大規模成長投資補助金の採択率は?

COLUMN お役立ちコラム

2024.09.03

大規模成長投資補助金

大規模成長投資補助金の採択率は?採択されやすい事業などを解説

最大50億円の補助金が得られる大規模成長投資補助金の採択率について、業種や取組内容などを中小企業診断士が分析し、採択されるために必要な事を解説します。

大規模成長投資補助金の採択率は?

大規模成長投資補助金第1回公募の採択率は14.8%採択倍率は約6.8倍になりました。

他の経済産業省の補助金と比較しても、採択率が低く、採択難易度が非常に高かったことがうかがえます。

▼当社の大規模成長投資補助金のサービス紹介ページはこちら
https://planbase.co.jp/lp/daikiboseicho/

大規模成長投資補助金の採択率

2024年6月21日に大規模成長投資補助金第1回公募の採択結果が発表され、採択率14.8%、採択倍率6.8倍という結果が発表されました。

第1回公募の有効申請件数は736件、1次審査(書面審査)を通過し、2次審査(プレゼンテーション審査)に進んだ企業は254件であり、最終的に採択された企業は109件となっています。

また、現時点(2024年9月3日)で第2回公募の1次審査(書面審査)の結果が発表されており、有効申請件数が605件であったことが判明しています。(1次審査の通過件数は不明)

公募回 有効申請数 一次審査通過件数 二次審査通過件数 採択率
第1回公募
(2024年4月締切)
736件 254件 109件 14.8%
第2回公募
(2024年8月締切)
605件 不明 不明 不明

当社でも複数件の大規模成長投資補助金の申請を行っており、同業他社様とも状況などの意見交換を行っておりますが、第2回公募は第1回公募と比較して、一次審査の採択率が低くなったのではないかという声を多く聞きました。
特に第1回公募で二次審査に進んだ方が、数値計画を見直しだ際に再申請で不採択になったケースが多く、最初の申請で二次審査に進む事と比較して、再チャレンジで二次審査に進む事のハードルが高いのではないかと考えております。

第2回公募の採択結果は2024年9月末頃に発表予定であり、採択結果が出次第本記事の採択率情報も更新させていただきます。

大規模成長投資補助金の採択率が低い理由

大規模成長投資補助金の採択率が低い理由としては「補助金額が大きく、厳格な審査が行われた」「想定以上の申請が集中し、予算が枯渇した」「補助金制度の目的とずれた申請が目立った」ことなどが考えられるかと思います。
それぞれの理由について、ご説明いたします。

補助金額が大きく、厳格な審査が行われた

大規模成長投資補助金は、最大で50億円の補助金が支給される補助金であり、今まで経済産業省が中小・中堅向けに行ってきた「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」と比較しても飛び抜けて補助金額が大きい補助事業となっていました。

金額が大きい分、その補助金が有効に使われるかどうかの審査も厳しくなることが想定されますが、従来の補助金感覚で甘い投資計画・収支計画を作成してしまった場合、書類審査で不採択となったのではないかと考えられます。

また、補助金額が多く、投資の下限が10億円であったことで、申請した企業の売上に対して過大な投資金額となる投資計画が多く申請されたことが考えられます。

当社のこれまでの補助金申請支援実績からも自社売上高を大きく超えるような補助事業計画や純資産に対して過大といえる借入が必須となる事業計画で採択率が低くなる傾向を確認しており、大規模成長投資ではこのような過大投資といえる事業計画が集中したのではないかと考えられます。

想定以上の申請が集中し、予算が枯渇した

大規模成長投資補助金の採択率が低くなった理由として、想定以上の申請が集中し、補助金の予算が枯渇したことが考えられます。実際に、日経新聞の記事には大規模成長投資補助金の応募が想定を上回ったとの報道があり、予算が足りなかったため、採択を絞ったことが想定されます。

製造業を中心に賃上げや設備投資に積極的な中堅・中小企業の動きは出ている。たとえば最低賃金の伸び率を上回る賃上げの計画を立てた企業に大規模な設備投資を支援する補助金を巡っては、応募が想定を上回った。
中堅・中小向けに3年間で3000億円を用意していた枠に、4月末の1次応募で計8400億円分730件ほどの申請があった。投資予定額は2.7兆円に上る。47都道府県すべてで投資案件の申請があった。6月後半に採択企業を発表する予定だ。

日経新聞『首相、建設・物流などで省力化補助指示へ 3年5000億円』――https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA245XF0U4A520C2000000/

