中小企業省力化投資補助金 カタログ登録について徹底解説

COLUMN お役立ちコラム

2024.10.02

省力化投資補助金

【メーカー・販売店様向け】中小企業省力化投資補助金 カタログ登録について徹底解説

2024年から始まった「中小企業省力化投資補助金」は、人手不足に悩む中小企業等に対して、省力化製品の導入を支援する制度です。 省力化製品を製造する製造事業者等がカタログに自社の製品を登録し、中小企業等はそのカタログの中から製品から選択して導入する形式となっています。 この記事では、製品を製造する製造事業者向けに、カタログ登録の手順や必要書類、登録するメリットなどを詳細に解説していきます。

中小企業省力化投資補助金とは?

中小企業省力化投資補助金とは、2024年から新たに始まった中小企業向けの補助金です。
本事業では、あらかじめカタログに掲載されたIoTやロボットなどの人手不足の解消に効果的な汎用製品を企業が選択して導入する仕組みで、選択した製品における購入価格の1/2が補助されます。

この記事では、省力化製品の製造事業者向けに、製品をカタログに登録する流れや必要書類、登録するメリットなどを分かりやすく解説していきます。

省力化投資補助金の目的

省力化投資補助金は、「中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするため、省力化製品の導入を補助し、中小企業等の付加価値額や生産性向上を図るとともに、賃上げにつなげること」を目的とする制度です。

2023年9月に日本商工会議所が行った「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」では、68%の中小企業が「人手不足」と回答しました。本事業では、IoTやロボット等の製品が補助金対象とされおり、人手不足に対応できる製品導入が支援されます。
そのため、製造事業者にはカタログに省力化製品を掲載していくことが求められています。

省力化投資補助金のカタログ内容

カタログは順次製品が掲載されていく予定で、下記のURLから確認することができます。

▼省力化投資補助金「製品カタログ」はこちらから
https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/product_catalog.pdf

現状、カタログには券売機やスチームコンベクションオーブン、自動倉庫、無人搬送車などいくつかのカテゴリーが設定されており、今後新たなカテゴリーや具体的な製品が追加されていく予定です。

省力化投資補助金の補助金額・補助上限

省力化投資補助金における補助率は1/2であり、上限額は1,500万円です。ただし、中小企業における会社規模の賃上げに応じて変化し、具体的な会社規模(従業員数)と補助上限は下記の表の通りとなっています。

従業員数

補助率

補助上限額
(大幅な賃上げを行う場合)

5人以下

1/2

200万円
(300万円)

6~20人

1/2

500万円
(750万円)

21人以上

1/2

1,000万円
(1,500万円)

 

中小企業省力化投資補助金におけるカタログ登録の流れと内容

省力化製品・製造事業者登録の流れ

省力化製品および製造事業者の登録手順を解説します。公式の登録要領では以下のようなスキーム図が示されています。
カタログ登録の流れ
以下の表で、担当者を明確にしながら時系列順に整理しました。製造事業者が担当となっている箇所に注意しながら、カタログ登録の大まかな流れを確認しましょう。

番号 担当 内容
製造事業者 省力化製品を扱うメーカー等は製品カテゴリごとに指定された工業会への審査の申請を行う
②③ 工業会 工業会は省力化基準に照らして製品審査を行い、審査結果を取りまとめて事務局に提出する
④⑤ 事務局 事務局は申請された製品について確認を行い、外部有識者委員会に意見招請を行って上で、中小企業庁に報告を行う
⑥⑦⑧⑨ 事務局
中小企業庁
中小企業庁は業所管省庁等と協議を行い、製品及び製造事業者とし承認し、事務局を通じて工業会に通知するとともに、製造事業者登録の通知をメーカーに行う
工業会 工業会は認められた省力化製品について証明書を発行する
製造事業者 カタログ登録を希望する製造事業者は、事務局へ省力化製品のカタログ登録の申請を行う
⑫⑬ 事務局 事務局は申請書類確認後、製造事業者にカタログ登録の通知を行う
事務局 登録された製品をカタログに掲載する

