリング、ラベリング、検品、段ボール詰めなど従来すべて人手で行っていた作業を完全自動化するラインを構築することで、従来7名程度で行っていた出荷前工程を完全自動化する取り組み
製造業 三次元測定機による検査工程の省力化
金属製品の加工を行い、三次元測定機による全数検査を行っていた企業が三次元測定機とストッカー、ロボットアームを導入することで、従来オペレーターが一つ一つのワークを手作業で設置していたところ、夜間に自動で検査ができる体制を構築する取り組み
建設業 ドローンによる測量機器
従来トータルステーション等を活用して行っていた大規模な測量を自社の環境に合わせたドローンやシステムに代替することで工程の大幅な省人化を図った取り組み
運輸・物流業 自動仕分けシステム、無人搬送車(AGV)、自動倉庫
従来人手で行っていた仕分けや入出庫作業をシステムとAGV、自動倉庫を組み合わせることで自動化を図り、倉庫内業務の大幅な省人化を目指す取り組み
小売業・飲食業 セルフレジ、セルフオーダー端末、在庫管理の自動化システム
医療・福祉 介護ロボット、オンライン診療システム、電子カルテ導入

採択された取り組みの特徴として、単に既製品を1つ導入するようなシンプルな取り組みではなく、既製品であっても自社向けに一部カスタマイズされていたり、既製品を複数組み合わせつつ自社向けにティーチング/カスタマイズされたロボットを導入することで既製品間のものの流れについても自動化するなど工夫された案件が多くなっていました。

補助を受けるための主な条件

省力化投資補助金 一般型の補助を受けるためには、補助事業実施後に以下の目標を達成する計画を策定し、申請する必要があります。

1.労働生産性の年平均成長率+4.0%以上増加
2.1人あたり給与支給総額の年平均成長率が事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、又は給与支給総額の年平均成長率+2.0%以上増加
3.事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準
4.次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等(従業員21名以上の場合のみ)
※最低賃金引上げ特例適用事業者の場合、 基本要件は①、②、④のみとする。

申請が採択された場合、事業期間内(3~5年)にこれらを達成することが求められます。

※万が一、②の賃金引上げ目標を達成できなかった場合、未達成の度合いに応じて補助金の一部を返還する必要があります。
※③の最低賃金目標を達成できなかった場合は、「補助金額 ÷ 計画年数」に相当する額を返還しなければなりません。
※ただし、天災や業績悪化(赤字、付加価値額の増加なし)など、やむを得ない事情がある場合は、返還が免除されることもあります。

このように、省力化投資補助金 一般型は採択されて補助金をもらって終わりではなく、補助金の対象となる設備を導入することで無駄な作業をなくして労働生産性を改善し、その成果を原資とする賃金の引き上げなどにコミットすることが求められる補助金であるといえます。

省力化投資補助金〈一般型〉で採択されるための3つのポイント

ここからは、省力化投資補助金〈一般型〉で採択されるための重要ポイントを解説させていただきます。

ポイント①:省力化のストーリーと効果を明確に示す

省力化投資補助金〈一般型〉の採択を目指す上で、最も重要なポイントは「省力化のストーリーと効果を明確に示す」ことです。

具体的には、「現状のボトルネック工程の明確化」「ボトルネックによる定量的な悪影響の明示」「導入する設備によるボトルネック解消効果」「ボトルネックの解消による定量的な労働生産性の改善」について、それぞれわかりやすく記載する必要があります。

例えば、金属部品を製造する企業が新たにガントリーローダーとマシニングセンタを組み合わせて自動の量産部品加工ラインを導入する場合のストーリーは下記のようになります。

1.現状のボトルネック工程の明確化(例):現状、マシニングセンタへのワーク着脱工程がボトルネックになっています。マシニングセンタでの加工にかかる時間は対象ワーク1つにつき15分程度、着脱の時間は3分程度であり、着脱それ自体はそれほど時間がかかるわけではありませんが、加工が終了するまでの間にオペレーターが他の作業に従事しているため、マシニングセンタの加工終了タイミングに合わせて即座にワークの着脱を行うことが難しく、平均して1台あたり15分の加工時間に対して約5分のロス(待ち時間)が発生しています。この「加工終了待ちによるロス」が、現場全体の稼働率と生産能力を著しく低下させているボトルネックとなっています。

2.ボトルネックによる定量的な悪影響の明示(例):1日の稼働時間を8時間と仮定した場合、マシニングセンタ1台あたりで加工可能なワーク数は最大32個(480分 ÷ 15分)となります。しかし、実際には5分のロスが加わることで20分サイクルとなり、1台あたりの加工数は24個にとどまり、生産能力は約25%低下しています。さらに、作業者はこの着脱作業のために常に加工終了のタイミングを監視する必要があり、他作業の効率も悪化しています。

3.導入する設備によるボトルネック解消効果(例):今回導入する「ガントリーローダー」は、マシニングセンタと連動し、加工終了後に自動でワークを排出・新規ワークを装填する機能を持ちます。これにより、着脱作業を無人化するだけでなく、加工終了と同時に次工程へ即時移行できるようになります。オペレーターの監視・対応が不要になるため、加工時間=サイクルタイムという理想的な稼働が実現できます。