補助金制度の目的とずれた申請が目立った

また、大規模成長投資補助金の採択率が低くなった理由として、補助金制度の目的とずれた申請が目立った事も挙げられるかと思います。具体的には企業の成長に直接影響しないような取組(本社の美観を高める事を目的とした内装工事、社員が使用するための食堂などの施設、本社ビルの建て替え工事)がこれに当たると考えられます。

大規模成長投資補助金の特徴として、補助金額が非常に大きいことに加え、建物費(新築も含む)も補助対象になったことが重要です。ものづくり補助金などはそもそも建物費を補助対象としておらず、再構築補助金では、建物費は対象となるものの、新築は新築であることが必要な理由書の提出が求められ、原則内装工事が補助対象となっています。このような建物費が補助対象になる補助金では前述のような、成長投資といえるのか疑問が残る投資計画が作成されることも多く、これらは補助対象外として不採択になったことが考えられます。

大規模成長投資補助金で採択されやすい業種・計画

ここまで、大規模成長投資補助金の採択率についてご説明いたしましたが、大規模成長投資補助金の採択結果をより細かく確認すると、採択率は業種毎に大きく異なったのではないかと考えられます。

ここからは、大規模成長投資補助金の採択結果の分析結果を解説します。

大規模成長投資補助金の採択結果の分析

大規模成長投資補助金で採択された企業のリストはHP上に公開されており、企業ごとに企業名、事業実施場所、投資計画名が記載されています。この記事では公開されている情報から示唆される内容を解説します。

▼大規模成長投資補助金 採択企業一覧
https://seichotoushi-hojo.jp/assets/pdf/list.pdf

大規模成長投資補助金では工場の建設計画の採択がほとんど

大規模成長投資補助金で採択された計画の特徴として、「工場の建設」や「生産拠点の強化」など工場を新たに取得することで、生産能力、生産効率を高め、企業の成長を目指す事業計画の採択例が目立ったことが挙げられます。

採択企業リストから確認できるのは事業計画名のみであり、具体的な投資内容は不明ですが、事業計画のほとんどが製造業を営む企業が工場を新たに取得する計画であることがうかがえます。

逆に、それ以外の大規模な投資はほとんど確認できず、倉庫・関連が10件程度あるのみで、宿泊業や鉱業、情報通信業、金融業などは確認できませんでした。

個人的には、宿泊業や中規模のエンターテイメント施設などは、申請の仕方によっては採択も見込めるのではないかと考えていたため、ほぼ全てが製造業の工場新規取得の取組になった第1回公募の採択結果は意外な結果となりました。

製造業であれば幅広い取組が採択されている

大規模成長投資補助金の採択結果の特徴として、製造業であれば、幅広い業種の取組が採択されていることも挙げられます。

今までの補助金でも製造業は優遇される傾向にあり、ものづくり補助金や再構築補助金では採択率、申請件数共に高くなることが多くなっていましたが、採択される事業者が小~中規模の金属加工業に集中する場合が多く、補助金を使用して購入される設備も工作機械、プレス機などが非常に多くなっている印象でした。

大規模成長投資補助金の採択結果に目を向けると、金属加工を行う事業者に加え、食品製造業や半導体の回路製造、医薬品など今まで補助金での採択が目立たなかった取組でも採択されていることが確認できます。

事業実施場所の都道府県は愛知が首位

大規模成長投資補助金の事業実施場所となる都道府県では愛知県が12件と最大の採択件数となりました。(複数の事業実施場所で採択されているケースは全ての事業実施場所都道府県で1カウントしました)

製造業に強い愛知県、大阪府、福岡県が1~3位となっており、上位の都道府県は予想通りの結果になりました。

秋田県、山形県、和歌山県、鳥取県、島根県、長崎県、鹿児島県、沖縄県は採択件数が0件となりました。

事業実施都道府県 採択件数
愛知県 12
大阪府 10
福岡県 10
東京都 9
埼玉県 7
茨城県 7
香川県 6
静岡県 6
京都府 5
滋賀県 5
宮城県 5
兵庫県 5
千葉県 5
長野県 4
群馬県 4
岡山県 4
神奈川県 4
栃木県 3
福井県 3
奈良県 3
新潟県 3
熊本県 3
三重県 3
岐阜県 3
北海道 3
広島県 2
岩手県 2
富山県 2
大分県 2
宮崎県 2
石川県 1
愛媛県 1
山口県 1
青森県 1
高知県 1
佐賀県 1
福島県 1
山梨県 1
徳島県 1

大規模成長投資補助金で採択されるために確認すべきこと

これまでの分析に加え、大規模成長投資補助金の公表資料から、大規模成長投資補助金に採択される上で重要になる数値計画なども伺えます。ここでは大規模成長投資補助金に採択されるために従業になることを解説します。

