事業再構築補助金やものづくり補助金等の補助金の活用を検討している中小企業の経営者様のうちで、知人や友人から知ったという方は多いのではないでしょうか。中には、知人や業者から補助金申請の話を持ち掛けられているという方もいらっしゃるかもしれません。 昨今、補助金の不正受給のニュースが多く、ご自身に持ち掛けられた話、あるいはご自身の申請方法が不正受給に当たらないか心配かと思います。 この記事では、意図せず不正受給に巻き込まれないようにするために気を付けるべき3つのことと、巻き込まれそうになった時の対処法について解説しています。 この記事をお読みになり、安全に補助金の申請を行えるようになりましょう。
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不正受給とは
この章では、事業再構築補助金とものづくり補助金に関して、どのようなことが不正受給に該当するのか、該当した場合の処罰について解説していきます。不正受給は、犯罪行為であるため、意図せず該当するようなことが無いように、しっかり見ていきましょう。
補助事業者が守るべき法律
事業再構築補助金とものづくり補助金の両方において、公募要領の「補助事業者の義務」の章に必ず以下のような文が記載されております。 補助事業者が「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)」等に違反する行為等(例:他の用途への無断流用、虚偽報告など)をした場合には、補助金の交付取消・返還、不正の内容の公表等を行うことがあります。(事業再構築補助金 公募要領 第8回より引用) 上記のように、補助事業者が守るべき法律が「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」と呼ばれるものです。 この法律では、補助金申請に関して不正な目的で補助金を使用することも法律で取り締まられております。次の節から、具体的に事業再構築補助金とものづくり補助金において、不正受給に該当することを解説していきます。
不正受給の2つの落とし穴
事業再構築補助金の公募要領によると、補助金の申請にあたって、「虚偽の申請による不正受給」「補助金の目的外利用」「補助金受給額を不当に釣り上げ、関係者へ報酬を配賦する」といった不正行為を禁止していおります。
虚偽の申請は、給付要件を満たさないにもかかわらず申請をしたというものが代表的です。
具体的には、従業員を不当に増やし補助金の上限を上げる、売上減少要件に合致させるために実態よりも売上を低く申請する、というものが挙げられます。
補助金の目的外利用は、申請時の補助金の目的と実際の使われ方が異なっているというものです。
具体的には、特定の設備の購入費に充てるとして申請を行ったが、実際はより安く性能が変わらないようなものを購入した、というものが挙げられます。
補助金受給額を不当に釣り上げ、関係者へ報酬を配賦するとは、複数者と共謀し、補助金受給額を不当に釣り上げた分を仲間内で分け合うというようなものです。
具体的には、申請者と不正受給を持ち掛けてきた業者・取引先と共謀し、不正な申請内容で補助金を釣り上げ、その分を3者で分け合う、というようなものが挙げられます。
これらの事例は、明らかに不正だと言うことは理解できると思います。しかし、落とし穴が
・誤って申請した場合も、中小企業庁の調査までに自主返納しないと不正受給になってしまう
・専門業者のふりをして不正受給を持ち掛けてくる業者等が存在する
ということです。つまり、意図せず不正受給を働いてしまう可能性があるということです。
不正受給に対する処罰
不正受給に対する処罰には、補助金の返還・公表・罰則があります。
補助金の返還は、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」によると、不正行為によって交付決定の取り消しがあった場合、期限日を設けて補助金の返還が命じられます。返還では、補助金に加えて受給した日から納付した日の日数に応じた加算金も納付する必要があります。また、期限日までに納付されなかった場合は、延滞金を納付する必要があります。
公表は、経済産業省のHPによると、不正受給と判断された場合の対応として、「申請者の屋号・雅号・氏名等を公表。事案によっては刑事告発。」とあります。(経済産業省「不正受給及び自主返還について(持続化給付金・家賃支援給付金・一時支援金・月次支援金)」)
罰則は、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」によると、違反した行為によって多少異なるものの、「5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはこれを併科する」とあるように、重い刑罰に当たります。
次の章から、不正受給にならないために気を付けるべきことを解説していきます。
不正受給にならないために気を付けるべき3つのこと
思いがけずに、ご自身の補助金申請が不正受給にならないために、申請時のミスしやすいポイント・申請代行業者について・不正受給を持ち掛ける業者の特徴の3つのことについて説明していきます。 特に、初めの申請時のミスしやすいポイントは、しっかり把握することで申請の質の向上を実現できると思われますので、じっくりと読み進めてください。
申請時のミスしやすいポイント~事業再構築補助金・ものづくり補助金
1つ目は、従業員数です。
事業再構築補助金・ものづくり補助金両方とも、従業員数によって補助金の上限や補助率が変わります。従業員数とは、常時使用する従業員の数であり、「予め解雇の予告を必要とする者」の数を指します。個別に判断されるものの、正社員・パート・アルバイト・派遣社員・契約社員等が含まれることが多いです。ここで注意が必要であることが、会社役員及び個人事業主は常時使用する従業員数に含めないということです。
更に、補助対象者の要件は、各補助金の募集開始日において満たしている必要があります。また、公募要領によると、対象者になるために、事業実施期間に従業員数の削減を行い、期間終了後増員を行う等のことは、申請時点にさかのぼって補助の対象外となることがあると記載されております。
