補助金と助成金の違い

COLUMN お役立ちコラム

2021.10.13

その他の補助金

補助金と助成金の違いは?共通点や補助金・助成金にはどのようなものがあるか具体例も紹介!!

はじめに

知っていないと損をする補助金と助成金。

聞いたことはあっても使い方が分からない経営者も多いのではないでしょうか?混同されがちな補助金と助成金は国や地方自治体から交付され、返済が不要という共通点がありますが、管轄する省庁や交付金額、算出方法などには大きな違いがあります。

この記事では補助金や助成金を活用したい企業向けに補助金と助成金の違いとよく使われる補助金、助成金について解説します。

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補助金と助成金の違いとは

補助金と助成金の違いとは

補助金と助成金は慣習的に呼び分けられているのみで言葉自体に大きな違いはありません。一般的には管轄の違いによって分けられているほか、お金を受け取るまでのプロセスや期間、倍率なども補助金か助成金化によって変わってきます。

なお、下記の違いはあくまで主なものについてであり、助成金という名称で補助金的な性格が強いものもあるため注意が必要です。

管轄の違い

一般的に助成金は厚生労働省の管轄となっています。

そのため、経済産業省や地方自治体の管轄である助成金は雇用条件の改善などの対策の側面が強くなっています。なお、労働社会保険諸法令に基づく助成金の申請書の作成や行政機関への提出は社労士の独占業務である点にも注意が必要です。

補助対象の違い

補助金と助成金の違いとして特に重要なのは補助対象の違いです。補助金の多くが生産設備の導入費用やシステムの導入費用を補助対象としているのに対して、助成金の支給条件はさまざまで必ずしも設備導入などが必要ではないものもあります。

特に補助金は革新的なサービスを実現するための生産設備の導入や自社の業務プロセスを刷新して生産性を高めるための投資などある程度の革新性がある取り組みを補助対象になることが多いため、補助対象の条件を満たしている事業者だからといって何でも補助対象にできるわけではないという点に注意が必要です。

支給額や倍率の違い

補助金と助成金の違いとして、他には支給される金額や倍率が違うという点も挙げられます。一般的には助成金よりも補助金の方が支給額が大きく、一般的な中小企業が受け取る補助金であれば従業員数が数人程度の小さな企業であっても数百万から数千万円規模の補助金を獲得できるケースもあります。

一方で、申請したときに補助金や助成金がもらえる確率・倍率には大きな違いがあります。一般的に助成金は倍率という考え方がなく、従業員数や就業規則について申請に必要な条件を満たして申請すれば、申請しても必ず補助金がもらえるわけではありません。

募集期間の違い

また、補助金と助成金の違いとして、募集期間の違いも挙げられます。助成金の多くが随時の募集または比較的長期間での募集となっている一方で、補助金は締め切りが短いケースや年度の途中の早い段階で終了してしまうケースもあります。

経済産業省が管轄している大規模な補助金であれば、締め切りを年度の中で複数に分けて実質的な通年での公募になっているものもありますが、規模が小さいものほど早い段階で終了してしまうため、マイナーな補助金の申請を検討している方は、自分が申請する補助金の募集期間がいつなのかを意識して、期限までに申請できるように注意しましょう。

専門家の違い

補助金の申請も助成金の申請も日々更新されるため事業者が自分で申請する難易度が高く、専門家に依頼するケースが多々あります。補助金の専門家は主に助成金の専門家は社会保険労務士が該当します。特に労働社会保険諸法令に基づく助成金の申請については社会保険労務士の独占業務になっているため、注意が必要です。

補助金と助成金の共通点

補助金と助成金の共通点

補助金と助成金の違いについて記載しましたが、補助金と助成金には共通する部分も多くあります。ここでは、補助金と助成金の共通点で押さえておくべき「国や自治体から支給される」「後払いで支給される」「原則として返済は不要である」という点について掘り下げて解説していきます。

国や自治体から支給される

補助金と助成金の共通点であり、混同される原因となっているのは補助金も助成金も国や地方自治体から支給されるという点です。

補助金の場合は経済産業省が民間の事業者に事務局業務を委託しているケースもありますが、あくまで両方とも公的な制度であり、補助金適正化法などの法律に基づいて実施されているため、書類の管理や報告の条件などは面倒で負担が大きいものになっています。

後払いで支給される

補助金と助成金の共通点として押さえておくべきこととして、両方とも基本的には支払いが後払いになるという点が挙げられ、銀行からの融資やクラウドファンディングその他の資金調達と比較して注意すべき点です。

例えば1,500万円(税抜)の設備を導入する際に1,000万円の補助金に採択されていたとしても、まずは1500万円を自己資金や金融機関からの融資で準備して支払い、すべての報告や検査が終わった後で、国から1000万円の補助金が振り込まれるという流れになります。そのため、資金繰りが厳しいケースなどでは補助金や経費の何割かを支給するような助成金を使用することは難しいという点に注意してください。

