事業再構築補助金で採択される事業の条件

COLUMN お役立ちコラム

2021.06.20

事業再構築補助金

【解説】事業再構築補助金で採択される事業の条件とは?

本記事の趣旨

本記事の趣旨

本記事では、事業再構築補助金に採択される上でどのような事業内容で計画を策定するべきかについて解説します。
本記事はあくまで事業に関する内容なりますので、ざっくりと事業再構築補助金についてお知りになりたい方は下記記事を参照ください。

▼事業再構築補助金について

事業再構築の前提

事業再構築の前提

事業再構築補助金は、その名の通り「事業の再構築」に対して補助される補助金制度となっています。制度上5つの類型が設けられていますが、全ての類型に共通して「既存事業からの相当程度の転換をすること」が求められています。

「転換」に求められる要件

「転換」に対して具体的にどのような要件が設けられているかと言うと、代表的には「過去に製造等した実績がないこと(製造実績)」「製造等に用いる主要な設備を変更すること(設備変更)」「既存製品等と新製品等の代替性が低いこと(市場の新規性)」などが挙げられます。事業再構築指針では、下記の通り具体的否定例を挙げて説明されています。
※詳細は事業再構築指針(https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin_tebiki.pdf?0604)参照

 

【転換と捉えられない例】
(例)パウンドケーキの製造の際に用いていたオーブン機器と同じ機械を、新商品である焼きプリンの製造に使用する場合。
(例)アイスクリームを提供している事業者が、新たにかき氷を販売するが、従来の顧客がアイスクリームの代わりにかき氷を購入することを想定する場合。
(例)アイスクリームを提供している事業者が、バニラアイスクリームに特化して提供するが、想定顧客が従来と変わらない場合。

「既存事業の延長」ではない

上記の「転換」に対する要件と同時に、「既存事業の単なる延長」として捉えられる事業は、事業再構築指針にそぐわないということも説明されています。指針で用いられている具体例は下記の通りです。

【既存事業の延長である例】
(例)自動車部品を製造している事業者が、単に既存部品の製造量を増やす場合。
(例)自動車部品を製造している事業者が、新たに製造が容易なロボット用部品を製造する場合。
(例)自動車部品を製造している事業者が、新たに既存の部品に単純な改変を加えてロボット用部品を製造する場合。
(例)自動車部品を製造している事業者が、既存製品である2つの部品を単に組み合わせたロボット用部品を製造する場合。

どんな業種の事業が採択されやすい?

どんな業種の事業が採択されやすい?

それではどんな事業が採択されやすい事業と言えるのでしょうか。
先の6月18日に採択発表があった事業再構築補助金1次締切における採択事業者について、日刊工業新聞の記事では、事業内容の業種別割合を公表しています。
採択された事業内容として多かった業種1〜3位は下記の通りとなっています。

  • 1位 製造業(31.7%)
  • 2位 飲食業(21.8%)
  • 3位 卸売業・小売業(12.4%)

製造業の強さ

事業再構築補助金の類似の補助金とも言われるものづくり補助金では50%程度が製造業での採択と言われており、事業再構築補助金ではよりバラエティに富んだ業種の事業内容が採択される傾向にあると言えます。
それでも、製造業が31.7%で1位というのは、依然製造業の強さが確認できる結果となっています。事業再構築補助金は中小企業庁が管轄しているという点から、当然の結果であるとも言え、今後も製造業の事業内容での採択は安定して見込まれるものと考えられます。

飲食業も注目

一方で、事業再構築補助金はコロナ対策支援という側面も強く、コロナ禍のおいて非常に厳しい状況にある飲食店も大きな割合で採択されています。
まだまだコロナウイルスの収束が見込めない中、今後もこの傾向は続いていくものと考えられます。

なお、業種に関する詳しい解説は、下記記事をご参照ください。

https://planbase.co.jp/column/124/

採択されにくい事業は?

採択されにくい事業は?

