補助金とは国や自治体から支給される返済の義務のないお金である一方で使い方などにおいて細かい規定が存在します。 これに違反してしまうと補助金の返還や罰金の支払いが求められ最悪逮捕されてしまいます。 せっかく補助金が支給されたのに意図しない規約違反で補助金の返還を求められたくないですよね。 そこで今回は補助金を返還しなくてはならないケースと返還を求められた際のペナルティについて3つの事例とともに紹介します。 補助金返還のリスクを回避してうまく補助金を活用していきましょう。
補助金の返還が必要となるケース
COLUMN お役立ちコラム
2022.11.09
その他の補助金
補助金を返還しなくてはならないケースとは?|返還が必要なケースや違反した際のペナルティについて解説
目次
はじめに
補助金の返還を求められるケースとは
補助金の返還を求められるケースとは
せっかく支給された補助金も以下の3つのケースでは返還が求められてしまうのでしっかりと確認しておきましょう。
申請内容と異なる目的で使う場合
1つ目のケースは申請内容とは異なる目的で使う場合です(目的外使用)。 補助金とは返還の義務がないというメリットがある一方で政府や自治体の目的に合致した事業であると認定された場合のみ支給が決定されるため使用用途が明確に定められています。 そのため申請書通りの目的で利用しない場合には返還が命じられることになってしまいます。
取得した財産を譲渡、貸し付けなどを行った場合
2つ目のケースは補助金によって取得した財産を許可無く譲渡、交換、貸し付け、担保、廃棄してしまった場合(財産処分)です。 上記のいずれの行為を行ってしまった場合には交付決定が取り消されてしまい、補助金の返還が命じられます。
計画の変更をした場合
3つ目のケースは計画の変更をした場合です。 計画していた事業の中止や変更があった場合には事前に事務局に報告を行い承認を受ける必要があります。 しかし、その承認を受けられない場合には補助金の返還を求められる場合があります。
そもそも補助金とは
そもそも補助金とは
そもそも補助金とはどのようなものなのか。 改めてその特徴や助成金との違いについて詳しく紹介したいと思います。
概要・特徴
補助金とは国や自治体の政策と合致していると認められた事業に対して支給される使用用途が明確に決められたお金です。 国や地方自治体によって様々な種類があり、補助金ごとに目的や仕組みがそれぞれ存在します。 そのため自社にあった補助金を適切に選ぶ必要があります。 また、大きなメリットとして融資とは異なり返済の義務がないという点があります。
補助金と助成金との違い
助成金とは補助金と同じように国や自治体から支給される公的なお金です。 また補助金よりも支給難易度が低く、ある一定の要件を満たせば概ね支給されるのが特徴の1つです。そして主要目的と管轄している省庁にも大きな違いがあります。 助成金は厚生労働省が管轄しており雇用の維持、拡大、人材育成を目的としています。 一方で補助金は経済産業省が管轄しており設備投資等を促進する目的で給付されています。
主要目的 | 管轄 | 給付難易度 | |
補助金 | 設備投資 | 経済産業省 | 難(条件を満たして申請してももらえない場合がある) |
助成金 | 雇用・人材育成 | 厚生労働省 | 易(条件を満たして申請すれば原則もらえる) |
代表的な補助金の種類
代表的な補助金の種類
ここではいくつか代表的な補助金を紹介します。どの補助金があなたの役に立つのか是非確認してみましょう。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は新分野展開、事業・業種転換、規模の拡大といった事業再構築を検討する中小企業の支援が目的です。 使用用途としては以下の10個のものに対して補助金を使用することが出来ます。 ①建物費、②機械装置・システム構築費、③技術導入費、④専門化経費、⑤運搬費、⑥クラウドサービス利用費、⑦外注費、⑧知的財産権等関連経費、⑨広告宣伝・販売促進費、⑩研修費
ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金
ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金は複数の中小企業・小規模事業者が連携して取り組む生産性向上のための設備投資等の支援が目的です。 この補助金は1社だけでは応募することができず2社以上の連携が必要であるという点に特徴があります。 ものづくりという名前がついていますが生産性の向上に繋がる設備の導入や新しいサービスや試作品の開発のためであればサービス業、小売業や卸売業も補助金の対象にあてはまります。
IT導入補助金
IT導入補助金は中小企業、小規模事業者等の課題やニーズに合ったITツールを導入するための経費の一部を補助することが目的となっています。 申請には通常枠(A・B類型)、セキュリティ対策推進枠、デジタル化基盤導入類型、複数社連携IT導入類型の4つの選択肢があります。 セキュリティ対策推進枠はセキュリティ対策の経費の支援をすることが目的とされ、デジタル化基盤導入類型は会計や受発注、決済、ECの機能など企業間の取引をデジタル化することが目的です。 複数社連携IT導入類型は名前の通り複数社で連携してITツールを導入することでデジタル化や生産性の向上を図ることが目的とされています。
目的 | 補助額 | |
通常枠 | ITツールの導入 | 30-450万円 |
セキュリティ対策推進枠 | セキュリティ対策 | 5-100万円 |
デジタル化基盤導入類型 | 企業間の取引をデジタル化 | 5-350万円 |
複数社連携IT導入類型 | 複数社の連携したITツールの導入 | 5-3,000万円 |
補助金の用途は補助金適正化法により定められている