原則として返済義務はない

補助金と助成金の共通点として、両方とも原則として返済する義務がないという点が挙げられます。ただし、返済が不要なのはあくまで原則であり、不正受給があった場合や利益が出た場合の収益納付の制度がある場合は補助金の返還が必要になる場合があります。

補助金の返還等については「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下、補助金適正化法)」で定められており、補助金を受けた事業者が補助金の目的外使用や補助金についての法令や各省各庁の処分に違反した場合は補助金の交付決定を取り消すことが可能であり、補助金の交付が取り消された場合は補助金の返還を命じなければならないとされています。

また、収益納付については補助金適正化法第七条で定められており、相当の収益が生ずると認められる場合に補助金の全部または一部に相当する金額を国に納付すべき旨の条件を附することができるとされているので、補助金によっては収益納付が必要になる場合がある点にご注意ください。

補助金とは

補助金とは

ここまで補助金と助成金の違いにフォーカスして解説してきましたが、ここからは補助金と助成金についてより詳しくご説明させていただきます。補助金は国や地方自治体が政策目的を達成するために事業者に対して交付するもので、申請した場合必ずしももらえるわけではないというのが主な特徴ですが、より詳しく解説していきます。

補助金の特徴

補助金の特徴として、国や地方自治体から交付される返金不要なお金であること、経費に対して一定割合の補助をするものであり、一部の自己負担があること、補助金の入金は後払いであり、導入する設備やシステムの代金を最初に立て替える必要があることがあげられます。補助金は世の中に1万種類以上あると言われており、自社の事業内容や業種、導入したい設備やシステムに対して最適な補助金を見つけることが重要になっています。
また、助成金と違って、労働社会保険諸法令とは関係が無いため、社会保険労務士以外でも申請のサポートが可能になっています。

補助金のメリット

補助金と助成金を比較した際の補助金のメリットとしては下記の3つがあげられます。

  • 補助金額が大きいことが多い
  • 補助対象にできる経費の幅が広いものが多い
  • 従業員がいない事業者でも補助対象になる場合がある

まず、補助金額について、補助金の場合は小規模事業者のものであっても100万円以上もらえるものも多くあり、大型の補助金では1,000万円~1億円の補助金がもらえるものもあります。大型の補助金はその分申請が大変で審査も厳しく、補助金の受給までに必要な書類が多くなるという点に注意する必要がありますが、もらえる金額が大きいというのは補助金の最大のメリットです。

また、補助金は法人税などが財源とされていることから、従業員がいない事業者や従業員数が少ない事業者であっても申請することができるのも補助金特有のメリットであるといえます。

補助金受給までのフロー

補助金の受給までのフローは大まかに下記の通りです。

  1. 公募:HPでアナウンスされる。
  2. 申請:事業計画書や決算書を用意して電子申請。
  3. 審査:事業の実現可能性、趣旨との合致度合いなどを審査。
  4. 採択:HPで採択結果が公表される。
  5. 交付決定:見積等を整備して補助金額を決定。
  6. 事業実施:補助金の対象となる設備等を導入する。
  7. 支給申請:事業の完了後、補助金を請求。
  8. 受給:補助金が振り込まれる。

公募の開始は各補助金のホームページなどでアナウンスされます。締め切りまでに事業計画書などの応募に必要な書類をそろえて申請し、通常2ヶ月程度で補助金の審査がなされます。審査を通過し、無事に採択されると、補助金によっては交付申請という手続きを経て補助金額を確定させてる交付決定が必要になります。

交付決定後にようやく設備の導入やシステムの開発が可能になります。原則として交付決定後に導入された設備やシステムの経費のみが補助対象になるため、交付決定の後に導入するというスケジュールは厳守する必要があります。設備等を導入し、支払い等も終えれば実績報告を経て、支給申請ができます。補助金の多くは申請してから1ヶ月程度で受給できます。

補助金活用における注意点

補助金の申請における注意点としては、下記の3つがあげられます。

  • 公募期間が短いことが多い
  • 人気の補助金は競争率が高く採択率が低い
  • 申請から補助金入金には通常半年以上の長い時間がかかる

まず、補助金の多くは公募期間が短く、短い時間で事業計画書や見積書などの必要書類を作成・収集する必要があります。また、人気の補助金ほど多くの申請が殺到するため、採択率が低くなりがちである点にも注意が必要です。また、補助金と助成金に共通することですが、申請してすぐに支給されるわけではないため、ある程度余裕を持った資金繰りをする必要があります。