上記の表より、製造事業者は①と⑪の手続きを行う必要があることが分かります。項目数で見れば少ないように感じますが、他の担当者とのやり取りや手続きを行うタイミングなど、簡単ではない手続きとなっているため、全体的な登録手順を把握する必要があります

省力化製品の登録内容

省力化製品に関しては、以下の内容がカタログに登録されます。

  • 製品の名称
  • 製品の属する製品カテゴリ
  • 金額、販売形式
  • 製品の概要説明
  • 製品の明細
  • 製品の対象業種
  • 使用が想定される中小企業等の規模や状況等
  • 業務領域
  • 省力化効果
  • 省力化指標の算出結果
  • 製品の効果的な稼働に当たって提供される保守サポート等
  • 製品の製造事業者の名称及び連絡先
  • 製品に関する紹介等がなされたホームページ等のリンク

実際に登録内容を記載していく中で、「製品の対象業種」の項目で、製品が使用されると想定される業種を設定し、それ以降の項目についても設定した内容をもとに記載していきます。

登録内容の記載に当たっては、中小企業等が製品を購入したくなるような内容にすることが求められます。
具体的には、「導入前後における業務プロセスの変化を定量的に示すこと」「高い省力化効果を示す」「活用事例を分かりやすくイメージの湧きやすいようにする」などが挙げられます。

中小企業省力化投資補助金におけるカタログ登録の要件

省力化投資補助金のカタログ登録には、「省力化製品の要件」「製造事業者登録の要件」を満たす必要があります。
以下、それぞれについて解説していきます。

省力化製品の要件

省力化製品の要件は、「概要事項」「製品性能及び価格に関する事項」「供給体制に関する事項」「サポート体制に関する事項」があり、それぞれについて詳細に定められています。
ここでは各事項について簡単にまとめますが、申請に当たっては公式の登録要領を確認してください。

▼省力化製品の登録要領はこちら
https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/product_manufacturer_guidelines.pdf

概要事項

  • 事前に登録された製品カテゴリに属することが分かること。
  • 省力化による業務効率化や生産性向上に寄与すること。
  •  申請単位について、原則型番ごとに製品登録を行っていること。
  • 単体で稼働しない又は省力化効果を発揮しない製品でないこと。
  • 販売が開始されており、製造・販売された実績を3社以上有していること。

この項目では、省力化製品に関する概要的な要件が定められています。
上記以外にも多くありますので、登録要領を参照し、要件を満たしているかを確認しましょう。

製品性能及び価格に関する事項

  • 省力化指標に従って省力化の効果を算出し、その効果が設定されている基準値 を上回ること。
  • 省力化による人件費削減効果を勘案し、費用対効果が優れていると判断できること。
  • 製品本体の価格は50万円以上であること。
  • 販売する価格に合理性があり、市場価格を逸脱していないこと。

製品性能や省力化効果については重要な項目であると言えます。
本事業は中小企業の人手不足解消に貢献することが求められているため、効果をしっかりと示すことが必要です。
また、価格についても合理性が必要です。本補助金の補助上限金額に比べて著しく高額でないことを確認しましょう。

供給体制に関する事項

  • 発注から12ヶ月以内に納品・検品・支払いを完了して 本補助金の実績報告を行える程度の、供給・生産体制が整備されていること。
  • 調達及び供給の現状把握や安定供給の体制構築等に向けた取り組みが行われていること。

この項目は、本事業を適切に実施するために、サプライチェーンの信頼性や持続可能性確保を目指すための要件です。
十分な供給体制が整っている例として、量産体制が確保されていること在庫が一定数確保されていることが挙げられます。

サポート体制に関する事項

  • 補助事業者が導入した省力化製品において、運用障害等が発生しないようメンテナンス及び管理を徹底すること。
  • 上記の保守・サポート体制を有していることを証明する資料を提供すること。