4.ボトルネックの解消による定量的な労働生産性の改善(例):前述の通り、ロス時間がなくなることで1台あたりの加工ワーク数が24個→32個(約33%増)になり、生産能力が大きく向上します。加えて、着脱作業に割かれていた作業者の時間(1サイクル3分×24回=72分/日)が削減され、これを他の付加価値業務に再配分することで全体の労働生産性は大幅に改善されます。1人あたりの付加価値額(=生産高/労働時間)も向上することから、「人手不足対応」と「賃上げ原資の創出」の双方に寄与する導入効果といえます。

このように、具体的でわかりやすく、かつ、定量的に効果が明らかなストーリーを示すことで、審査員から見ても効果が期待できる納得感のある取り組みとして採択につながります。

ポイント②:オーダーメイド性・カスタマイズ性を強調する

省力化投資補助金〈一般型〉の採択を目指す上で次に重要なのが、導入予定設備の「オーダーメイド性・カスタマイズ性を強調する」というポイントです。

大前提として、省力化投資補助金には「カタログ型」と「一般型」が存在しており、いわゆる汎用的なカタログ品については「カタログ型」、それ以外のオーダーメイド性があるものについては「一般型」といった棲み分けがされています。
そのため、単なるカタログ品を一般型で出すことは想定されておらず、一般型の補助対象設備にはオーダーメイド性が求められます。採択されるための事業計画を作成するためには、このオーダーメイド性・カスタマイズ性の強調が必須になります。

例えば、型番がつくような設備(工作機械など)であっても、多くの場合で自社に合わせた特注仕様(テーブルサイズやチャックの仕様など)を採用するかと思います。また、カタログ品であっても複数のカタログ品を組み合わせたり、別途開発するプログラムでコントロールしたりといった工夫を行うことで、実質的には「自社専用の設備」として機能するケースが多々あります。こうした要素をどのように事業計画書で表現するかが、採択の明暗を分ける重要なポイントです。

■「カスタマイズ性」のアピール方法の例

以下に、省力化投資補助金〈一般型〉の計画書において、オーダーメイド性・カスタマイズ性を効果的に記載するための工夫をいくつか紹介します。

仕様変更や特注構成を具体的に記載する

  • 「テーブルサイズを既製品の〇〇mmから〇〇mmに延長して対応」

  • 「同時加工数を増やすため、ツールマガジンの仕様を拡張」

  • 「自社の製造ラインに合わせて、搬送方向を左右逆仕様に変更」

などのように、具体的な変更点とその背景(なぜその変更が必要だったか)をセットで説明することが重要です。

複数の設備構成を1つのラインとして提案する

  • たとえば「自動倉庫」「ロボットアーム」「加工機」「測定器」などを連携させて、省人化ラインを構築するケースでは、それぞれはカタログ品であってもラインとしての設計・制御はオーダーメイドになることが多いため、「ライン構成図」や「信号連携図」などを添付しながら説明すると効果的です。

独自開発ソフトや制御プログラムの導入

  • 「歩留まり管理のために開発した画像認識AIを搭載」

  • 「作業履歴を自動記録する独自のMES連携仕様を構築」

といった、IT・ソフトウェア面でのカスタマイズも補助対象の“独自性”として評価されるポイントです。

■「カタログ品をそのまま使っていない」ことの説明が重要

繰り返しになりますが、一般型での採択を目指す場合は、「この設備は他社でも買えるカタログ品です」という印象を与えてしまうと非常に不利です。そのため、「当社ではこう使うために、こういうカスタマイズが必要だった」という背景説明と、「そのカスタマイズによって省力化効果が最大化された」という因果関係の提示が欠かせません。

この部分が曖昧で、「なんとなく便利そうだから導入する」という印象を与える事業計画は、評価者から「補助金でわざわざ支援する必要性が乏しい」と判断されるリスクがあります。

ポイント③:審査項目や加点項目をしっかりと抑える

最後に、どの補助金でも重要なポイントですが、公募要領等で記載されている審査項目や加点項目をしっかりと押さえることは補助金に採択されるためには必須の対応となります。

■ 審査項目の詳細と事業計画書に盛り込むべき要素

省力化投資補助金〈一般型〉の審査では、大きく分けて「①補助対象事業としての適格性」「②技術面(省力化効果の妥当性と裏付け)」「③計画面(実行可能性と賃上げとの連動)」「④政策面(地域貢献・イノベーション等)」の4つの観点から事業計画が評価されます。それぞれの観点において、計画書のどこにどのような内容を盛り込むべきかを意識することが重要です。


① 補助対象事業としての適格性

まずは、「制度上の対象になっているか」が大前提です。公募要領に記載されている下記の要件を明確に満たしていることを記載する必要があります。

  • 対象事業者(中小企業・小規模事業者など)

  • 対象事業(省力化を伴う設備投資であること)

  • 対象経費(設備費、人件費、外注費など)