補助金の例

多くの企業が申請している代表的な補助金である「ものづくり補助金」をここでは簡単に説明します。

事業再構築補助金

事業再構築補助金とは、経済産業省が実施する「新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等を目指す企業・団体等の新たな挑戦を支援」する2021年で最も予算額が大きい補助金です。

従来の補助金と比較して、最大1億円と規模が大きいこと、設備やシステムだけではなく建物も補助対象になること、既存事業と離れた新規事業への投資も補助対象にするなど多くの特徴があり、コロナ禍において、新しい事業展開を検討する中小・中堅企業向けの補助制度として、注目が集まっています。

対象となる事業者は個人事業主と株式会社や合同会社に加えて、一般社団法人や一部の医療法人なども補助対象になっていることから非常に多くの方が補助対象になっているほか、申請するための条件はコロナ以前と比較して売り上げが10%以上減少していることなど該当する事業者が多くなっており、2021年度最も注目されている補助金であるといえます。直近の採択率は30%~40%程度と高くはありませんが、十分に申請する価値がある補助金といえます。

ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金

ものづくり補助金とは、経済産業省が実施する「中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援する」補助金で、設備投資やシステム投資の費用が補助対象になります。

対象となる事業者は中小企業及び個人事業主で一般社団法人や医療法人は補助対象外になります。
申請するための条件には付加価値額と給与支給総額の向上、事業所内最低賃金を地域別最低賃金の+30円以上にするなどが挙げられますが、事業再構築補助金とは異なり、売上の減少要検討は不要なため申請可能な事業者の幅はより広いといえます。

2021年現在、事業再構築補助金の人気の陰で競争率が下がり採択率が50%程度にまで上がっており、採択される可能性が高い注目の補助金といえます。

助成金とは

助成金とは

助成金は主に厚生労働省が雇用の増加や人材育成などの実現のために実施しており、従業員数や就業規則などの要件を満たしていれば支給されるものです。ここでは助成金の特徴やメリットについて解説します。

助成金の特徴

助成金の特徴として、厚生労働省が雇用の増加などのために支給する返金不要なお金であること、経費に対して一定割合の補助をするものや正社員化した従業員数に応じて支給されるものなど条件が様々であることなどがあげられます。また、労働社会保険諸法令に基づく助成金の申請書の作成及び行政機関への提出は社労士の独占業務であることなどが挙げられます。

助成金のメリット

助成金のメリットとしては下記の2つが主に挙げられます。

  • 業種や社員数、就業規則などが条件に合致していればほぼ支給される
  • 自己資金を抑えて労務環境を整えることができる

助成金の申請では事業計画書の提出などは不要なため、厳しい審査がある補助金の申請と比較して、条件を満たせばほぼ支給されるというメリットがあります。
また、助成金の目的上、助成金の申請条件に合わせた投資等を行なうことで自己資金を抑えつつ労務環境を整備できるというメリットもあります。

助成金受給までのフロー

助成金の申請から支給までの基本的な流れは「実施計画の申請→実施→支給申請→支給」となります。

  1. 実施計画の申請:助成金の支給要件に合致した実施計画を作成、提出する。
  2. 実施:実施計画を実施する。
  3. 支給申請:助成金の支給を申請する。
  4. 支給決定:支給要件を満たしていれば、助成金が支給される。

助成金活用における注意点

助成金を活用する上で注意すべき点としては「必ずしも助成金がもらえるわけではない」「助成金をもらうために経営側に不利な制度を採用しないといけない場合がある」等が挙げられます。

助成金は申請に必要な要件を満たしていれば原則としてもらうことができますが、実施計画を提出したものの取組ができなかった場合や該当する従業員が退職してしまった場合、会社都合で従業員を解雇した場合など、助成金が不支給になる場合もあります。要件を満たせば原則もらえる一方で例外的にもらえない場合もある点には注意が必要です。

また、助成金をもらうためには就業規則を変更したり、有期契約社員を無期契約社員にするなどの取組が必要になる場合が多くあります。このような取組必ずしも経営側にとって有利ではなかったり、会社の実情に合わない場合もあるため、助成金を活用する前に確認する必要があります。

まとめ

まとめ

この記事では混合されがちな補助金と助成金について、それぞれの違いや特徴、メリット、注意すべき点をまとめました。要件を満たしていれば原則支給される助成金と違って、補助金は厳しい審査に通過するために完成度が高い事業計画書を作成する必要があります。補助金の申請は専門家に相談する事をオススメします。

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この記事の執筆者

村上 貴弘

村上 貴弘

東京大学経済学部卒。
中小企業診断士、行政書士。
2019年株式会社プランベース創業。
2021年meditips行政書士事務所開業。
製造業、建設業、運輸業、ソフトウェア業など幅広い業種の補助金申請支援実績が豊富。特に事業再構築補助金やものづくり補助金、成長投資補助金といった大規模な補助金の申請に強みを持つ。