導入した事業者の生産性向上や省力化に貢献するよう、製品が最大限の効果を発揮する必要がありますそのための環境や体制等の構築が重要となります。

製造事業者登録の要件

製造事業者登録の要件は、「基本的事項」「経営基盤に関する事項」「供給・サポート体制に関する事項」「事業実施時等の対応に関する事項」があり、それぞれについて詳細に定められています。

先ほど同様、ここでは各事項について簡単にまとめますが、申請に当たっては公式の登録要領を確認してください。

▼省力化製品の登録要領はこちら
https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/product_manufacturer_guidelines.pdf

基本的事項

  • 日本国内で法人登記され、日本国内で事業を営む法人であること。
  • 経済産業省又は中小機構から補助金等停止措置又は指名停止措置を受けていないこと。

この項目では、製造事業者に関する基本的な要件が定められています。
上記以外にも多くありますので、登録要領を参照し、要件を満たしているかを確認しましょう。

経営基盤に関する事項

  • 製品の生産を継続して行えると判断するに足る十分な経営基盤を有していること。 

カタログ掲載期間中は、省力化製品の継続的な生産が行える経営基盤を有している必要があります。

供給・サポート体制に関する事項

  • 登録した省力化製品のそれぞれについて、供給・サポートが行える体制を確保すること。

製品の受注状況により、このような体制を満たすことができないと判断された場合、体制が回復するまでカタログ掲載が一時的に取りやめになります。
省力化製品においても同様の要件が定められていたように、導入した事業者に対して供給・サポート体制を整えることはとても重要な要件であると言えます。

事業実施時等の対応に関する事項

  • 公募要領等に記載の内容を遵守することができること。
  • 工業会等及び事務局に提出した情報は、事務局から国及び中小機構に報告するとともに、事務局、国及び中小機構が利用することに同意すること。

この項目では、事業を実施する際に関する要件が定められています。
上記以外にも多くありますので、登録要領を参照し、要件を満たしているかを確認しましょう。

販売事業者登録の確認を行う際の要件

製造事業者は、自身が製造する省力化製品を直販するだけではなく、販売代理店等を介して販売することもできます。その販売代理店等に対して販売事業者登録を行わせる際にも、満たすべき要件があります。以下に主な要件を示します。

  • 販売代理店等が省力化製品に類するサービスを提供・販売した実績を持つことを確認すること。
  • 販売代理店等が、全ての要件を満たしていることを確認すること。

販売代理店を介して省力化製品の販売を行う場合、その販売代理店に対していくつか確認を行う必要があります。また、両者間で同意することや共同で取り決めを行うことなどもありますので、登録要領を確認し、販売形態を決定することも重要です。

中小企業省力化投資補助金におけるカタログ登録に必要な提出書類

省力化投資補助金のカタログ登録申請に必要な提出書類は主に「製造事業者の書類」「製品に関連する書類」があります。下記の表において、それぞれ①~④と⑤~⑦に対応しています。

番号 書類名 詳細
履歴事項全部証明書 発行から3カ月以内のもの
税務署の発行する法人税の直近の納税証明書 1期の決算を迎えた上で提出すること
決算書(損益計算書及び貸借対照表) 直近1年分の資料を提出すること
保守・サポートが分かる資料 納入先として想定される地域にサポート体制があることが分かる資料を提出すること
当該商品の詳細が分かる資料 申請する業務領域が確認できるもの、商品の仕様が分かるもの等
省力化機能根拠資料 省力化指標の数値の根拠となる資料
当該製品の納品実績を示す書類 販売店等への納品実績が分かる書類

また、追加が提出が求められる場合がある書類もありますので、注意深く確認することが必要です。
具体的な詳細や提出形式、確認事項などは登録申請の手引きを参照してください。

▼省力化製品・製造事業者登録申請の手引きはこちらhttps://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/product_manufacturer_manual.pdf