大規模成長投資補助金に採択されるために確認すべきこと

大規模成長投資補助金に採択される上で確認すべきこととして「取り組む事業の業種・内容」「取得する資産」「数値計画目標」が挙げられます。

取り組む事業の業種・内容

大規模成長投資補助金に採択されるために確認すべき最重要事項は「取り組む事業の業種・内容」であるといえます。

大規模成長投資補助金の公募要領上は特に申請不可とする取組は明記されていませんが、実態としては「何らかの製品を自社で製造・加工する事業者」または「物流事業に取り組む物流業者/自社製品の管理を効率化する卸売業者」以外の採択ハードルは極めて高いことが想定されます。

また、取組内容について、他の補助金と比較して、既存製品の増産の計画であっても採択が見込まれることも特徴としてあげられます。大規模成長投資補助金では補助事業が単体どれくらいの収益を上げるのかも審査対象となっているため、売上の増加が見込みにくいニッチな新製品の計画よりは、現状キャパシティが原因で売上が頭打ちになっている製品を大幅に増産し、一気に売上を上げるような計画のほうが採択されやすいのではないかと考えられます。

取得する資産

大規模成長投資補助金に採択されるために確認すべき事項として「取得する資産の選定が適切か」も挙げられます。

大規模成長投資補助金の補助対象経費は「建物費」「機械装置費」「ソフトウェア費」「外注費」「専門家経費」に分けられますが、採択された計画の大部分が経費の多くが建物費が占め、機械装置費、ソフトウェア費が次ぎ、外注費、専門家経費は割合としてはほとんど計上されなかったのではないかと考えられます。

特に、外注費、専門家経費は合計で建物費、機械装置費、ソフトウェア費の合計未満となることが条件となっているため、外注費や専門家経費が半分近くを占める計画は低い評価がなされたと考えられます。

また、新たに取得する建物や機械装置、システムについても注意が必要といえます。

本補助金の目的が「企業の成長」と「賃上げ」であることから、今までの工場を縮小したり、今までと生産効率が変わらない機械装置の場合は企業が成長したり、労働生産性の改善による利益を原資とした賃上げが不可能なことから採択が見込めない事業になってしまっているといえると思われます。

補助金の採択を考える上では、工場の新設による工場レイアウトや物流の最適化、ロボットやAGVの導入による労働生産性の改善などの取組を行う為の投資をすべきといえます。

数値計画・目標

大規模成長投資補助金の採択に当たって、別紙で提出する数値計画も極めて重要といえます。

大規模成長投資補助金のHPには第1回公募における採択者・申請者全体の重要数値が公表されており、採択事業者と申請者全体でどのような数値面の差があったのかが明らかになっています。

項目 採択者中央値 申請者全体中央値
全社年平均売上⾼成⻑率 10%/年  7%/年
全社売上⾼増加額 +55.0億円  +19.5億円
全社売上⾼に対する補助事業売上⾼の割合 73% 53%
補助事業年平均売上⾼成⻑率 13%/年 8%/年
補助事業売上⾼増加額 +41.1億円  +14.1億円
補助事業年平均労働⽣産性の伸び 15%/年 12%/年
補助事業付加価値増加額 +14.2億円 +5.1億円
年平均従業員⽬標賃上げ率 4.3%/年 3.5%/年
従業員給与⽀給総額の増加額 +2.3億円  +0.9億円
年平均役員⽬標賃上げ率 4.0%/年 3.4%/年
役員給与⽀給総額の増加額 +0.05億円 +0.03億円
全社売上⾼に対する投資額割合 36% 50%
補助⾦額に対する補助事業付加価値増加額割合 126% 61%
ローカルベンチマークの得点 23点 22点

大規模成長投資補助金の事務局が公開している資料に記載された数値は上記の14個であり、採択者と申請者全体の数値の違いから、多くの示唆が得られます。

数値の増加「割合」に大きな差は無い一方で、増加「額」には大きな差がある

採択者と申請者全体の数値を比較した際の特徴として、「売上高成長率」や「補助事業売上高の割合」「労働生産性の成長率」「賃上げ率」には大きな差が無い一方で、「売上高増加額」や「付加価値増加額」「給与支給総額の増加額」などの金額には数倍の差があることが分かります。