ミスの防ぎ方としては、実際の申請時に従業員数が確認できる書類の提出が必要であるため、各補助金の募集開始日に要件を満たしていることを確認を兼ねて、従業員名簿を作成することが挙げられます。
また、ミスではないものの注意が必要なこととして、ものづくり補助金の「一般型」及び「グローバル展開型」において、小規模企業者・小規模事業者は、採択後交付決定までの間、または交付決定後に従業員数の増加によって小規模企業者・小規模事業者の定義から外れた場合、補助率が2/3から1/2に変更になります。
2つ目が、金額です。
提出書類や申請時には、数多く金額を記入する箇所があり、その際に記入ミスや確認ミス等によって、誤って記載してしまう可能性があります。具体的には、ものづくり補助金において、申請時のweb上で、直近3年分の売上高や経常利益を直接入力しなければいけない場面があり、ここでミスをすると誤ったまま申請が進んでしまう恐れがあります。
金額の記入ミスや確認ミスによる要件を満たしているかどうかの誤認は、補助金の上限額や補助率の違いに直結するため、細心の注意を要します。
ミスの防ぎ方としては、社内でダブルチェックをすることが挙げられます。一方で、個人事業主様をはじめ、他の従業員にダブルチェックをお願いするということが難しい場合もあると考えられますので、後述する認定支援機関等への申請代行の依頼が最も効果的な防ぎ方であると考えます。
3つ目が、上記2点を含んでいますが、満たしている要件です。
事業再構築補助金には、「通常枠」、「大規模賃金引上枠」、「回復・再生応援枠」、「最低賃金枠」、「グリーン成長枠」及び「原油価格・物価高騰等緊急対策枠」の6つの事業類型があります。
更に、それらの要件を満たしたうえで、行おうとしている事業が、事業再構築指針で挙げられている「新分野展開」、「事業転換」、「業種転換」、「業態転換」、「事業再編」のいずれかに当てはまっていなければなりません。そのため、事業再構築補助金では、2段階での要件の確認が必要であると言えます。
ものづくり補助金に関しては、「一般型」の、「通常枠」、「回復型賃上げ・雇用拡大枠」、「デジタル枠」、「グリーン枠」の4類型と「グローバル展開型」の合計5類型があります。
上記に挙げた要件は、予定している事業で提供するサービスの種類や従業員数、企業規模によって異なるため、公募要領を熟読したうえで当てはまる要件で申請する必要があります。
要件に関しては、ご自身でできるミスの防ぎ方が、公募要領をよく読むということ以外ないため、繰り返しにはなりますが、後述する認定支援機関等への申請代行の依頼が最も効果的な防ぎ方であると考えます。
頼りになるのか? 申請代行業者とは
申請代行業者とは、補助金に係る申請をサポートしてくれる業者のことです。経済産業省管轄の補助金(事業再構築補助金やものづくり補助金)では、申請代行に必要な資格は無く、誰でも行ってよいことになっております。申請代行業者として主に挙げられる業種が、
- 行政書士
- 中小企業診断士
- 税理士
- 弁護士
- 商工会議所
- 金融機関
- コンサル
が挙げられます。また、申請サポートを依頼するかどうかの見極めポイントの一つに、採用実績が挙げられます。直近のものづくり補助金の第11次締切の採択者をサポートした認定支援機関のうち、多いものから上位3つがコンサル会社、次いで信用金庫、地方銀行となっています。 詳しくは、こちらの記事をご確認ください。
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悪質業者に引っかからないコツ
上記の記事でのポイントを厳守することが、悪質業者に騙されない手段になります。裏を返すと、どのくらい多くの補助金を獲得できるかというような視点で選ぶと騙されやすくなります。
始めのうちはそんな考えを持っている経営者様はいらっしゃらないと思いますが、数多くの業者を見比べているうちに、選ぶ基準がずれてしまうということは、補助金代行業者の選定に限らず、人生の数多くの場面で経験したことはないでしょうか。
そのようにならないために、補助金で何か儲けようという考えを少しでも持たないようにするためにも、補助金を必要とする事業に関して計画を練り、事業に対して自信を持つことが大切だと考えます。
次の章では、騙されそう、あるいは騙されているかも、と思った時の相談すべき機関に関して解説していきます。
もしかして騙されてる? 相談すべき相手は誰?
この章では、不正受給に関して、相談すべき機関等について解説していきます。
不正受給の相談窓口
事業再構築補助金・ものづくり補助金ともに、外部支援者とのトラブルや、補助金の不正利用や要件違反に関する告発に関する窓口を設けています。どちらも、公募要領の初めの方のページに記載されているため、ご自身でご確認の上、ご連絡することをおすすめ致します。
不正受給の告発に関して
不正受給だけに限られた話ではありませんが、告発を行った人は公益通報者保護法によって守られます。
公益通報者保護法とは、消費者庁のHPを要約すると、企業不祥事による被害拡大を防止する目的で通報する正当な行為は、解雇等の不利益な扱いから保護されるべきだとしてどこへどのような内容の通報を行えば保護されるかというルールを定めたものです。
そのため、不正受給を告発する場合はご自身を守るためにも、先述の窓口に相談し、手順にのっとって告発することが肝要であると思われます。
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この記事の執筆者
村上 貴弘
東京大学経済学部卒。行政書士。在学中からフリーランスのコンサルタントとして中小企業、士業事務所の補助金獲得のコンサルティングを行なう。2019年株式会社meditips(現:株式会社プランベース)創業。2020年同社取締役就任。2021年meditips行政書士事務所開業。現在はベンチャー企業や飲食店、製造業、建設業など幅広い企業の経営戦略立案や補助金申請支援を行なっている。