宿泊業が事業再構築補助金を活用するには

COLUMN お役立ちコラム

2023.11.08

事業再構築補助金

宿泊業が事業再構築補助金を活用するために注意すべきポイントは?申請方法など徹底解説!

宿泊業は、コロナ禍による影響を大きく受けた業種の1つです。そんななか、多くのホテルや旅館から注目を集めている制度が、コロナ禍によって苦境に立たされた事業者の挑戦を支援する「事業再構築補助金」です。 本記事では事業再構築補助金の概要や、宿泊業における活用アイディア、採択事例などを紹介します。

事業再構築補助金とは?

事業再構築補助金とは?

事業再構築補助金とは、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済環境の変化に対応するため、新分野展開、業態転換、業種転換などの思い切った「事業再構築」にチャレンジする中小企業を応援する制度です。

事業再構築補助金に申請するためには、以下の必須申請要件を満たす必要があります。

  1. 事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けること

    作成した事業計画は、「認定経営革新等支援機関」の確認を受けなければなりません。なお、補助金額が3,000万円を超える場合は、金融機関の確認も必要です

  2. 付加価値額を向上させること

    補助事業終了後の付加価値額の増加率について、以下のいずれかの基準を満たす必要があります。

    ・補助事業終了後3~5年で年率平均3~5%以上
    ・従業員1人につき年率平均3~5%以上

    ※年率平均の基準値は、申請枠によっても異なります。

※参照:事業再構築補助金|事業再構築補助金事務局

事業再構築補助金の種類と対象事業者

事業再構築補助金には「成長枠」「大幅賃金引上促進枠」などのいくつかの申請枠が設けられており、自社が対象となるものに申請することが可能です。

申請枠 主な対象事業者
成長枠 市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属した事業に取り組む事業者
グリーン成長枠 グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に取り組む事業者
卒業促進枠 成長枠またはグリーン成長枠に申請している事業者のうち、補助事業の終了後3~5年で企業規模の成長を果たした事業者
※要件達成後の報告に基づき、補助金額を上乗せする
大幅賃金引上促進枠 成長枠またはグリーン成長枠に申請している事業者のうち、補助事業の終了後3~5年で最低賃金の引き上げや従業員の増員に取り組んだ事業者
※要件達成後の報告に基づき、補助金額を上乗せする
産業構造転換枠 市場規模の縮小や地域における基幹大企業の撤退により、事業の再構築を強く求められる業種・業態の事業者
物価高騰対策・回復再生応援枠 コロナ禍や物価高騰などの影響により、業況が厳しい事業者
最低賃金枠 最低賃金引き上げの原資確保が困難な業況の事業者

なお、それぞれの申請枠には、個別の申請要件が設けられています。詳しくは事業再構築補助金事務局のページから確認してください。

※参照:必須申請要件|業再構築補助金事務局

宿泊施設の改修費も補助対象

事業再構築補助金は、建物の改修にかかる「建物費」も補助対象となります。宿泊施設のリフォームや、リノベーションを行う際の費用も対象です。

宿泊業が思い切った事業再構築を目指す場合、建物の改修に多額の費用がかかる場合も多いでしょう。事業再構築補助金は、改修費用の確保に苦心する宿泊業者にとって心強い味方となってくれます。

宿泊業で事業再構築補助金が注目される背景

宿泊業で事業再構築補助金が注目される背景

新型コロナウイルスの感染拡大により外出自粛の流れが加速した結果、ホテルや旅館などの宿泊業者は深刻なダメージを受けましたが、2022年以降の宿泊業は急回復の傾向をみせています。

下の写真はコロナ禍の旅館・ホテル業界調査の結果を示したものとなっています。写真から、2022年以降は増収予定の割合が高く、業界の需要は回復傾向にあることが分かります。

コロナ禍の宿泊業・ホテル業※出典:帝国データバンク|:「旅館・ホテル業界」 動向調査

この流れに乗って、業績の回復やさらなる成長を目指して事業の再構築に着手する宿泊施設も多く、事業再構築補助金は多くの宿泊業者から注目を集めています。

宿泊業が事業再構築補助金を利用する際の注意点

宿泊業が事業再構築補助金を利用する際の注意点

ホテルや旅館などの宿泊業者が事業再構築補助金を利用する際は、以下の点に注意しましょう。

建物の新築費用は原則として対象外

建物費として補助される費用は、原則的に建物の改修にかかる費用のみです。そのため、新築費は基本的に対象外ですが、まれに必要性を認められ、補助対象となるケースも存在します。

ただし、そのようなケースは少ないため、通常は改修をベースに考えるほうがおすすめです。

宿泊業は「成長枠」の対象外

最大7,000万円の補助を受けられる「成長枠」は、グランピングやキャンプ事業を除き、宿泊業は対象外となります。

ただし、成長枠の対象は随時更新されているため、今後追加される可能性はゼロではありません。

宿泊業が事業再構築補助金に申請する際のポイント

宿泊業が事業再構築補助金に申請する際のポイント

事業再構築補助金に申請する際は、以下の3つのポイントをおさえましょう。

「物価高騰対策・回復再生応援枠」がおすすめ

旅館やホテルなどの宿泊業者が事業再構築補助金に申請するなら、「物価高騰対策・回復再生応援枠」がおすすめです。

前述のとおり宿泊業は成長枠の対象外であり、グリーン成長枠はグリーン成長戦略の14分野(エネルギー関連、省エネなど)に取り組む必要があるためハードルが高いといえます。