中小企業省力化投資補助金における省力化製品審査の着眼点

製造事業者から提出された省力化製品の申請内容は、工業会等による審査を経て事務局に提出されるとともに、事務局及び外部審査委員での意見招聘を経て、中小企業庁に承認されます。その後、工業会から証明書が発行され、カタログ登録を行うことができます。
これらの審査は、主に以下のような着目点で行われています。

  • 事前に登録された製品カテゴリに属することが分かること。
  • 保有する機能が、利用が想定される中小企業等における対象業種の業務領域に合致すること。また、当該業務領域において、省力化による業務効率化や生産性向上に寄与すること。
  • 省力化指標にしたがって省力化の効果を算出し、その効果が設定されている基準値を上回ること。
  • 省力化による人件費削減効果を勘案して、費用対効果が優れていると判断できるもの。
  • 申請された価格が妥当であること。
  • 登録単位や形式が本登録要領を満たしており妥当であること。 
  • 本登録要領において対象外としている省力化製品に該当しないこと。
  • 省力化製品が複数の汎用製品や導入経費、保守・サポート等と混合されていないこと
  • 恒常的に使用される製品であること。

上記の着眼点項目を見ると、その多くが「カタログ登録の要件」と一致していることが分かります。
よって、カタログ登録の要件を十分に把握し、正確に満たすことで審査は通りやすくなると言えます。

中小企業省力化投資補助金のカタログに自社製品を登録するメリット

省力化投資補助金のカタログに自社の製品を登録するメリットとして、「売上向上」「知名度向上」「信頼性向上」が挙げられます。
それぞれの詳細について、以下で紹介していきます。

売上の向上

カタログに登録する最大のメリットとして、売上の向上に貢献することが挙げられます。中小企業等が補助金制度を利用することで省力化製品を導入しやすくなるため、メーカーの売上増加が期待されます。
カタログ登録された製品は補助金対象となり、導入する事業者にとっては購入価格が大幅に抑えられます。製品導入で競合他社と比較した際に、補助金額の分だけ価格優位性を持つことができるため、事業者から選択されやすくなります

製品やメーカーの知名度向上

カタログに省力化製品が掲載されることで、多くの中小企業や業界関係者に自社製品が広く知られるようになります。さらに、省力化投資補助金のホームページには製品情報だけでなく、製造事業者名や企業ホームページのリンクが公開されるため、製品だけでなくメーカー自体の知名度向上も期待できます
事業者はこのカタログから製品を選択するため、カタログが強力な広告となると言えます。

信頼性の向上

政府が認定するカタログに登録されることで、製品が信頼できるものとして認識され、事業者からの信頼性が高まります。製品を製造する上で、製品の信頼性を確保することは極めて重要です。
カタログ登録の審査には、省力化に貢献する製品としての評価が含まれているため、カタログに登録されることは省力化製品としてのブランド力の向上にもつながります。

中小企業省力化投資補助金におけるカタログ登録 まとめ

この記事では省力化投資補助金のカタログ登録について、まとめて解説させていただきました。

自社の省力化製品がカタログに掲載されれば、売上や知名度、信頼性の向上が期待できます。また、中小企業にとって大きな課題である人手不足や人件費の高騰に対応する体制を整えることに貢献することができます

申請にあたっては、登録要件や審査の着眼点を十分に把握し、本事業の目的に合った省力化製品であるかを吟味する必要があります。

総じて、省力化投資補助金は、中小企業等と製造事業者の両者において重要な制度と言えます。
自社の省力化製品をカタログ登録することで、売上拡大に繋げるとともに、中小企業の人手不足問題の解決を目指すことができます。

この記事の執筆者

村上 貴弘

村上 貴弘

東京大学経済学部卒。
中小企業診断士、行政書士。
2019年株式会社プランベース創業。
2021年meditips行政書士事務所開業。
製造業、建設業、運輸業、ソフトウェア業など幅広い業種の補助金申請支援実績が豊富。特に事業再構築補助金やものづくり補助金、成長投資補助金といった大規模な補助金の申請に強みを持つ。