ここから、大規模成長投資補助金では現時点で既に一定規模の売上、一定規模の給与支給総額を有する企業でなければ採択が難しいことが読み取れます。

「全社売上高に対する投資額割合」という指標に着目すると、採択者の数値が36%に対して、申請者全体の数値が50%となっており、ここからも、既に一定の売上規模がある企業が、現実的な範囲で大規模な投資を行った場合に高く評価されているであろうことが読み取れます。

賃上げ率には体感として大きな差があったと考えられる

前項では率に大きな差は無いと記載しましたが、賃上げ率に関しては採択者中央値4.3%に対して申請者中央値3.5%となっており、インフレ率や最低賃金の伸び率との差分を考慮すると0.8%とはいえ、体感として比較的大きな差があるといえます。補助金の目的を考えても賃上げ率は重要度の高い指標であるといえます。

数値計画のまとめ

上記のような指標が公開されていることから、大規模成長投資補助金の採択を狙う上では、数値計画において十分に高い成長目標を立てる必要があり、率だけでなく、額も重要であるといえます。

小~中規模な事業者の場合、現実的な数値計画を引いた際に採択者中央値にまったく及ばないという事も想定され、そのような場合は採択がかなり難しいといえます。

大規模成長投資補助金の採択を狙ううえでの打ち手

今までの内容を踏まえ、大規模成長投資補助金の採択を狙う上での具体的な打ち手として「補助金の目的にあった事業計画書の作成」「計画の蓋然性を示す面接・プレゼン」「コンサルタントの活用」が挙げられます。

補助金の目的にあった事業計画書の作成

大規模成長投資補助金の採択を狙う上で最も重要なことは補助金の目的にあった事業計画書を作成する事です。

大規模成長投資補助金の審査は「書面で数値や計画内容を判断する一次審査」と「プレゼント質疑応答で計画の蓋然性を判断する二次審査」に分けられます。事業計画書の質が低ければ一次審査の時点で足切りされてしまい、そもそも採択を期待することができません。

大規模成長投資補助金の目的である「企業の成長」と「賃上げ」を果たすことができるような事業計画を作成することで、一次審査における足切りを回避し、二次審査に臨むことができるため、採択を狙う上では内容的にも数字的にも補助金の目的にあった計画書を作成することが極めて重要です。

計画の蓋然性を示す面接・プレゼン

大規模成長投資補助金では面接が実施されます。数値計画上では大幅な成長や賃金の引き上げを謳っていたとしても面接審査でのプレゼンや質疑応答でその実現可能性に疑問を持たれると採択は難しくなります。

二次審査で計画の蓋然性を示す上では事業計画の数値と取り組み内容に矛盾がないことを経営者自身が自分の言葉で話せることが重視されているといえ、成長投資補助金の採択を狙う上で、事前の面接対策・プレゼン対策は必須といえます。

下記の記事で大規模成長投資補助金の二次審査(プレゼンテーション審査)の支援経験を元に作成したプレゼン方法や想定質疑応答を解説しているため、二次審査に臨む方は是非ご確認ください。

▼大規模成長投資補助金の面接・2次審査対策|質問事項を補助金コンサルが徹底解説
https://planbase.co.jp/column/310/

コンサルタントの活用

大規模成長投資補助金は、これまで中小企業にとってメジャーであったものづくり補助金や再構築補助金と比較して、採択率の低さ、作成すべき資料の多さ、求められる目標からも極めて採択の難易度が高い補助金であるといえます。

事業再構築補助金やものづくり補助金では自社の経営企画や経理部で申請を行うケースや地域の公的支援機関(商工会やよろず支援拠点)の支援でも採択を期待することができたといえますが、大規模成長投資補助金の採択を狙う上では採択実績のあるコンサルティング会社の助言を受けることも有効と考えられます。

また、面接審査は近年になって補助金の審査に導入され始めており、経験が浅い支援機関では面接の対策が難しいといえます。

株式会社プランベースではこれまでに大規模成長投資補助金を含む様々な補助金の採択実績があり、製造業、運送業、卸売業など、大規模成長投資補助金で採択されやすい業種の支援経験が特に豊富にございます。

大規模成長投資補助金であれば、申請検討段階、1次審査採択段階、交付申請段階など様々なフェーズからサポートが可能です。大規模成長投資のご相談があればお気軽にお問い合わせください。

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この記事の執筆者

村上 貴弘

村上 貴弘

東京大学経済学部卒。
中小企業診断士、行政書士。
2019年株式会社プランベース創業。
2021年meditips行政書士事務所開業。
製造業、建設業、運輸業、ソフトウェア業など幅広い業種の補助金申請支援実績が豊富。特に事業再構築補助金やものづくり補助金、成長投資補助金といった大規模な補助金の申請に強みを持つ。