また、「卒業促進枠」「大規模賃金引上促進枠」は成長枠またはグリーン成長枠とセットで申請する必要があり、やはり宿泊業には適していません。

以上の理由から、基本的には「物価高騰対策・回復再生応援枠」での申請をおすすめします。なお、最低賃金の引き上げに対応する目的であれば、「最低賃金枠」も視野に入れるとよいでしょう。

強みを活かした事業計画を立てる

補助金は応募すれば必ず受け取れるわけではないため、採択されるための工夫が必要です。とくに、事業計画書の作成には十分力を入れましょう。

自社の強みを活かしつつ、プラスアルファの要素を加えた事業計画を立てることが望ましいとされています。ノウハウや技術、人材など独自性・優位性をアピールできる材料があるとなおよいでしょう。

事業計画が実行可能であることをアピールする

事業計画書を立てる際は、その計画が実行可能であることをアピールする必要があります。人材やスキルなど、自社の経営資源が事業計画の達成にどのように寄与するのか整理して、わかりやすく記載しましょう。

その際、財務面や資金調達の実現性などに言及することも大切になります。補助金はあくまで後から支給されるものであり、まずは自分で資金調達をして事業を開始する必要があるためです。

宿泊業における事業再構築補助金の活用アイディア

宿泊業における事業再構築補助金の活用アイデア

ここからは、宿泊業における事業再構築補助金の活用アイディアを紹介します。

ワーケーション対応

コロナ禍によって、日本ではリモートワークが急速に普及しました。

また、自宅でのリモートワークだけでなく、観光地やリゾート地のホテル・旅館に宿泊しながら仕事をする「ワーケーション」にも注目が集まっています。

宿泊施設を改装してワークスペースに適した環境を整備するなど、ワーケーション需要に対応すれば、集客力アップを期待できるでしょう。

グランピング施設の整備

グランピングとは、「グラマラス」と「キャンピング」をかけ合わせた造語です。テントや食事などを宿泊施設側があらかじめ用意することで、顧客にリッチで手軽なアウトドア体験を提供できます。

宿泊客への対応や食事の提供など、宿泊業としてのノウハウを応用しやすいところもポイントです。

飲食業への進出

ホテルや旅館には、宿泊客にこだわりの料理を提供してきたノウハウがあります。そのため、レストランやカフェなどの飲食店も、宿泊業としてのノウハウを応用しやすい業態の1つです。

宿泊施設とはべつに店舗をオープンする以外に、デリバリーやテイクアウトに対応するという方法もあります。

お土産の物販拡大

ホテルや旅館のなかには、ロビーにお土産処を設けているところも多いでしょう。

単にお土産処を拡大するだけでは補助金の対象にはなりませんが、地域の企業や農協・漁協などと協力して特産品の販売施設を運営するなら、補助金を利用しながら展開できます。

また、特産品を全国にアピールできるECサイトの構築も手段の1つです。

【宿泊業】事業再構築補助金の採択事例

【宿泊業】事業再構築補助金の採択事例

最後に、宿泊業における事業再構築補助金の採択事例を紹介します。

十勝シティデザイン株式会社

「十勝シティデザイン株式会社」は、ワーケーションに特化したコワーキング機能付宿泊施設の開業を目指し、事業再構築補助金に採択されました。

長期滞在に適した室内仕様の実現や、法人向けのサブスクリプション型サービスの提供など、テレワーク需要に狙いを定めた事業計画を打ち出しています。

ゲストハウスますきち

「ゲストハウスますきち」は、民泊から旅館業への転換を目指し、事業再構築補助金に採択されました。地域密着の強みを生かした中期滞在プランと、感染リスクの低下を図った短期個室プランの開設を軸とした事業転換です。

事業計画書では、SNSやクラウドファンディングも積極的に活用することで、認知度と広報力を高めたことを自社の強みとしてアピールしています。

上記2社の事業計画書は事業再構築補助金の公式サイトに掲載されているため、申請の際に参考にしてみてください。
※参考:採択事例|事業計画書

まとめ

まとめ

事業再構築補助金は、コロナ禍によって苦境に立たされた中小企業の、新たなチャレンジを支援する制度です。建物の改修にかかる「建物費」も補助対象となるため、施設の改修に多額の費用がかかる宿泊業と相性がよいとされています。

なお、事業再構築補助金に申請するためには、全枠共通の要件と、申請枠ごとの要件を両方満たす必要があります。

補助金の申請要件や事業計画の立案に関する不安・疑問は、「株式会社プランベース」までご相談ください。株式会社プランベースは、経済産業省認定の認定経営革新等支援機関です。「事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けること」という全枠共通の申請要件を満たせることはもちろん、高い専門性や豊富なノウハウを駆使し、補助金に採択されるための包括的かつ体系的なサポートが可能です。

なかでも、事業再構築補助金については採択率7割と、全国でもトップクラスの実績を持ちます。無料相談をご希望の場合は、こちらからお気軽にお問い合わせください。

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この記事の執筆者

村上 貴弘

村上 貴弘

東京大学経済学部卒。
中小企業診断士、行政書士。
2019年株式会社プランベース創業。
2021年meditips行政書士事務所開業。
製造業、建設業、運輸業、ソフトウェア業など幅広い業種の補助金申請支援実績が豊富。特に事業再構築補助金やものづくり補助金、成長投資補助金といった大規模な補助金の申請に強みを持つ。