  • 補助率・補助上限に適合しているか

特に「公募要領 1-1-1 一般型の目的」に沿った事業であること、すなわち“人手不足への対応”“労働生産性の向上”に直結する投資であることを強調することが求められます。


② 技術面(省力化効果の妥当性と裏付け)

この観点では、設備の導入によってどれほど人手が減らせるのか/効率化されるのかを定量的に示す必要があります。

  • 省力化指数:設備導入によって何%の作業時間が削減されるのかを明示し、その計算根拠(工程分析やタイムスタディの結果など)を添えることが重要です。

  • 投資回収期間:実現するコスト削減や売上増加効果を用いて、回収期間が合理的な範囲であること(できれば3〜5年以内)を説明する必要があります。

  • 付加価値額の成長
    年平均で何%の付加価値向上が見込まれるかを示し、過去の実績や見込みデータを活用して説得力のある将来シナリオを描くことがポイントです。

  • オーダーメイド設備の導入
    既に前章で触れた通りですが、再度ここでも、「一般型」であることを正当化するために個社対応の仕様変更や複合設備の統合などを技術面として訴求すべきです。


③ 計画面(実行可能性と賃上げとの連動)

ここでは、事業計画が本当に実現可能な体制・資金調達状況であるか、さらに計画の成果が企業全体に波及するかが審査されます。

  • 体制・実行力の明示
    誰がどのように設備を管理・運用し、どのように進捗をモニタリングするかなど、人的体制や社内リソースを具体的に示すことが求められます。

  • 資金調達の見通し
    自己資金、借入金、リース等を含めた事業費の内訳と資金の出どころを明確に記載する必要があります。

  • 賃上げとの整合性
    省力化によって削減した人手を高付加価値業務へ再配置し、利益を創出 → 賃金向上へつなげるストーリーを構築することが重要です。これがないと「単なるコストカット」と判断され、評価を落とす可能性があります。


④ 政策面(地域貢献・イノベーション性)

この観点は、国の政策的意義や地域への波及効果が問われます。中小企業であっても、以下のような要素があれば強力なアピールポイントになります。

  • 地域経済の牽引力(特に地方部・被災地等)

  • デジタル技術・カーボンニュートラル技術の活用

  • 経営資源の有効活用(事業承継、新規チャレンジ等)

事業の社会的意義を、「地域における唯一無二性」や「将来的な雇用創出効果」などで裏付けて記載すると高評価につながります。


■ 加点項目も取りこぼさず活用する

加点項目は採択率に直結する重要要素です。該当する項目がある場合は、その取得・登録証明を添付し、明確に計画書中で言及しましょう。特に重要な加点は以下の通りです。

加点項目 内容
事業承継・M&A 代表交代・株式譲渡などによる事業承継が過去3年以内に行われた場合
災害等加点 事業継続力強化計画の認定を受けている場合
成長加速マッチング 登録済かつ「挑戦課題」を登録済であること(応募時点)
賃上げ加点(重要) 平均賃金年4%以上アップ、最低賃金+40円など、誓約書提出が必須
えるぼし・くるみん 働き方・育児支援の認定を受けていること

特に「賃上げ加点」は最大の加点効果が見込まれるため、達成可能性があるなら積極的に取得・誓約すべきです。ただし、未達時のペナルティ(返還・減点)もあるため、無理のない水準での設定が前提となります。

省力化投資補助金のスケジュール

省力化投資補助金(一般枠)のスケジュールの一般的なスケジュールとすでに完了している公募回のスケジュールについて解説します。

省力化投資補助金の一般的なスケジュール

項目 時期
公募開始 前回公募締切から1ヶ月以内程度
申請受付開始 公募開始から2ヶ月以内程度
申請受付締切 申請受付開始から2~4週間程度
採択結果の通知 提出から2~3ヶ月程度
事業実施期間 交付決定日から最長18カ月以内(採択発表日から20カ月以内)
実績報告 事業完了から1か月程度以内
補助金の入金 実績報告が認められてから1か月以内

上記の一般的なスケジュールは第1,2,3回公募のスケジュールを元に作成しています。詳細なスケジュールは下記の公式サイトをご確認ください。

▼省力化投資補助金スケジュール
https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/schedule/

省力化投資補助金〈一般型〉第3回公募のスケジュール

記事執筆時点で予定されている次回の締切である第3回公募の現時点で公表されているスケジュールは下記の通りです。

公募回 公募開始日 申請受付開始日 公募締切日 採択結果発表日
第3回 2025年6月中旬 2025年8月上旬 2025年8月下旬 2025年11月下旬

公募開始は当初2025年6月中旬とされていましたが、2025/06/26時点でまだ公募が開始しておらず、遅延が生じているようです。近日中により詳細なスケジュールが公表されるかと思います。

この記事の執筆者

村上 貴弘

村上 貴弘

東京大学経済学部卒。
中小企業診断士、行政書士。
2019年株式会社プランベース創業。
2021年meditips行政書士事務所開業。
製造業、建設業、運輸業、ソフトウェア業など幅広い業種の補助金申請支援実績が豊富。特に事業再構築補助金やものづくり補助金、成長投資補助金といった大規模な補助金の申請に強みを持つ。