逆に採択されにくい事業はあるのかというと、業種という括りでは4位以下では言わば「どんぐりの背比べ」状態であり、特段「この業種が採択されにくい」といったことは存在しないようです。
一方で、事業再構築補助金の審査では「事業性」が非常に厳しく審査されると言われており、事業性の低い事業は否定されると考えられます。これは当政策があくまで景気回復及び雇用創出を目的とした財政政策の1つであるためです。

「事業性が低い」事業とは

「事業性が低い」とはどういうことかというと、弊社では「補助金ありきなのか」という点が非常に重要であると考えています。極端な例ですが、「特に考えている事業もないが、うちでも何かに使えませんか?」といったスタンスなのであれば、申請をお勧めすることはできません。仮に補助金を活用しなかったとしてもその事業を実施する価値があり、成果が期待できる事業なのであれこそ、申請を検討されることが望ましいと言えます。

実質的な労働を伴わない事業

また、「事業性が低い」の意味するところの1つは、前経済産業副大臣の牧原秀樹氏と中小企業庁のオンラインセミナー(下記動画)での発言から「実質的な労働を伴わない」に言い換えることができます。

 

例えばマンションを建ててマンション経営をするとかですね、要するに実質的に労働を伴わない事業とかですね、要するにお金持ちがよくやると思いますけれども、老後のためにマンションを建てて家賃収入を得るだとか、それは公募要領で明確に除こうと思っています。

『事業再構築補助金』オンラインセミナー 1:12:40頃から

実際に、この後発表された公募要領(14ページ)では、不採択又は交付取り消しとなる事業計画の内容が明かされていますが、その中で「具体的な事業再構築の実施の大半を他社に外注又は委託し、企画だけを行う事業」や「専ら資産運用的性格の強い事業」などの事業が挙げられています。

具体的にどのような事業が「労働力を伴っておらず、資産運用的性格が強い」のかを判断するのは非常に難しいですが、一般的に下記に挙げるような事業では採択が厳しいと言われています。

【採択が難しい事業例】
・単なる賃貸アパート経営
・単なる住居兼事務所の建設
・完全無人のコインランドリー
・完全無人の駐車場運営
・仮想通貨マイニング事業

上記の例について、当社の見解としても「労働力を伴っていない事業」と判断される可能性が高く、基本的には採択は難しいと考えています。
一方で、上記の事業例に一部該当するケースであっても、管理・運営事業などを伴った内容であれば労働力を伴った事業であると判断できる可能性があります。この辺りは、お客様への詳しいヒアリングを通じて個別に判断させていただくものですので、是非一度お問い合わせいただきますようお願い致します。

本記事のまとめ

本記事のまとめ

事業再構築補助金で採択されるためには、下記①〜③に留意して事業を考えていくことが重要です。
① 十分な転換度合いを持つ事業であるかを事前に確認しましょう
単なる既存事業の延長ではなく、対象市場も変わることが必要です。一方で、全く関係ない事業を始める計画なのであれば、何故その事業なのかを説明することも大切になると考えられます。
②業種による採択率はあまり考慮する必要はなし
建設業や飲食業など採択されやすい業種はあるものの、業種ドリブンで事業を考える必要はないと言えます。
③補助金ありきの事業では採択は難しい
「補助金があるからこの事業を行う」のではなく、補助金が無くても行う事業であるくらいの事業性・採算性が必要です。十分な事業性を持った事業で申請し、採択を目指しましょう。

株式会社プランベースは、東京大学経済学部/経済学院で経営学を学んだメンバーがその知見を活かして日本の中小企業の価値を高めるために創業した中小企業向けコンサルティング会社です。補助金申請について分からない点・お悩みの点などありましたらいつでもご相談ください!

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https://planbase.co.jp/lp/saikouchiku/

この記事の執筆者

村上 貴弘

村上 貴弘

東京大学経済学部卒。
中小企業診断士、行政書士。
2019年株式会社プランベース創業。
2021年meditips行政書士事務所開業。
製造業、建設業、運輸業、ソフトウェア業など幅広い業種の補助金申請支援実績が豊富。特に事業再構築補助金やものづくり補助金、成長投資補助金といった大規模な補助金の申請に強みを持つ。