補助金の用途は補助金適正化法により定められている
補助金の使用用途や詳細については補助金適正化法において明確に定められています。 補助金適正化法の正式名称は「補助金等に係わる予算の執行の適正化に関する法律」であり1995年に制定されてから時代に合わせて適宜改正されてきました。 補助金を不正に申請したり、取得することはこの法律によって禁止されており、また申請した使用用途も必ず守る必要があります。
補助金適正化法を違反した場合のペナルティ
補助金適正化法を違反した場合のペナルティ
では補助金適正化法を違反した場合にはどのようなペナルティがあるのでしょうか。それを実際に確認しておきましょう。
罰則を受ける
補助金適正化法に違反して不正受給や申請以外の用途で補助金を使用した場合、補助金交付の取り消し、補助金の全額返金が求められてしまいます。 もし返還期日に遅れるとその分だけだの延滞金の支払いが発生します。また悪質な場合には3年以下の懲役や50万円以下の罰金が科されることもあります。
社名が公開されて社会的信用を失う
違反をしてしまった場合には社名が公開されて社会的信用を失ってしまいます。 社会的信用を失うと社員の離職や取引先からの取引停止など事業継続が困難になる可能性が非常に高いです。 また一度失った信用を回復するのは非常に大変であるため補助金の申請を行う際はルールに則り適切に使用するようにしましょう。
返還を求められたら早急に準備を行う
返還を求められたら早急に準備を行う
もし違反してしまい返還を求められたら早急に準備を行いましょう。 返還金額には補助金の全額返金に加えて国庫納付額と加算金、延滞金が含まれ場合によってはこれら全てを支払う必要性があります。
国庫納付額
国庫納付額とは違反をした際に国に返還する金額のことであり、その金額は違反した内容によって異なってきます。 補助金を使って得た財産を売却又は有償で賞与した場合にはその金額に補助率をかけた金額を全額返済する義務があり、無償で譲渡した場合には残存薄価に補助率をかけた金額を返還する義務があります。また、担保にいれてしまった場合にはその金額に補助率をかけた金額を返還する義務が生じます。
加算金・延滞金
加算金とは違反をして補助金の返還を求められた場合に補助金を受け取った日から返還するまでの日数に応じて補助金の年率10.95%の加算金の納付が求められます。また、期日までに返還しなかった場合には納付までの日数に応じて返還額の年率10.95%の延滞金が加算されます。
補助金を返還した事例
補助金を返還した事例
補助金には厳密な審査があり、国や地方自治体との政策と合致した事業だけに給付されているため虚偽の申請による不正受給は返還の義務や罰則が生じます。 以下において実際に補助金を返還した実際の事例を紹介します。
中小企業組合等共同施設等災害復旧費補助金の事例
「平成25年度当初予算 中小企業組合等共同施設等災害復旧費補助金(中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業)」で福島県から交付を受けた株式会社磐城無線研究所は証憑類の偽造等を行い5,881万円の補助金の不正受給をしていました。 同社に対しては補助金の全額の返済が求められ、経済産業省は補助金の交付停止措置をとっています。
地域商店街活性化事業費補助金の事例
「平成24・25年度補正予算 地域商店街活性化事業費補助金」を受けた商店街行進組合が不適切な計上を行い、補助金5,140,000円の不正受給を行いました。 これが判明し、同社の代表らは業務上横領と詐欺の罪で起訴されまた経済産業省は補助金の全額返還と補助金交付・委託の停止措置をとっています。
地域活性化創造技術研究開発費補助金の事例
福井県の「地域活性化創造技術研究開発補助金」を受けた福井製麺株式会社は約2年間にわたり1,500万円の不正時給をしていました。同社の代表らは補助金適正化法違反として逮捕、起訴されています。また、経済産業省より補助金の全額返済、補助金及び委託費交付を36カ月停止の措置がとられています。
まとめ
まとめ
今回は補助金を返済しなくはならないケースとその際のペナルティについて紹介しました。
そのケースとペナルティについて改めてまとめます。
返還ケース
・申請内容と異なる目的で使ってしまった場合
・補助金で取得した財産を譲渡、貸し付けなどを行った場合
・補助事業計画を勝手に変更してしまった場合
ペナルティ
・補助金の全額返還
・国庫交付金、加算金、延滞金の支払い
・逮捕・罰金の支払
ただしルールを守り上手く活用すれば経営おいて補助金は非常に役に立ちます。ぜひこの記事を参考にして補助金返還のリスクを避けうまく補助金を経営に役立ててください。
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この記事の執筆者
村上 貴弘
東京大学経済学部卒。行政書士。在学中からフリーランスのコンサルタントとして中小企業、士業事務所の補助金獲得のコンサルティングを行なう。2019年株式会社meditips(現:株式会社プランベース)創業。2020年同社取締役就任。2021年meditips行政書士事務所開業。現在はベンチャー企業や飲食店、製造業、建設業など幅広い企業の経営戦略立案や補助金申請支援を行なっている。
この記事の執筆者
村上 貴弘
東京大学経済学部卒。
中小企業診断士、行政書士。
2019年株式会社プランベース創業。
2021年meditips行政書士事務所開業。
製造業、建設業、運輸業、ソフトウェア業など幅広い業種の補助金申請支援実績が豊富。特に事業再構築補助金やものづくり補助金、成長投資補助金といった大規模な補助金の申請に強みを持つ。
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